春秋左氏傳校本第二十九
哀公 起元年盡十三年
晉 杜氏 集解
唐 陸氏 音義
尾張 秦 鼎 校本
哀公 名、蔣。定公之子。蓋夫人定姒所生。謚法、恭仁短折曰哀。
【読み】
哀公 名は、蔣。定公の子。蓋し夫人定姒の生む所ならん。謚法に、恭仁短折を哀と曰う、と。
〔經〕元年、春、王正月、公卽位。無傳。
【読み】
〔經〕元年、春、王の正月、公位に卽く。傳無し。
楚子・陳侯・隨侯・許男圍蔡。隨世服於楚、不通中國。吳之入楚、昭王奔隨。隨人免之、卒復楚國。楚人德之、使列於諸侯。故得見經。定六年、鄭滅許。此復見者、蓋楚封之。
【読み】
楚子・陳侯・隨侯・許男蔡を圍む。隨世々楚に服して、中國に通ぜず。吳の楚に入るとき、昭王隨に奔る。隨人之を免れしめ、卒に楚國を復す。楚人之を德とし、諸侯に列ねしむ。故に經に見ることを得たり。定六年、鄭許を滅す。此に復見る者は、蓋し楚之を封ずるならん。
鼷鼠食郊牛。改卜牛。夏、四月、辛巳、郊。無傳。書過也。不言所食、所食非一處。
【読み】
鼷鼠[けいそ]郊牛を食む。牛を改め卜す。夏、四月、辛巳[かのと・み]、郊す。傳無し。過ぐるを書すなり。食む所を言わざるは、食む所一處に非ざればなり。
秋、齊侯・衛侯伐晉。冬、仲孫何忌帥師伐邾。無傳。
【読み】
秋、齊侯・衛侯晉を伐つ。冬、仲孫何忌師を帥いて邾[ちゅ]を伐つ。傳無し。
〔傳〕元年、春、楚子圍蔡、報柏舉也。在定四年。
【読み】
〔傳〕元年、春、楚子蔡を圍むは、柏舉に報ゆるなり。定四年に在り。
里而栽。栽、設板築爲圍壘。周匝去蔡城一里。○栽、才代反。又音再。築牆長版。
【読み】
里にして栽す。栽は、板築を設けて圍壘を爲すなり。周匝[しゅうそう]して蔡城を去ること一里。○栽は、才代反。又音再。牆を築く長版。
廣丈高倍。壘厚一丈、高二丈。○廣、古曠反。高、如字。又古報反。
【読み】
廣さ丈高さ倍す。壘の厚さ一丈、高さ二丈。○廣は、古曠反。高は、字の如し。又古報反。
夫屯晝夜九日、夫、猶兵也。壘未成。故令人在壘裏屯守蔡。○屯、徒門反。
【読み】
夫屯すること晝夜九日、夫は、猶兵のごとし。壘未だ成らず。故に人をして壘裏に在りて蔡を屯守せしむ。○屯は、徒門反。
如子西之素。子西本計爲壘當用九日而成。
【読み】
子西の素の如し。子西本壘を爲るは當に九日を用いて成るべきを計る。
蔡人男女以辨。辨、別也。男女各別、係纍而出降。○辨、扶免反。纍、力維反。
【読み】
蔡人男女以て辨つ。辨は、別つなり。男女各々別れて、係纍して出でて降る。○辨は、扶免反。纍は、力維反。
使疆于江・汝之閒而還。楚欲使蔡徙國、在江水之北、汝水之南、求田以自安也。蔡權聽命。故楚師還。
【読み】
江・汝の閒に疆せしめて還る。楚蔡をして國を徙[うつ]して、江水の北、汝水の南に在りて、田を求めて以て自ら安んぜしめんと欲す。蔡權[かり]に命を聽く。故に楚の師還る。
蔡於是乎請遷于吳。楚旣還。蔡人更叛楚就吳。爲明年、蔡遷州來傳。
【読み】
蔡是に於て遷らんことを吳に請う。楚旣に還る。蔡人更に楚を叛きて吳に就く。明年、蔡州來に遷る爲の傳なり。
吳王夫差敗越于夫椒。報檇李也。檇李、在定十四年。夫椒、吳郡吳縣西南大湖中椒山。○夫、音扶。檇、音醉。
【読み】
吳王夫差越を夫椒に敗る。檇李[すいり]に報ゆるなり。檇李は、定十四年に在り。夫椒は、吳郡吳縣の西南の大湖中の椒山。○夫は、音扶。檇は、音醉。
遂入越。越子以甲楯五千保于會稽、上會稽也。在會稽山陰縣南。○楯、食允反。又音允。會、古外反。
【読み】
遂に越に入る。越子甲楯五千を以て會稽に保ち、會稽に上るなり。會稽山陰縣の南に在り。○楯は、食允反。又音允。會は、古外反。
使大夫種因吳大宰嚭以行成。吳子將許之。
【読み】
大夫種をして吳の大宰嚭[ひ]に因りて以て成[たい]らぎを行わしむ。吳子將に之を許さんとす。
伍員曰、不可。臣聞之、樹德莫如滋、去疾莫如盡。昔有過澆殺斟灌、以伐斟鄩、澆、寒浞子。封於過者。二斟、夏同姓諸侯。襄四年傳曰、澆用師滅斟灌。○嚭、普鄙反。員、音云。去、起呂反。過、古禾反。澆、五呌反。一五報反。灌、古亂反。鄩、音尋。浞、仕捉反。
【読み】
伍員[ごうん]曰く、不可なり。臣之を聞く、德を樹つるは滋くするに如くは莫く、疾を去るは盡くすに如くは莫し、と。昔有過の澆[ぎょう]斟灌を殺して、以て斟鄩[しんじん]を伐ち、澆は、寒浞[かんさく]の子。過に封ぜらるる者なり。二斟は、夏の同姓の諸侯。襄四年の傳に曰く、澆師を用いて斟灌を滅ぼす、と。○嚭は、普鄙反。員は、音云。去は、起呂反。過は、古禾反。澆は、五呌反。一に五報反。灌は、古亂反。鄩は、音尋。浞は、仕捉反。
滅夏后相、夏后相、啓孫也。后相失國、依於二斟。復爲澆所滅。○相、息亮反。
【読み】
夏后相を滅ぼせしとき、夏后相は、啓の孫なり。后相國を失いて、二斟に依る。復澆の爲に滅ぼさる。○相は、息亮反。
后緡方娠。逃出自竇、后緡、相妻。娠、懷身也。○娠、音震。又音身。
【読み】
后緡[こうびん]方に娠めり。竇[とう]より逃げ出でて、后緡は、相の妻。娠は、懷身なり。○娠は、音震。又音身。
歸于有仍、后緡、有仍氏女。
【読み】
有仍[ゆうじょう]に歸り、后緡は、有仍氏の女。
生少康焉。爲仍牧正、牧官之長。
【読み】
少康を生みぬ。仍の牧正と爲り、牧官の長。
惎澆能戒之。惎、毒也。戒、備也。○惎、音忌。
【読み】
澆を惎[き]として能く之に戒[そな]う。惎は、毒なり。戒は、備うるなり。○惎は、音忌。
澆使椒求之、椒、澆臣。
【読み】
澆椒をして之を求めしむれば、椒は、澆の臣。
逃奔有虞、爲之庖正、以除其害。虞舜後諸侯也。梁國有虞縣。庖正、掌膳羞之官。賴此以得除己害。
【読み】
有虞に逃げ奔り、之が庖正と爲りて、以て其の害を除く。虞舜の後の諸侯なり。梁國に虞縣有り。庖正は、膳羞を掌るの官。此に賴りて以て己が害を除くことを得たり。
虞思於是妻之以二姚、思、有虞君也。虞思自以二女妻小康。姚、虞姓。○妻、七計反。
【読み】
虞思是に於て之に妻すに二姚[によう]を以てして、思は、有虞の君なり。虞思自ら二女を以て小康を妻す。姚は、虞の姓。○妻は、七計反。
而邑諸綸、綸、虞邑。
【読み】
諸を綸に邑せしかば、綸は、虞の邑。
有田一成、有衆一旅、方十里爲成、五百人爲旅。
【読み】
田一成有り、衆一旅有りしも、方十里を成と爲し、五百人を旅と爲す。
能布其德而兆其謀、兆、始。
【読み】
能く其の德を布きて其の謀を兆[はじ]め、兆は、始む。
以收夏衆、撫其官職、襄四年傳曰、靡自有鬲氏、收二國之燼、以滅浞而立少康。○鬲、音革。
【読み】
以て夏の衆を收め、其の官職を撫で、襄四年の傳に曰く、靡有鬲氏[ゆうかくし]より、二國の燼を收めて、以て浞を滅ぼして少康を立つ、と。○鬲は、音革。
使女艾諜澆、女艾、少康臣。諜、候也。○女、如字。又音汝。
【読み】
女艾[じょがい]をして澆を諜[うかが]わしめ、女艾は、少康の臣。諜は、候[うかが]うなり。○女は、字の如し。又音汝。
使季杼誘豷、豷、澆弟也。季杼、少康子、后杼也。○杼、直呂反。豷、許器反。
【読み】
季杼をして豷[き]を誘かしめ、豷は、澆の弟なり。季杼は、少康の子、后杼なり。○杼は、直呂反。豷は、許器反。
遂滅過・戈、復禹之績、過、澆國。戈、豷國。○過・戈、竝古禾反。
【読み】
遂に過・戈[か]を滅ぼし、禹の績を復して、過は、澆の國。戈は、豷の國。○過・戈は、竝古禾反。
祀夏配天、不失舊物。物、事也。
【読み】
夏を祀り天に配して、舊物を失わざりき。物は、事なり。
今吳不如過、而越大於少康。或將豐之、不亦難乎。言與越成、是使越豐大、必爲吳難。○難、乃旦反。
【読み】
今吳は過に如かずして、越は少康より大なり。或は將に之を豐かにせんとせば、亦難[なや]みたらざらんや。言うこころは、越と成らがば、是れ越をして豐大ならしめて、必ず吳の難みと爲らん。○難は、乃旦反。
勾踐能親而務施、施不失人、所加惠賜、皆得其人。○施、始豉反。下同。
【読み】
勾踐能く親しみて施しを務め、施して人を失わず、惠賜を加うる所、皆其の人を得たり。○施は、始豉反。下も同じ。
親不棄勞。推親愛之誠、則不遺小勞。
【読み】
親しみて勞を棄てず。親愛の誠を推して、則ち小勞を遺[す]てず。
與我同壤、而世爲仇讎。於是乎克而弗取、將又存之。違天而長寇讎、猶言天與不取。
【読み】
我と壤を同じくして、世々仇讎爲り。是に於て克ちて取らずして、將に又之を存せんとす。天に違いて寇讎を長ぜば、猶天の與うるを取らずと言うがごとし。
後雖悔之、不可食已。食、消也。已、止也。
【読み】
後之を悔ゆと雖も、食[け]し已む可からず。食は、消すなり。已は、止むなり。
姬之衰也、日可俟也。姬、吳姓。言可計日而待。
【読み】
姬の衰うるや、日して俟つ可きなり。姬は、吳の姓。言うこころは、日を計えて待つ可し。
介在蠻夷而長寇讎、以是求伯、必不行矣。
【読み】
蠻夷に介在して寇讎を長じ、是を以て伯を求めんこと、必ず行われじ、と。
弗聽。退而告人曰、越十年生聚、而十年敎訓。生民聚財、富而後敎之。○伯、如字。又音霸。
【読み】
聽かず。退きて人に告げて曰く、越十年生聚して、十年敎訓せん。民を生し財を聚め、富みて而して後に之を敎ゆ。○伯は、字の如し。又音霸。
二十年之外、吳其爲沼乎。謂吳宮室廢壞、當爲汙池。爲二十二年、越入吳起本。
【読み】
二十年の外、吳其れ沼と爲らんか、と。吳の宮室廢壞して、當に汙池と爲るべきを謂う。二十二年、越吳に入る爲の起本なり。
三月、越及吳平。
【読み】
三月、越吳と平らぐ。
吳入越不書、吳不告慶、越不告敗也。嫌夷狄不與華同。故復發傳。
【読み】
吳の越に入ること書さざるは、吳慶を告げず、越敗を告げざればなり。夷狄華と同じからざるに嫌あり。故に復傳を發す。
夏、四月、齊侯・衛侯救邯鄲、圍五鹿。趙稷以邯鄲叛。范・中行氏之黨也。五鹿、晉邑。○邯、音寒。鄲、音丹。
【読み】
夏、四月、齊侯・衛侯邯鄲を救いて、五鹿を圍む。趙稷邯鄲を以て叛く。范・中行氏の黨なり。五鹿は、晉の邑。○邯は、音寒。鄲は、音丹。
吳之入楚也、在定四年。
【読み】
吳の楚に入るや、定四年に在り。
使召陳懷公。懷公朝國人而問焉、曰、欲與楚者右、欲與吳者左。陳人從田。無田從黨。都邑之人無田者、隨黨而立。不知所與。故直從所居。田在西者居右、在東者居左。
【読み】
陳の懷公を召ばしむ。懷公國人を朝せしめて問いて、曰く、楚に與せんと欲する者は右し、吳に與せんと欲する者は左せよ、と。陳人田に從う。田無きは黨に從う。都邑の人田無き者は、黨に隨いて立つ。與せん所を知らず。故に直に居る所に從う。田西に在る者は右に居り、東に在る者は左に居る。
逢滑當公而進、當公、不左不右。
【読み】
逢滑公に當たりて進みて、公に當たれば、左せず右せざるなり。
曰、臣聞國之興也以福、其亡也以禍。今吳未有福、楚未有禍。楚未可棄、吳未可從。而晉盟主也。若以晉辭吳、若何。公曰、國勝君亡。非禍而何。楚爲吳所勝。
【読み】
曰く、臣聞く、國の興るや福を以てし、其の亡ぶるや禍を以てす、と。今吳未だ福有らず、楚未だ禍有らず。楚は未だ棄つ可からず、吳には未だ從う可からず。而して晉は盟主なり。若し晉を以て吳に辭せば、若何、と。公曰く、國勝たれ君亡[に]ぐ。禍に非ずして何ぞ、と。楚吳の爲に勝たる。
對曰、國之有是多矣。何必不復。小國猶復。況大國乎。臣聞國之興也、視民如傷。是其福也。如傷、恐驚動。
【読み】
對えて曰く、國の是れ有ること多し。何ぞ必ずしも復せざらん。小國だも猶復す。況んや大國をや。臣聞く、國の興るや、民を視ること傷つくが如くす。是れ其れ福なり。傷つくが如くすとは、驚動せんことを恐るるなり。
其亡也、以民爲土芥。是其禍也。芥、草也。
【読み】
其の亡ぶるや、民を以て土芥と爲す。是れ其れ禍なり、と。芥は、草なり。
楚雖無德、亦不艾殺其民。吳日敝於兵、暴骨如莽、草之生於廣野、莽莽然。故曰草莽。○艾、魚廢反。暴、步卜反。
【読み】
楚は德無しと雖も、亦其の民を艾殺[がいさつ]せず。吳は日々に兵に敝[つか]れ、骨を暴すこと莽の如くにして、草の廣野に生ずるは、莽莽然たり。故に草莽と曰う。○艾は、魚廢反。暴は、步卜反。
而未見德焉。天其或者正訓楚也。使懼而改過。
【読み】
未だ德を見ず。天其れ或は楚を正訓するか。懼れて過ちを改めしむ。
禍之適吳、其何日之有。言今至。
【読み】
禍の吳に適かんこと、其れ何れの日か之れ有らん、と。言うこころは、今至らん。
陳侯從之。
【読み】
陳侯之に從う。
及夫差克越、乃脩先君之怨。秋、八月、吳侵陳。脩舊怨也。傳言吳不脩德而脩怨。所以亡。
【読み】
夫差が越に克つに及びて、乃ち先君の怨みを脩めんとす。秋、八月、吳陳を侵す。舊怨を脩むるなり。傳吳德を脩めずして怨みを脩む。亡ぶる所以を言う。
齊侯・衛侯會于乾侯、救范氏也。
【読み】
齊侯・衛侯乾侯に會するは、范氏を救うなり。
師及齊師・衛孔圉・鮮虞人伐晉、取棘蒲。魯師不書、非公命也。孔圉、孔烝鉏曾孫。鮮虞、狄。帥賤。故不書。
【読み】
師齊の師・衛の孔圉・鮮虞の人と晉を伐ちて、棘蒲を取る。魯の師書さざるは、公命に非ざればなり。孔圉は、孔烝鉏の曾孫。鮮虞は、狄。帥賤し。故に書さず。
吳師在陳。楚大夫皆懼曰、闔廬惟能用其民、以敗我於柏舉。今聞其嗣又甚焉。將若之何。子西曰、二三子恤不相睦。無患吳矣。
【読み】
吳の師陳に在り。楚の大夫皆懼れて曰く、闔廬惟能く其の民を用いて、以て我を柏舉に敗れり。今聞く、其の嗣又焉より甚だし、と。將に之を若何にせんとする、と。子西曰く、二三子相睦まじからざることを恤えよ。吳を患うること無かれ。
昔闔廬食不二味、居不重席、室不崇壇、平地作室不起壇也。○重、平聲。
【読み】
昔闔廬食味を二にせず、居席を重ねず、室壇を崇くせず、平地に室を作りて壇を起こさざるなり。○重は、平聲。
器不彤鏤、彤、丹也。鏤、刻也。
【読み】
器彤鏤[とうろう]せず、彤は、丹なり。鏤は、刻むなり。
宮室不觀、觀、臺榭。○觀、古亂反。
【読み】
宮室觀せず、觀は、臺榭[だいしゃ]。○觀は、古亂反。
舟車不飾、衣服財用、擇不取費、選取堅厚、不尙細靡。○費、芳味反。
【読み】
舟車飾らず、衣服財用、擇びて費を取らず、堅厚を選び取りて、細靡を尙ばず。○費は、芳味反。
在國、天有菑癘、癘、疾疫也。
【読み】
國に在りては、天に菑癘有れば、癘は、疾疫なり。
親巡孤寡、而共其乏困、在軍、熟食者分而後敢食。必須軍士皆分熟食、不敢先食。分、猶徧也。○共、音恭。
【読み】
親ら孤寡を巡りて、其の乏困に共[そな]え、軍に在りては、熟食する者を分[あまね]くして後に敢えて食らう。必ず軍士の皆分く熟食するを須ちて、敢えて先に食らわず。分は、猶徧くのごとし。○共は、音恭。
其所嘗者、卒乘與焉。所嘗、甘珍非常食。
【読み】
其の嘗むる所の者は、卒乘も與る。嘗むる所とは、甘珍非常の食。
勤恤其民、而與之勞逸。是以民不罷勞、死知不曠。知身死不見曠棄。○罷、音皮。
【読み】
其の民を勤恤して、之と與に勞逸す。是を以て民罷勞せずして、死して曠[むな]しからざるを知れり。身死して曠棄せられざるを知る。○罷は、音皮。
吾先大夫子常易之。所以敗我也。易、猶反也。
【読み】
吾が先大夫子常之を易う。我を敗りし所以なり。易は、猶反くのごとし。
今聞夫差次有臺榭陂池焉、積土爲高曰臺、有木曰榭、過再宿曰次。
【読み】
今聞く、夫差は次に臺榭陂池有り、土を積みて高きを爲すを臺と曰い、木有るを榭と曰い、再宿に過ぐるを次と曰う。
宿有妃嬙嬪御焉、妃嬙、貴者。嬪御、賤者。皆内官。
【読み】
宿に妃嬙嬪御有り、妃嬙は、貴者。嬪御は、賤者。皆内官。
一日之行、所欲必成、玩好必從、珍異是聚、觀樂是務、視民如讎、而用之日新。夫先自敗也已。安能敗我。爲二十二年、越滅吳起本。
【読み】
一日の行も、欲する所必ず成し、玩好必ず從え、珍異是れ聚め、觀樂是れ務め、民を視ること讎の如くにして、之を用ゆること日に新たなり、と。夫れ先ず自ら敗れんのみ。安ぞ能く我を敗らん、と。二十二年、越吳を滅ぼす爲の起本なり。
冬、十一月、晉趙鞅伐朝歌。討范・中行氏。
【読み】
冬、十一月、晉の趙鞅朝歌を伐つ。范・中行氏を討ず。
〔經〕二年、春、王二月、季孫斯・叔孫州仇・仲孫何忌帥師伐邾、取漷東田及沂西田。邾人以賂。取之、易也。○漷、火虢反。又音郭。沂、魚依反。
【読み】
〔經〕二年、春、王の二月、季孫斯・叔孫州仇・仲孫何忌師を帥いて邾[ちゅ]を伐ち、漷東[かくとう]の田と沂西[ぎせい]の田とを取る。邾人以て賂うなり。之を取るとは、易きなり。○漷は、火虢反。又音郭。沂は、魚依反。
癸巳、叔孫州仇・仲孫何忌及邾人盟于句繹。句繹、邾地。取邑、盟以要之。○句、音勾。
【読み】
癸巳[みずのと・み]、叔孫州仇・仲孫何忌邾人と句繹に盟う。句繹は、邾の地。邑を取りて、盟いて以て之を要す。○句は、音勾。
夏、四月、丙子、衛侯元卒。定四年、盟皐鼬。
【読み】
夏、四月、丙子[ひのえ・ね]、衛侯元卒す。定四年、皐鼬[こうゆう]に盟う。
滕子來朝。無傳。
【読み】
滕子來朝す。傳無し。
晉趙鞅帥師納衛世子蒯聵于戚。秋、八月、甲戌、晉趙鞅帥師及鄭罕達帥師戰于鐵。鄭師敗績。皆陳曰戰、大崩曰敗績。鐵、在戚城南。罕逹、子皮孫。
【読み】
晉の趙鞅師を帥いて衛の世子蒯聵[かいかい]を戚に納る。秋、八月、甲戌[きのえ・いぬ]、晉の趙鞅師を帥いて鄭の罕達が師を帥いると鐵に戰う。鄭の師敗績す。皆陳するを戰と曰い、大いに崩るるを敗績と曰う。鐵は、戚城の南に在り。罕逹は、子皮の孫。
冬、十月、葬衛靈公。無傳。七月而葬。緩。
【読み】
冬、十月、衛の靈公を葬る。傳無し。七月にして葬る。緩きなり。
十有一月、蔡遷于州來。畏楚而請遷。故以自遷爲文。
【読み】
十有一月、蔡州來に遷る。楚を畏れて遷らんことを請う。故に自ら遷るを以て文を爲す。
蔡殺其大夫公子駟。懷土而欺大國。故罪而書名。
【読み】
蔡其の大夫公子駟を殺す。土を懷いて大國を欺く。故に罪して名を書す。
〔傳〕二年、春、伐邾、將伐絞。絞、邾邑。
【読み】
〔傳〕二年、春、邾を伐ち、將に絞を伐たんとす。絞は、邾の邑。
邾人愛其土。故賂以漷・沂之田而受盟。
【読み】
邾人其の土を愛しむ。故に賂うに漷・沂の田を以てして盟を受く。
初、衛侯遊于郊、子南僕。子南、靈公子、郢也。僕、御也。
【読み】
初め、衛侯郊に遊びしとき、子南僕たり。子南は、靈公の子、郢[えい]なり。僕は、御なり。
公曰、余無子。將立女。蒯聵奔、無大子。○女、音汝。
【読み】
公曰く、余子無し。將に女を立てんとす、と。蒯聵奔りて、大子無し。○女は、音汝。
不對。他日又謂之。對曰、郢不足以辱社稷。君其改圖。君夫人在堂、三揖在下。三揖、卿・大夫・士。
【読み】
對えず。他日又之を謂う。對えて曰く、郢[えい]は以て社稷を辱むるに足らず。君其れ改め圖れ。君夫人堂に在り、三揖下に在り。三揖は、卿・大夫・士。
君命祇辱。言立適當以禮與外内同之。今君私命。事必不從。適爲辱。○祇、音支。立適、音的。
【読み】
君の命祇[まさ]に辱められん、と。言うこころは、適を立つること當に禮を以て外内と之を同じくすべし。今君私に命ず。事必ず從われざらん。適に辱めと爲らん。○祇は、音支。立適は、音的。
夏、衛靈公卒。夫人曰、命公子郢爲大子。君命也。對曰、郢異於他子。言用意不同。
【読み】
夏、衛の靈公卒す。夫人曰く、公子郢を命じて大子とせよ。君の命なり、と。對えて曰く、郢は他子に異なり。言うこころは、意を用ゆること同じからず。
且君沒於吾手。若有之、郢必聞之。言當以臨沒爲正。
【読み】
且君吾が手に沒せり。若し之れ有らば、郢必ず之を聞かん。言うこころは、當に沒するに臨むを以て正と爲す。
且亡人之子輒在。輒、蒯聵之子、出公也。靈公適孫。
【読み】
且つ亡人の子輒[ちょう]在り、と。輒は、蒯聵の子、出公なり。靈公の適孫なり。
乃立輒。
【読み】
乃ち輒を立つ。
六月、乙酉、晉趙鞅納衛大子于戚。宵迷。陽虎曰、右河而南、必至焉。是時河北流、過元城界。戚、在河外。晉軍已渡河。故欲出河右而南。
【読み】
六月、乙酉[きのと・とり]、晉の趙鞅衛の大子を戚に納れんとす。宵迷う。陽虎曰く、河を右にして南せば、必ず至らん、と。是の時河北流して、元城の界を過ぐ。戚は、河外に在り。晉の軍已に河を渡る。故に河の右に出でて南せんと欲す。
使大子絻、絻者、始發喪之服。○絻、音問。
【読み】
大子をして絻[ぶん]せしめ、絻は、始めて喪を發するの服。○絻は、音問。
八人衰絰、僞自衛逆者、欲爲衛人逆。故衰絰成服。
【読み】
八人衰絰[さいてつ]して、衛より逆[むか]うる者と僞り、衛人の逆うる爲[まね]せんと欲す。故に衰絰して服を成す。
告於門、哭而入、遂居之。
【読み】
門に告げ、哭して入り、遂に之に居る。
秋、八月、齊人輸范氏粟。鄭子姚・子般送之、子姚、罕達。子般、駟弘。○般、音班。
【読み】
秋、八月、齊人范氏に粟を輸[いた]す。鄭の子姚[しよう]・子般之を送り、子姚は、罕達。子般は、駟弘。○般は、音班。
士吉射逆之。趙鞅禦之、遇于戚。陽虎曰、吾車少。以兵車之旆、與罕・駟兵車先陳、旆、先驅車也。以先驅車、益其兵車、以示衆。○陳、直覲反。
【読み】
士吉射之を逆う。趙鞅之を禦ぎ、戚に遇う。陽虎曰く、吾が車少なし。兵車の旆[はい]を以て、罕・駟の兵車と先ず陳せば、旆は、先驅の車なり。先驅の車を以て、其の兵車を益して、以て衆きを示すなり。○陳は、直覲反。
罕・駟自後隨而從之、彼見吾貌、必有懼心。晉人先陳、鄭人隨之、不知其虛實、見車多必懼。
【読み】
罕・駟後より隨いて之に從い、彼れ吾が貌を見て、必ず懼心有らん。晉人先ず陳して、鄭人之に隨いて、其の虛實を知らず、車の多きを見て必ず懼れん。
於是乎會之、會、合戰。
【読み】
是に於て之に會せば、會は、合戰なり。
必大敗之。從之。
【読み】
必ず大いに之を敗らん、と。之に從う。
卜戰。龜焦。兆不成。
【読み】
戰を卜す。龜焦る。兆成らず。
樂丁曰、詩曰、爰始爰謀、爰契我龜。樂丁、晉大夫。詩、大雅。言先人事、後卜筮。
【読み】
樂丁曰く、詩に曰く、爰に始め爰に謀りて、爰に我が龜を契[や]く、と。樂丁は、晉の大夫。詩は、大雅。言うこころは、人事を先にして、卜筮を後にす。
謀協。以故兆詢可也。詢、諮詢也。故兆、始納衛大子、卜得吉兆。言今旣謀同。可不須更卜。
【読み】
謀協[かな]えり。故兆を以て詢[はか]らんこと可なり、と。詢[じゅん]は、諮詢なり。故兆は、始め衛の大子を納れんとして、卜して吉兆を得るなり。言うこころは、今旣に謀同じ。更に卜することを須いざる可し。
簡子誓曰、范氏・中行氏反易天明、不事君也。
【読み】
簡子誓いて曰く、范氏・中行氏天明に反易し、君に事えざるなり。
斬艾百姓、欲擅晉國而滅其君。寡君恃鄭而保焉、今鄭爲不道、棄君助臣。二三子順天明、從君命、經德義、除詬恥。在此行也、克敵者、上大夫受縣、下大夫受郡、周書作雒篇、千里百縣、縣有四郡。○艾、魚廢反。滅、或作戕。音殘。詬、呼豆反。又音苟。
【読み】
百姓を斬艾[ざんがい]し、晉國を擅[ほしいまま]にして其の君を滅ぼさんと欲す。寡君鄭を恃みて保んぜんとするに、今鄭不道を爲して、君を棄て臣を助けり。二三子天明に順い、君命に從い、德義を經して、詬恥を除け。此の行に在りてや、敵に克たん者は、上大夫は縣を受け、下大夫は郡を受け、周書作雒の篇、千里に百縣、縣に四郡有り、と。○艾は、魚廢反。滅、或は戕に作る。音殘。詬は、呼豆反。又音苟。
士田十萬、十萬畞也。
【読み】
士は田十萬、十萬畞なり。
庶人工商遂、得遂進仕。
【読み】
庶人工商は遂げ、進仕を遂ぐることを得。
人臣隸圉免。去厮役。○厮、又作斯。音同。艾草爲防者曰厮、汲水漿者曰役。
【読み】
人臣隸圉は免さん。厮役[しえき]を去る。○厮は、又斯に作る。音同じ。草を艾[か]り防を爲す者を厮と曰い、水漿を汲む者を役と曰う。
志父無罪、君實圖之。志父、趙簡子之一名也。言己事濟、君當圖其賞。○志父、趙鞅入晉陽以畔、後得歸、改名志父。春秋仍舊猶書趙鞅。
【読み】
志父罪無くば、君實に之を圖らん。志父は、趙簡子の一名なり。言うこころは、己が事濟らば、君當に其の賞を圖るべし。○志父は、趙鞅晉陽に入りて以て畔[そむ]き、後歸ることを得て、名を志父と改む。春秋舊に仍りて猶趙鞅と書す。
若其有罪、絞縊以戮。絞、所以縊人物。
【読み】
若し其れ罪有らば、絞縊して以て戮せられん。絞は、人を縊る所以の物。
桐棺三寸、不設屬辟、屬辟、棺之重數。王棺四重、君再重、大夫一重。○屬、音燭。次大棺也。辟、步歷反。親身棺也。禮、大夫無辟。
【読み】
桐棺三寸、屬辟を設けず、屬辟は、棺の重數。王の棺は四重、君は再重、大夫は一重。○屬は、音燭。次大の棺なり。辟は、步歷反。親身の棺なり。禮に、大夫辟無し、と。
素車樸馬、以載柩。○樸、普卜反。
【読み】
素車樸馬、以て柩を載す。○樸は、普卜反。
無入于兆。兆、葬域。
【読み】
兆に入ること無からん。兆は、葬域。
下卿之罰也。爲衆設賞、自設罰。所以能克敵。
【読み】
下卿の罰なり、と。衆の爲には賞を設け、自らは罰を設く。能く敵に克つ所以なり。
甲戌、將戰。郵無恤御簡子、衛大子爲右、郵無恤、王良也。
【読み】
甲戌、將に戰わんとす。郵無恤簡子に御となり、衛の大子右と爲り、郵無恤は、王良なり。
登鐵上、鐵、丘名。
【読み】
鐵上に登り、鐵は、丘の名。
望見鄭師衆、大子懼、自投于車下。子良授大子綏而乘之、曰、婦人也。言其怯。
【読み】
鄭の師衆を望見し、大子懼れて、自ら車下に投ず。子良大子に綏[すい]を授けて之を乘せて、曰く、婦人なり、と。其の怯[よわ]きを言う。
簡子巡列曰、畢萬、匹夫也、七戰皆獲、有馬百乘、死於牖下。畢萬、晉獻公卿也。皆獲、有功。死於牖下、言得壽終。○乘、去聲。
【読み】
簡子列を巡りて曰く、畢萬は、匹夫なりしも、七戰皆獲て、馬百乘有り、牖下[ゆうか]に死したり。畢萬は、晉の獻公の卿なり。皆獲とは、功有るなり。牖下に死すとは、壽終することを得るを言う。○乘は、去聲。
羣子勉之。死不在寇。言有命。
【読み】
羣子之を勉めよ。死は寇に在らず、と。言うこころは、命有り。
繁羽御趙羅。宋勇爲右。三子、晉大夫。
【読み】
繁羽趙羅に御たり。宋勇右爲り。三子は、晉の大夫。
羅無勇、麇之。麇、束縛也。○麇、丘隕反。
【読み】
羅は勇無しといいて、之を麇[ゆ]わう。麇[きん]は、束縛なり。○麇は、丘隕反。
吏詰之。御對曰、痁作而伏。痁、瘧疾也。○詰、音乞。痁、詩占反。
【読み】
吏之を詰[なじ]る。御對えて曰く、痁[せん]作りて伏せり、と。痁は、瘧疾なり。○詰は、音乞。痁は、詩占反。
衛大子禱曰、曾孫蒯聵、敢昭告皇祖文王・
周文王。皇、大也。○禱、如字。一丁報反。
【読み】
衛の大子禱りて曰く、曾孫蒯聵、敢えて昭らかに皇祖文王・ 周の文王。皇は、大なり。○禱は、字の如し。一に丁報反。
烈祖康叔・ 烈、顯也。
【読み】
烈祖康叔・ 烈は、顯らかなり。
文祖襄公。繼業守文。故曰文祖。蒯聵、襄公之孫。
【読み】
文祖襄公に告ぐ。業を繼ぎ文を守る。故に文祖と曰う。蒯聵は、襄公の孫。
鄭勝亂從、勝、鄭聲公名。釋君助臣、爲從於亂。
【読み】
鄭の勝亂に從えども、勝は、鄭の聲公の名。君を釋[す]て臣を助くるを、亂に從うと爲す。
晉午在難、午、晉定公名。○難、乃旦反。
【読み】
晉の午難に在りて、午は、晉の定公の名。○難は、乃旦反。
不能治亂、使鞅討之。鞅、簡子名。
【読み】
亂を治むること能わずして、鞅をして之を討ぜしめり。鞅は、簡子の名。
蒯聵不敢自佚、備持矛焉。戎右持矛。
【読み】
蒯聵敢えて自ら佚[やす]んぜず、矛を持するに備われり。戎右は矛を持す。
敢告、無絕筋、無折骨、無面傷、以集大事、無作三祖羞。集、成也。
【読み】
敢えて告ぐ、筋を絕たすこと無く、骨を折らすこと無く、面傷つかすこと無く、以て大事を集[な]させて、三祖の羞を作すこと無かれ。集は、成すなり。
大命不敢請、佩玉不敢愛。不敢愛。故以祈禱。
【読み】
大命敢えて請わず、佩玉敢えて愛しまず、と。敢えて愛しまず。故に以て祈禱す。
鄭人擊簡子、中肩。斃于車中。斃、踣也。○中肩、丁仲反。
【読み】
鄭人簡子を擊ちて、肩に中つ。車中に斃る。斃は、踣[たう]るなり。○中肩は、丁仲反。
獲其蠭旗。蠭旗、旗名。○蠭、音蜂。
【読み】
其の蠭旗を獲たり。蠭旗は、旗の名。○蠭は、音蜂。
大子救之以戈。鄭師北。獲溫大夫趙羅。羅無勇。故鄭師雖北、猶獲羅。
【読み】
大子之を救うに戈を以[もち]ゆ。鄭の師北[に]ぐ。溫の大夫趙羅を獲たり。羅勇無し。故に鄭の師北ぐると雖も、猶羅を獲たり。
大子復伐之。鄭師大敗。獲齊粟千車。趙孟喜曰、可矣。趙孟、簡子也。喜大子前怯今更勇。○復、扶又反。
【読み】
大子復之を伐つ。鄭の師大いに敗れぬ。齊の粟千車を獲たり。趙孟喜びて曰く、可なり、と。趙孟は、簡子なり。大子前に怯くして今更に勇なるを喜ぶ。○復は、扶又反。
傅傁曰、雖克鄭、猶有知在。憂未艾也。傅傁、簡子屬也。言知氏將爲難。後竟有晉陽之患。○傁、音叟。知、音智。艾、魚廢反。又五蓋反。
【読み】
傅傁[ふそう]曰く、鄭に克つと雖も、猶知が在る有り。憂え未だ艾[や]まず、と。傅傁は、簡子の屬なり。言うこころは、知氏將に難を爲さんとす。後竟に晉陽の患え有り。○傁は、音叟。知は、音智。艾は、魚廢反。又五蓋反。
初、周人與范氏田、公孫尨稅焉。尨、范氏臣。爲范氏收周人所與田之稅。
【読み】
初め、周人范氏に田を與え、公孫尨[こうそんぼう]稅す。尨は、范氏の臣。范氏の爲に周人の與うる所の田の稅を收む。
趙氏得而獻之。得尨以獻簡子。
【読み】
趙氏得て之を獻ず。尨を得て以て簡子に獻ず。
吏請殺之。趙孟曰、爲其主也。何罪。止而與之田。還其所稅。
【読み】
吏之を殺さんと請う。趙孟曰く、其の主の爲にするなり。何の罪あらん、と。止めて之に田を與う。其の稅する所を還す。
及鐵之戰、以徒五百人宵攻鄭師、取蠭旗於子姚之幕下、獻曰、請報主德。
【読み】
鐵の戰に及びて、徒五百人を以て宵鄭の師を攻め、蠭旗を子姚の幕下に取り、獻じて曰く、請う、主の德に報いん、と。
追鄭師。姚・般・公孫林殿而射。前列多死。晉前列。○姚・般、子姚・子般。殿、丁見反。射、食亦反。
【読み】
鄭の師を追う。姚・般・公孫林殿して射る。前列多く死す。晉の前列。○姚・般は、子姚・子般。殿は、丁見反。射は、食亦反。
趙孟曰、國無小。言雖小國、猶有善射者。
【読み】
趙孟曰く、國小なること無し、と。言うこころは、小國と雖も、猶善く射る者有り。
旣戰。簡子曰、吾伏弢嘔血、弢、弓衣。嘔、吐也。○弢、吐刀反。
【読み】
旣に戰う。簡子曰く、吾れ弢[とう]に伏して血を嘔けども、弢は、弓衣。嘔は、吐くなり。○弢は、吐刀反。
鼓音不衰。今日我上也。功爲上。
【読み】
鼓音衰えざりき。今日は我れ上なり、と。功上爲り。
大子曰、吾救主於車、退敵於下。我右之上也。郵良曰、我兩靷將絕、吾能止之。止使不絕。○靷、以刃反。
【読み】
大子曰く、吾れ主を車に救い、敵を下に退けたり。我は右の上なり、と。郵良曰く、我が兩靷[りょういん]將に絕えんとせしを、吾れ能く之を止めたり。止めて絕えざらしむ。○靷は、以刃反。
我御之上也。駕而乘材、兩靷皆絕。材、橫木。明細小也。傳言簡子不讓、下自伐。
【読み】
我は御の上なり、と。駕して材に乘れば、兩靷皆絕ゆ。材は、橫木。細小なるを明らかにするなり。傳簡子讓らず、下自ら伐[ほこ]るを言う。
吳洩庸如蔡納聘、而稍納師。師畢入、衆知之。元年、蔡請遷于吳、中悔。故因聘襲之。○洩、息列反。
【読み】
吳の洩庸[せつよう]蔡に如きて納聘して、稍[ようや]く師を納る。師畢く入りて、衆之を知る。元年、蔡遷らんことを吳に請いて、中ごろ悔ゆ。故に聘に因りて之を襲う。○洩は、息列反。
蔡侯告大夫、殺公子駟以說。殺駟以說吳。言不時遷、駟之爲。
【読み】
蔡侯大夫に告げて、公子駟を殺して以て說く。駟を殺して以て吳に說く。言うこころは、時に遷らざりしは、駟の爲[わざ]なり。
哭而遷墓。將遷、與先君辭。故哭。
【読み】
哭して墓より遷る。將に遷らんとして、先君と辭す。故に哭す。
冬、蔡遷于州來。
【読み】
冬、蔡州來に遷る。
〔經〕三年、春、齊國夏・衛石曼姑帥師圍戚。曼姑爲子圍父。知其不義。故推齊使爲兵首。戚不稱衛、非叛人。○曼、音萬。
【読み】
〔經〕三年、春、齊の國夏・衛の石曼姑師を帥いて戚を圍む。曼姑子の爲に父を圍む。其の不義を知る。故に齊を推して兵首爲らしむ。戚衛と稱せざるは、叛人に非ざればなり。○曼は、音萬。
夏、四月、甲午、地震。無傳。
【読み】
夏、四月、甲午[きのえ・うま]、地震す。傳無し。
五月、辛卯、桓宮・僖宮災。天火曰災。
【読み】
五月、辛卯[かのと・う]、桓宮・僖宮災あり。天火を災と曰う。
季孫斯・叔孫州仇帥師城啓陽。無傳。魯黨范氏。故懼晉、比年四城。啓陽、今琅邪開陽縣。
【読み】
季孫斯・叔孫州仇師を帥いて啓陽に城く。傳無し。魯范氏に黨す。故に晉を懼れて、比年四たび城く。啓陽は、今の琅邪開陽縣。
宋樂髡帥師伐曹。無傳。
【読み】
宋の樂髡[がくこん]師を帥いて曹を伐つ。傳無し。
秋、七月、丙子、季孫斯卒。蔡人放其大夫公孫獵于吳。無傳。公子駟之黨。
【読み】
秋、七月、丙子[ひのえ・ね]、季孫斯卒す。蔡人其の大夫公孫獵を吳に放つ。傳無し。公子駟の黨。
冬、十月、癸卯、秦伯卒。無傳。不書名、未同盟。
【読み】
冬、十月、癸卯[みずのと・う]、秦伯卒す。傳無し。名を書さざるは、未だ同盟せざればなり。
叔孫州仇・仲孫何忌帥師圍邾。無傳。
【読み】
叔孫州仇・仲孫何忌師を帥いて邾[ちゅ]を圍む。傳無し。
〔傳〕三年、春、齊・衛圍戚、求援于中山。中山、鮮虞。
【読み】
〔傳〕三年、春、齊・衛戚を圍みて、援けを中山に求む。中山は、鮮虞。
夏、五月、辛卯、司鐸火。司鐸、宮名。
【読み】
夏、五月、辛卯、司鐸火あり。司鐸は、宮の名。
火踰公宮、桓・僖災。桓公・僖公廟。
【読み】
火公宮を踰え、桓・僖災あり。桓公・僖公の廟。
救火者皆曰、顧府。言常人愛財。
【読み】
火を救う者皆曰く、府を顧みよ、と。言うこころは、常人財を愛す。
南宮敬叔至、命周人出御書、俟於宮。敬叔、孔子弟子、南宮閱。周人、司周書典籍之官。御書、進於君者也。使待命於宮。
【読み】
南宮敬叔至り、周人に命じて御書を出だして、宮に俟たしむ。敬叔は、孔子の弟子、南宮閱。周人は、周書典籍を司るの官。御書は、君に進むる者なり。命を宮に待たしむ。
曰、庀女而不在、死。庀、具也。○庀、匹婢反。女、音汝。
【読み】
曰く、女に庀[そな]えて在らずんば、死なん、と。庀[ひ]は、具うるなり。○庀は、匹婢反。女は、音汝。
子服景伯至、命宰人出禮書、景伯、子服何也。宰人、冢宰之屬。
【読み】
子服景伯至り、宰人に命じて禮書を出だして、景伯は、子服何なり。宰人は、冢宰の屬。
以待命。命不共、有常刑。待求之命。
【読み】
以て命を待たしむ。命共せざれば、常刑有り。求むるの命を待つ。
校人乘馬、巾車脂轄、校人、掌馬、巾車、掌車。乘馬、使四四相從。爲賀之易。○校、音效。乘、去聲。下同。爲、于僞反。
【読み】
校人馬を乘にし、巾車轄[くさび]に脂さし、校人は、馬を掌り、巾車は、車を掌る。馬を乘にするは、四四をして相從わしむるなり。賀するの易きが爲なり。○校は、音效。乘は、去聲。下も同じ。爲は、于僞反。
百官官備、府庫愼守、官人肅給、國有火災。恐有變難。故愼爲備。
【読み】
百官官ごとに備え、府庫愼守し、官人肅給し、國に火災有り。恐れらくは變難有らんことを。故に愼みて備えを爲す。
濟濡帷幕、鬱攸從之、鬱攸、火氣也。濡物於水、出用爲濟。○濟、子細反。又子禮反。
【読み】
濟[すく]うに帷幕を濡[うるお]して、鬱攸[うつゆう]のままに之に從い、鬱攸は、火氣なり。物を水に濡して、出だし用いて濟うことを爲す。○濟は、子細反。又子禮反。
蒙茸公屋、以濡物冒覆公屋。
【読み】
公屋を蒙茸し、濡える物を以て公屋を冒い覆う。
自大廟始、外内以悛、悛、次也。先尊後卑、以次救之。○悛、七全反。
【読み】
大廟より始めて、外内悛[ついで]を以てし、悛[せん]は、次なり。尊を先にし卑を後にし、次を以て之を救う。○悛は、七全反。
助所不給。有不用命、則有常刑。無赦。
【読み】
給せざる所を助けよ。命を用いざること有らば、則ち常刑有り。赦すこと無からん、と。
公父文伯至、命校人駕乘車。乘車、公車。
【読み】
公父文伯至り、校人に命じて乘車に駕せしむ。乘車は、公車。
季桓子至、御公立于象魏之外、象魏、門闕。
【読み】
季桓子至り、公に御して象魏の外に立ち、象魏は、門闕。
命救火者、傷人則止。財可爲也。命藏象魏。周禮、正月、縣敎令之法于象魏、使萬民觀之。故謂其書爲象魏。
【読み】
火を救う者に命ずらく、人を傷[やぶ]らば則ち止めよ。財は爲す可し、と。命じて象魏を藏めしむ。周禮に、正月、敎令の法を象魏に縣け、萬民をして之を觀せしむ、と。故に其の書を謂いて象魏と爲す。
曰、舊章不可亡也。
【読み】
曰く、舊章は亡う可からず、と。
富父槐至。曰、無備而官辦者、猶拾瀋也。槐、富父終甥之後。瀋、汁也。言不備而責辦、不可得。○瀋、尺審反。
【読み】
富父槐至る。曰く、備え無くして官辦[かんべん]せん者は、猶瀋[しる]を拾うがごとし、と。槐は、富父終甥の後。瀋[しん]は、汁なり。言うこころは、備えずして辦せんことを責むるも、得可からず。○瀋は、尺審反。
於是乎去表之稾、表、表火道。風所向者、去其稾積。○去、起呂反。積、子賜反。
【読み】
是に於て表の稾を去りて、表は、火道に表するなり。風の向かう所の者、其の稾積を去るなり。○去は、起呂反。積は、子賜反。
道還公宮。開除道、周帀公宮、使火無相連。○還、又作環。戶關反。
【読み】
道して公宮を還らせり。道を開除し、公宮を周帀[しゅうそう]して、火をして相連ぬること無からしむ。○還は、又環に作る。戶關反。
孔子在陳、聞火曰、其桓・僖乎。言桓・僖親盡而廟不毀。宜爲天所災。
【読み】
孔子陳に在して、火を聞きて曰く、其れ桓・僖か、と。言うこころは、桓・僖親盡きて廟毀たず。宜しく天の爲に災せらるべし。
劉氏・范氏世爲婚姻、劉氏、周卿士。范氏、晉大夫。
【読み】
劉氏・范氏世々婚姻を爲し、劉氏は、周の卿士。范氏は、晉の大夫。
萇弘事劉文公。爲之屬大夫。
【読み】
萇弘は劉文公に事う。之が屬大夫爲り。
故周與范氏、趙鞅以爲討。責周與范氏。
【読み】
故に周范氏に與せしかば、趙鞅以て討ずることを爲す。周の范氏に與するを責む。
六月、癸卯、周人殺萇弘。終違天之禍。
【読み】
六月、癸卯、周人萇弘を殺す。天に違うの禍を終わる。
秋、季孫有疾。命正常曰、無死。正常、桓子之寵臣。欲付以後事。故勑令勿從己死。
【読み】
秋、季孫疾有り。正常に命じて曰く、死すること無かれ。正常は、桓子の寵臣。付するに後事を以てせんと欲す。故に勑して己に從いて死すること勿からしむ。
南孺子之子、男也、則以告而立之。南孺子、季桓子之妻。言若生男、告公而立之。
【読み】
南孺子の子、男ならば、則ち以て告げて之を立てよ。南孺子は、季桓子の妻。言うこころは、若し男を生まば、公に告げて之を立てよ。
女也、則肥也可。肥、康子也。
【読み】
女ならば、則ち肥や可なり、と。肥は、康子なり。
季孫卒、康子卽位。旣葬、康子在朝。在公朝也。
【読み】
季孫卒し、康子位に卽く。旣に葬り、康子朝に在り。公朝に在るなり。
南氏生男。正常載以如朝、告曰、夫子有遺言。命其圉臣曰、南氏生男、則以告於君與大夫而立之。今生矣。男也。敢告。遂奔衛。康子請退。退、辟位也。
【読み】
南氏男を生む。正常載せて以て朝に如き、告げて曰く、夫子遺言有り。其の圉臣に命じて曰く、南氏男を生まば、則ち以て君と大夫とに告げて之を立てよ、と。今生まれたり。男なり。敢えて告ぐ、と。遂に衛に奔る。康子退かんと請う。退くとは、位を辟くるなり。
公使共劉視之、共劉、魯大夫。○共、音恭。
【読み】
公共劉をして之を視せしむれば、共劉は、魯の大夫。○共は、音恭。
則或殺之矣。乃討之。討殺者。
【読み】
則ち或ひと之を殺せり。乃ち之を討ず。殺す者を討ず。
召正常。正常不反。畏康子也。傳備言季氏家事。
【読み】
正常を召す。正常反らず。康子を畏るるなり。傳備に季氏が家事を言う。
冬、十月、晉趙鞅圍朝歌、師于其南。范・中行所在。
【読み】
冬、十月、晉の趙鞅朝歌を圍みて、其の南に師す。范・中行が在る所。
荀寅伐其郛、伐其北郭圍。
【読み】
荀寅其の郛[ふ]を伐ち、其の北郭の圍みを伐つ。
使其徒自北門入、己犯師而出。荀寅使在外救己之徒、擊趙氏圍之北門、因外内攻得出。
【読み】
其の徒をして北門より入らしめて、己は師を犯して出づ。荀寅外に在りて己を救うの徒をして、趙氏が圍む北門を擊たしめ、外内より攻むるに因りて出づることを得るなり。
癸丑、奔邯鄲。
【読み】
癸丑[みずのと・うし]、邯鄲に奔る。
十一月、趙鞅殺士皐夷。惡范氏也。惡范氏而殺其族。言遷怒。○惡、烏路反。
【読み】
十一月、趙鞅士皐夷を殺す。范氏を惡みてなり。范氏を惡みて其の族を殺す。怒りを遷すを言う。○惡は、烏路反。
〔經〕四年、春、王二月、庚戌、盜殺蔡侯申。賤者。故稱盜。不言弑其君、賤盜也。○殺、申志反。案宣十七年、蔡公申卒。是文侯也。今昭侯、是其玄孫。不容與高祖同名。未審何者誤。
【読み】
〔經〕四年、春、王の二月、庚戌[かのえ・いぬ]、盜蔡侯申を殺す。賤者なり。故に盜と稱す。其の君を弑すと言わざるは、盜を賤しむなり。○殺は、申志反。案ずるに宣十七年に、蔡公申卒す、と。是れ文侯なり。今の昭侯は、是れ其の玄孫なり。高祖と同じく名づく容からず。未だ何れの者が誤りなるか審らかならず。
蔡公孫辰出奔吳。弑君賊之黨。故書名。
【読み】
蔡の公孫辰出でて吳に奔る。君を弑する賊の黨。故に名を書す。
葬秦惠公。無傳。
【読み】
秦の惠公を葬る。傳無し。
宋人執小邾子。無傳。邾子無道於其民。故稱人以執。
【読み】
宋人小邾子[しょうちゅし]を執う。傳無し。邾子其の民に無道なり。故に人と稱して以て執う。
夏、蔡殺其大夫公孫姓・公孫霍。皆弑君黨。○姓、音生。
【読み】
夏、蔡其の大夫公孫姓・公孫霍を殺す。皆君を弑するの黨。○姓は、音生。
晉人執戎蠻子赤歸于楚。晉恥爲楚執諸侯。故稱人以告。若蠻子不道於其民也。赤本屬楚。故言歸。○爲、于僞反。
【読み】
晉人戎蠻子赤を執えて楚に歸[おく]る。晉楚の爲に諸侯を執うることを恥ず。故に人と稱して以て告ぐ。蠻子其の民に不道なるが若くす。赤本楚に屬す。故に歸ると言う。○爲は、于僞反。
城西郛。無傳。魯西郭。備晉也。
【読み】
西郛[せいふ]に城く。傳無し。魯の西郭。晉に備うるなり。
六月、辛丑、亳社災。無傳。天火也。亳社、殷社。諸侯有之、所以戒亡國。
【読み】
六月、辛丑[かのと・うし]、亳社[はくしゃ]災あり。傳無し。天火なり。亳社は、殷の社。諸侯に之れ有るは、亡國を戒むる所以なり。
秋、八月、甲寅、滕子結卒。無傳。同盟於皐鼬。
【読み】
秋、八月、甲寅[きのえ・とら]、滕子結卒す。傳無し。皐鼬[こうゆう]に同盟す。
冬、十有二月、葬蔡昭公。無傳。亂故是以緩。
【読み】
冬、十有二月、蔡の昭公を葬る。傳無し。亂の故に是を以て緩きなり。
葬滕頃公。無傳。
【読み】
滕の頃公[けいこう]を葬る。傳無し。
〔傳〕四年、春、蔡昭侯將如吳。諸大夫恐其又遷也。承。承、音懲。蓋楚言也。
【読み】
〔傳〕四年、春、蔡の昭侯將に吳に如かんとす。諸大夫其の又遷らんことを恐る。承[こ]りたればなり。承は、音懲。蓋し楚言ならん。
公孫翩逐而射之。入於家人而卒。翩、蔡大夫。○射、食亦反。
【読み】
公孫翩逐いて之を射る。家人に入りて卒す。翩は、蔡の大夫。○射は、食亦反。
以兩矢門之。衆莫敢進。翩以矢自守其門。
【読み】
兩矢を以て門す。衆敢えて進むこと莫し。翩矢を以て自ら其の門を守る。
文之鍇後至。鍇、蔡大夫。○鍇、音楷。又音皆。
【読み】
文之鍇[ぶんしかい]後れて至る。鍇は、蔡の大夫。○鍇は、音楷。又音皆。
曰、如牆而進、多而殺二人。倂行如牆倶進。○倂、步頃反。
【読み】
曰、牆の如くにして進まば、多くして二人を殺さんのみ、と。倂行して牆の如くにして倶に進むなり。○倂は、步頃反。
鍇執弓而先。翩射之、中肘。鍇遂殺之。故逐公孫辰、而殺公孫姓・公孫旴。旴、卽霍也。○旴、況于反。
【読み】
鍇弓を執りて先だつ。翩之を射て、肘に中つ。鍇遂に之を殺す。故に公孫辰を逐いて、公孫姓・公孫旴[こうそんく]を殺す。旴は、卽ち霍なり。○旴は、況于反。
*頭注に、「宋板、旴作盱。」とある。
夏、楚人旣克夷虎、夷虎、蠻夷叛楚者。
【読み】
夏、楚人旣に夷虎に克ち、夷虎は、蠻夷の楚に叛く者。
乃謀北方。左司馬眅・申公壽餘・葉公諸梁致蔡於負函、三子、楚大夫也。此蔡之故地人民、楚因以爲邑。致之者、會其衆也。○眅、普版反。又匹姦反。葉、始涉反。
【読み】
乃ち北方を謀る。左司馬眅[はん]・申公壽餘・葉公[しょうこう]諸梁蔡を負函に致し、三子は、楚の大夫なり。此れ蔡の故地の人民にして、楚因りて以て邑とするなり。之を致すとは、其の衆を會するなり。○眅は、普版反。又匹姦反。葉は、始涉反。
致方城之外於繒關、負函・繒關、皆楚地。○繒、才陵反。
【読み】
方城の外を繒關[しょうかん]に致して、負函・繒關は、皆楚の地。○繒は、才陵反。
曰、吳將泝江入郢。逆流曰泝。
【読み】
曰く、吳將に江に泝[さかのぼ]りて郢[えい]に入らんとす。流れに逆うを泝[そ]と曰う。
將奔命焉。爲一昔之期、襲梁及霍、僞辭當備吳、夜結期、明日便襲梁・霍、使不知之。梁、河南梁縣西南故城也。梁南有霍陽山。皆蠻子之邑也。
【読み】
將に命に奔らんとす、と。一昔の期を爲して、梁と霍とを襲い、當に吳に備うべしと僞り辭して、夜期を結び、明日便ち梁・霍を襲いて、之を知らざらしむ。梁は、河南梁縣の西南の故城なり。梁の南に霍陽山有り。皆蠻子の邑なり。
單浮餘圍蠻氏。蠻氏潰。浮餘、楚大夫。○單、音善。
【読み】
單浮餘蠻氏を圍む。蠻氏潰ゆ。浮餘は、楚の大夫。○單は、音善。
蠻子赤奔晉陰地。陰地、河南山北、自上雒以東、至陸渾。○渾、戶門反。
【読み】
蠻子赤晉の陰地に奔る。陰地は、河南の山北、上雒より以東、陸渾に至るまでなり。○渾は、戶門反。
司馬起豐・析與狄・戎、楚司馬眅也。析縣、屬南郷郡。析南有豐郷。皆楚邑。發此二邑人及戎・狄。
【読み】
司馬豐・析と狄・戎とを起こして、楚の司馬眅なり。析縣は、南郷郡に屬す。析の南に豐郷有り。皆楚の邑。此の二邑人と戎・狄とを發す。
以臨上雒、左師軍于菟和、菟和山、在上雒東也。○菟、音徒。
【読み】
以て上雒[じょうらく]に臨み、左師は菟和[とわ]に軍し、菟和山は、上雒の東に在るなり。○菟は、音徒。
右師軍于倉野、倉野、在上雒縣。
【読み】
右師倉野に軍し、倉野は、上雒縣に在り。
使謂陰地之命大夫士蔑、命大夫、別縣監尹。○監、古銜反。
【読み】
陰地の命大夫士蔑に謂わしめて、命大夫は、別縣の監尹。○監は、古銜反。
曰、晉・楚有盟、好惡同之。若將不廢、寡君之願也。不然、將通於少習以聽命。少習、商縣武關也。將大開武關道、以伐晉。○少、詩照反。
【読み】
曰く、晉・楚盟有り、好惡之を同じくせん、と。若し將に廢てざらんとせば、寡君の願いなり。然らずんば、將に少習に通じて以て命を聽かんとす、と。少習は、商縣の武關なり。將に大いに武關の道を開きて、以て晉を伐たんとす。○少は、詩照反。
士蔑請諸趙孟。趙孟曰、晉國未寧。安能惡於楚。必速與之。未寧、時有范・中行之難。
【読み】
士蔑諸を趙孟に請う。趙孟曰く、晉國未だ寧からず。安ぞ能く楚に惡しからん。必ず速やかに之を與えよ、と。未だ寧からずとは、時に范・中行の難有るなり。
士蔑乃致九州之戎、九州戎、在晉陰地陸渾者。
【読み】
士蔑乃ち九州の戎を致すらく、九州の戎は、晉の陰地陸渾に在る者。
將裂田以與蠻子而城之。以詐蠻子。
【読み】
將に田を裂きて以て蠻子に與えて之に城かんとす。以て蠻子を詐るなり。
且將爲之卜。卜城。○爲、于僞反。
【読み】
且つ將に之が爲に卜せんとす。城くことを卜う。○爲は、于僞反。
蠻子聽卜、遂執之、與其五大夫、以畀楚師于三戶、今丹水縣北三戶亭。
【読み】
蠻子卜を聽かんとするを、遂に之を執え、其の五大夫とをさえに、以て楚の師に三戶に畀[あた]うれば、今の丹水縣の北の三戶亭。
司馬致邑立宗焉、以誘其遺民、楚復詐爲蠻子作邑、立其宗主。
【読み】
司馬邑を致し宗を立つるまねして、以て其の遺民を誘きて、楚復蠻子の爲に邑を作り、其の宗主を立つると詐る。
而盡俘以歸。
【読み】
盡く俘にして以[い]て歸れり。
秋、七月、齊陳乞・弦施・衛甯跪救范氏、陳乞、僖子。弦施、弦多。
【読み】
秋、七月、齊の陳乞・弦施・衛の甯跪[ねいき]范氏を救い、陳乞は、僖子。弦施は、弦多。
庚午、圍五鹿。五鹿、晉邑。
【読み】
庚午[かのえ・うま]、五鹿を圍む。五鹿は、晉の邑。
九月、趙鞅圍邯鄲。冬、十一月、邯鄲降。荀寅奔鮮虞、趙稷奔臨。臨、晉邑。○降、戶江反。
【読み】
九月、趙鞅邯鄲を圍む。冬、十一月、邯鄲降る。荀寅鮮虞に奔り、趙稷臨に奔る。臨は、晉の邑。○降は、戶江反。
十二月、弦施逆之、遂墮臨。國夏伐晉、取邢・任・欒・鄗・逆畤・陰人・盂・壺口。八邑、晉地。欒、在趙國平棘縣西北。鄗、卽高邑縣也。路縣東有壺口關。○墮、許規反。任、音壬。鄗、呼洛反。畤、音止。
【読み】
十二月、弦施之を逆え、遂に臨を墮[こぼ]つ。國夏晉を伐ち、邢・任・欒・鄗[かく]・逆畤・陰人・盂・壺口を取る。八邑は、晉の地。欒は、趙國平棘縣の西北に在り。鄗は、卽ち高邑縣なり。路縣の東に壺口關有り。○墮[き]は、許規反。任は、音壬。鄗は、呼洛反。畤は、音止。
會鮮虞、納荀寅于柏人。晉邑也。今趙國柏人縣也。弦施與鮮虞會也。
【読み】
鮮虞に會し、荀寅を柏人に納る。晉の邑なり。今の趙國柏人縣なり。弦施鮮虞と會するなり。
〔經〕五年、春、城毗。無傳。備晉也。
【読み】
〔經〕五年、春、毗に城く。傳無し。晉に備うるなり。
夏、齊侯伐宋。無傳。
【読み】
夏、齊侯宋を伐つ。傳無し。
晉趙鞅帥師伐衛。秋、九月、癸酉、齊侯杵臼卒。再同盟也。
【読み】
晉の趙鞅師を帥いて衛を伐つ。秋、九月、癸酉[みずのと・とり]、齊侯杵臼[しょきゅう]卒す。再び同盟す。
冬、叔還如齊。閏月、葬齊景公。無傳。
【読み】
冬、叔還[しゅくせん]齊に如く。閏月、齊の景公を葬る。傳無し。
〔傳〕五年、春、晉圍柏人。荀寅・士吉射奔齊。
【読み】
〔傳〕五年、春、晉柏人を圍む。荀寅・士吉射齊に奔る。
初、范氏之臣王生惡張柳朔。言諸昭子、使爲柏人。爲柏人宰也。昭子、范吉射。○惡、去聲。下同。
【読み】
初め、范氏の臣王生張柳朔を惡む。諸を昭子に言いて、柏人爲らしめんとす。柏人の宰とするなり。昭子は、范吉射。○惡は、去聲。下も同じ。
昭子曰、夫非而讎乎。對曰、私讎不及公。公家之事也。○夫、音扶。
【読み】
昭子曰く、夫[かれ]は而[なんじ]が讎に非ずや、と。對えて曰く、私讎は公に及ばず。公家の事なり。○夫は、音扶。
好不廢過、惡不去善、義之經也。臣敢違之。及范氏出、出柏人奔齊。○好、呼報反。去、起呂反。
【読み】
好して過ちを廢てず、惡みて善を去てざるは、義の經なり。臣敢えて之に違わんや、と。范氏が出づるに及びて、柏人を出でて齊に奔る。○好は、呼報反。去は、起呂反。
張柳朔謂其子、爾從主勉之。我將止死。王生授我矣。授我死節。
【読み】
張柳朔其の子に謂えらく、爾は主に從いて之を勉めよ。我は將に止まりて死なんとす。王生我に授けり。我に死節を授く。
吾不可以僭之。遂死於柏人。爲吉射距晉戰死。
【読み】
吾れ以て之を僭にす可からず、と。遂に柏人に死す。吉射が爲に晉を距ぎて戰死す。
夏、趙鞅伐衛、范氏之故也。遂圍中牟。衛助范氏故也。
【読み】
夏、趙鞅衛を伐つは、范氏の故なり。遂に中牟を圍む。衛范氏を助くる故なり。
齊燕姬生子、不成而死。燕姬、景公夫人。不成、未冠也。○燕、於賢反。
【読み】
齊の燕姬子を生み、成らずして死す。燕姬は、景公の夫人。成らずとは、未だ冠せざるなり。○燕は、於賢反。
諸子、鬻姒之子荼嬖。諸子、庶公子也。鬻姒、景公妾。荼、安孺子。○鬻、音育。荼、音舒。又音徒。
【読み】
諸子には、鬻姒[いくじ]の子荼[と]嬖せらる。諸子は、庶公子なり。鬻姒は、景公の妾。荼は、安孺子。○鬻は、音育。荼は、音舒。又音徒。
諸大夫恐其爲大子也、言於公曰、君之齒長矣。未有大子。若之何。公曰、二三子閒於憂虞、則有疾疢。亦姑謀樂。何憂於無君。景公意欲立荼、而未發。故以此言塞大夫請。○長、上聲。閒、音閑。又音諫。疢、勑覲反。樂、音洛。
【読み】
諸大夫其の大子爲らんことを恐るるや、公に言いて曰く、君の齒長ぜり。未だ大子有らず。之を若何、と。公曰く、二三子憂虞に閒あれば、則ち疾疢[しっちん]有り。亦姑く樂しみを謀らんのみ。何ぞ君無きを憂えん、と。景公意荼を立てんと欲して、未だ發せず。故に此の言を以て大夫の請を塞ぐなり。○長は、上聲。閒は、音閑。又音諫。疢は、勑覲反。樂は、音洛。
公疾。使國惠子・高昭子立荼、惠子、國夏。昭子、高張。
【読み】
公疾む。國惠子・高昭子をして荼を立てしめて、惠子は、國夏。昭子は、高張。
寘羣公子於萊。萊、齊東鄙邑。
【読み】
羣公子を萊に寘く。萊は、齊の東鄙の邑。
秋、齊景公卒。冬、十月、公子嘉・公子駒・公子黔奔衛、公子鉏・公子陽生來奔。皆景公子在萊者。○黔、巨廉反。又音琴。
【読み】
秋、齊の景公卒す。冬、十月、公子嘉・公子駒・公子黔[けん]衛に奔り、公子鉏・公子陽生來奔す。皆景公の子の萊に在る者。○黔は、巨廉反。又音琴。
萊人歌之曰、景公死乎不與埋。三軍之事乎不與謀。師乎師乎、何黨之乎。師、衆也。黨、所也。之、往也。稱謚、蓋葬後而爲此歌、哀羣公子失所。○與、音預。
【読み】
萊人之を歌いて曰く、景公死して埋むに與らず。三軍の事謀に與らず。師や師や、何れの黨に之かんか、と。師は、衆なり。黨は、所なり。之は、往くなり。謚を稱するは、蓋し葬後にして此の歌を爲り、羣公子の所を失えるを哀しむならん。○與は、音預。
鄭駟秦富而侈。嬖大夫也。而常陳卿之車服於其庭。鄭人惡而殺之。
【読み】
鄭の駟秦富みて侈る。嬖大夫なり。而るに常に卿の車服を其の庭に陳ぬ。鄭人惡みて之を殺せり。
子思曰、詩曰、不解于位、民之攸墍。子思、子產子、國參也。詩、大雅。攸、所也。墍、息也。○解、佳買反。墍、許器反。
【読み】
子思曰く、詩に曰く、位に解[おこた]らざるは、民の墍[いこ]う攸なり、と。子思は、子產の子、國參なり。詩は、大雅。攸は、所なり。墍[き]は、息うなり。○解は、佳買反。墍は、許器反。
不守其位、而能久者鮮矣。商頌曰、不僭不濫、不敢怠皇、命以多福。僭、差也。濫、溢也。皇、暇也。言駟秦違詩・商頌。故受禍。○鮮、息淺反。
【読み】
其の位を守らずして、能く久しき者は鮮し。商頌に曰く、僭[たが]わず濫[あふ]れず、敢えて怠皇せざれば、命ずるに多福を以てす、と。僭は、差[たが]うなり。濫は、溢るるなり。皇は、暇なり。言うこころは、駟秦詩と商頌とに違う。故に禍を受く。○鮮は、息淺反。
〔經〕六年、春、城邾瑕。無傳。備晉也。任城亢父縣北有邾婁城。○亢、苦浪反。又音剛。
【読み】
〔經〕六年、春、邾瑕[ちゅか]に城く。傳無し。晉に備うるなり。任城亢父縣の北に邾婁城有り。○亢は、苦浪反。又音剛。
晉趙鞅帥師伐鮮虞。吳伐陳。夏、齊國夏及高張來奔。二子阿君、廢長立少。旣受命、又不能全。書名、罪之也。
【読み】
晉の趙鞅師を帥いて鮮虞を伐つ。吳陳を伐つ。夏、齊の國夏と高張と來奔す。二子君に阿り、長を廢てて少を立つ。旣に命を受けて、又全くすること能わず。名を書すは、之を罪するなり。
叔還會吳于柤。無傳。○柤、莊加反。
【読み】
叔還[しゅくせん]吳に柤[さ]に會す。傳無し。○柤は、莊加反。
秋、七月、庚寅、楚子軫卒。未同盟、而赴以名。
【読み】
秋、七月、庚寅[かのえ・とら]、楚子軫卒す。未だ同盟せずして、赴[つ]ぐるに名を以てす。
齊陽生入于齊。爲陳乞所逆。故書入。
【読み】
齊の陽生齊に入る。陳乞の爲に逆[むか]えらる。故に入ると書す。
齊陳乞弑其君荼。弑荼者、朱毛與陽生也。而書陳乞、所以明乞立陽生、而荼見弑、則禍由乞始也。楚比劫立、陳乞流涕、子家憚老。皆疑於免罪。故春秋明而書之、以爲弑主。
【読み】
齊の陳乞其の君荼[と]を弑す。荼を弑する者は、朱毛と陽生となり。而るに陳乞と書すは、乞陽生を立てて、荼弑せらるるときは、則ち禍乞に由りて始まるを明らかにする所以なり。楚の比劫立せられ、陳乞涕を流し、子家老を憚る。皆罪を免れんに疑あり。故に春秋明らかにして之を書して、以て主を弑すとす。
冬、仲孫何忌帥師伐邾。無傳。
【読み】
冬、仲孫何忌師を帥いて邾を伐つ。傳無し。
宋向巢帥師伐曹。無傳。
【読み】
宋の向巢[しょうそう]師を帥いて曹を伐つ。傳無し。
〔傳〕六年、春、晉伐鮮虞、治范氏之亂也。四年、鮮虞納荀寅于柏人。
【読み】
〔傳〕六年、春、晉鮮虞を伐つは、范氏の亂を治むるなり。四年、鮮虞荀寅を柏人に納る。
吳伐陳、復脩舊怨也。元年、未得志故也。○復、扶又反。
【読み】
吳陳を伐つは、復舊怨を脩むるなり。元年、未だ志を得ざる故なり。○復は、扶又反。
楚子曰、吾先君與陳有盟。不可以不救。乃救陳、師于城父。陳盟、在昭十三年。
【読み】
楚子曰く、吾が先君陳と盟有り。以て救わずんばある可からず、と。乃ち陳を救いて、城父に師す。陳の盟は、昭十三年に在り。
齊陳乞僞事高・國者、高張・國夏受命立荼。陳乞欲害之。故先僞事焉。
【読み】
齊の陳乞高・國に事うる者の僞[まね]して、高張・國夏命を受けて荼を立つ。陳乞之を害せんと欲す。故に先ず僞り事う。
每朝必驂乘焉。所從必言諸大夫、言其罪過。○乘、去聲。後同。
【読み】
朝する每に必ず驂乘す。從う所には必ず諸大夫を言いて、其の罪過を言う。○乘は、去聲。後も同じ。
曰、彼皆偃蹇。將棄子之命。偃蹇、驕敖。
【読み】
曰く、彼れ皆偃蹇[えんけん]なり。將に子の命を棄てんとす。偃蹇は、驕敖。
皆曰、高・國得君。得君寵也。
【読み】
皆曰う、高・國君を得たり。君の寵を得るなり。
必偪我。盍去諸。固將謀子。子早圖之。圖之、莫如盡滅之。需、事之下也。需、疑也。○去、起呂反。下同。
【読み】
必ず我に偪らん、と。盍ぞ諸を去らざるや。固より將に子を謀らんとす。子早く之を圖れ。之を圖らば、盡く之を滅ぼすに如くは莫し。需[うたがい]は、事の下なり、と。需は、疑いなり。○去は、起呂反。下も同じ。
及朝、則曰、彼虎狼也。見我在子之側、殺我無日矣。請就之位。欲與諸大夫謀高・國。故求就之。
【読み】
朝に及べば、則ち曰く、彼は虎狼なり。我が子の側に在るを見ば、我を殺すこと日無けん。請う、之に位に就かん、と。諸大夫と高・國を謀らんと欲す。故に之に就かんことを求む。
又謂諸大夫曰、二子者禍矣。恃得君而欲謀二三子。曰、國之多難、貴寵之由。盡去之而後君定。旣成謀矣。盍及其未作也先諸。作而後悔、亦無及也。大夫從之。
【読み】
又諸大夫に謂いて曰く、二子の者は禍なり。君を得たるを恃みて二三子を謀らんことを欲す。曰く、國の難多きは、貴寵に之れ由る。盡く之を去りて而して後に君定まらん、と。旣に謀を成せり。盍ぞ其の未だ作らざるに及びて諸に先んぜざる。作りて後に悔ゆとも、亦及ぶこと無けん、と。大夫之に從う。
夏、六月、戊辰、陳乞・鮑牧、牧、鮑圉孫。
【読み】
夏、六月、戊辰[つちのえ・たつ]、陳乞・鮑牧、牧は、鮑圉の孫。
及諸大夫、以甲入于公宮。昭子聞之、與惠子乘如公、戰于莊、敗。高・國敗也。莊、六軌之道。
【読み】
諸大夫と、甲を以て公宮に入る。昭子之を聞きて、惠子と乘じて公に如き、莊に戰い、敗れぬ。高・國敗るるなり。莊は、六軌の道。
國人追之。國夏奔莒。遂及高張・晏圉・弦施來奔。圉、晏嬰之子。圉・施不書、非卿。
【読み】
國人之を追う。國夏莒に奔る。遂に高張・晏圉・弦施と來奔す。圉は、晏嬰の子。圉・施書さざるは、卿に非ざればなり。
秋、七月、楚子在城父。將救陳。卜戰。不吉。卜退。不吉。王曰、然則死也。再敗楚師、不如死。前已敗於柏舉。今若退還、亦是敗。
【読み】
秋、七月、楚子城父に在り。將に陳を救わんとす。戰を卜す。不吉なり。退かんことを卜す。不吉なり。王曰く、然らば則ち死なん。再び楚の師を敗らば、死するに如かず。前已に柏舉に敗らる。今若し退還せば、亦是れ敗るるなり。
*頭注に、「一說、再敗謂今戰更敗也。杜以退還爲敗退。還卽弃逃也。非敗。」とある。
棄盟逃讎、亦不如死。死一也。其死讎乎。命公子申爲王。不可。則命公子結。亦不可。則命公子啓。申、子西。結、子期。啓、子閭。皆昭王兄。
【読み】
盟を棄て讎を逃ぐるも、亦死するに如かず。死は一なり。其れ讎に死なんか、と。公子申に命じて王とせんとす。可[き]かず。則ち公子結に命ず。亦可かず。則ち公子啓に命ず。申は、子西。結は、子期。啓は、子閭。皆昭王の兄。
五辭而後許。
【読み】
五たび辭して而して後に許す。
將戰。王有疾。庚寅、昭王攻大冥、卒于城父。大冥、陳地。吳師所在。
【読み】
將に戰わんとす。王疾有り。庚寅、昭王大冥を攻め、城父に卒す。大冥は、陳の地。吳の師の在る所。
子閭退曰、君王舍其子而讓羣臣。敢忘君乎。從君之命、順也。從命許立。
【読み】
子閭退きて曰く、君王其の子を舍てて羣臣に讓れり。敢えて君を忘れんや。君の命に從うは、順なり。命に從いて立つことを許す。
立君之子、亦順也。二順不可失也。
【読み】
君の子を立つるも、亦順なり。二順失う可からざるなり、と。
與子西・子期謀、潛師閉塗、逆越女之子章、立之而後還。潛師、密發也。閉塗、不通外使也。越女、昭王妾。章、惠王。
【読み】
子西・子期と謀り、師を潛め塗[みち]を閉じ、越女の子章を逆えて、之を立てて而して後に還る。師を潛むるは、密かに發するなり。塗を閉ずるは、外使を通ぜざるなり。越女は、昭王の妾。章は、惠王。
是歲也、有雲如衆赤鳥、夾日以飛三日。楚子使問諸周大史。周大史曰、其當王身乎。日爲人君。妖氣守之。故以爲當王身。雲在楚上。唯楚見之。故禍不及他國。
【読み】
是の歲や、雲有り衆赤鳥の如く、日を夾みて以て飛ぶこと三日。楚子諸を周の大史に問わしむ。周の大史曰く、其れ王の身に當たらんか。日を人君と爲す。妖氣之を守る。故に以て王の身に當たると爲す。雲楚の上に在り。唯楚にのみ之を見る。故に禍他國に及ばず。
若禜之、可移於令尹司馬。禜、禳祭。○禜、音詠。
【読み】
若し之を禜[えい]せば、令尹司馬に移す可し、と。禜は、禳祭。○禜は、音詠。
王曰、除腹心之疾、而寘諸股肱、何益。不穀不有大過、天其夭諸。有罪受罰。又焉移之。遂弗禜。
【読み】
王曰く、腹心の疾を除きて、諸を股肱に寘かば、何の益あらん。不穀大過有らずんば、天其れ夭せんや。罪有らば罰を受けん。又焉ぞ之を移さん、と。遂に禜せず。
初、昭王有疾。卜曰、河爲祟。王弗祭。大夫請祭諸郊。王曰、三代命祀、祭不越望。諸侯望祀竟内山川星辰。
【読み】
初め、昭王疾有り。卜するに曰く、河祟りを爲せり、と。王祭らず。大夫諸を郊に祭らんと請う。王曰く、三代の命祀は、祭望を越えず。諸侯は竟内の山川星辰を望祀す。
江・漢・雎・漳、楚之望也。四水、在楚界。○雎、七餘反。
【読み】
江・漢・雎[しょ]・漳は、楚の望なり。四水は、楚の界に在り。○雎は、七餘反。
禍福之至、不是過也。不穀雖不德、河非所獲罪也。遂弗祭。
【読み】
禍福の至る、是に過ぎざるなり。不穀不德なりと雖も、河は罪を獲る所に非ざるなり、と。遂に祭らず。
孔子曰、楚昭王知大道矣。其不失國也宜哉。夏書曰、惟彼陶唐、帥彼天常、逸書。言堯循天之常道。
【読み】
孔子曰く、楚の昭王大道を知れり。其の國を失わざるや宜なるかな。夏書に曰く、惟れ彼の陶唐、彼の天常に帥[したが]い、逸書。言うこころは、堯天の常道に循う。
有此冀方。今失其行、亂其紀綱、乃滅而亡。滅亡、謂夏桀也。唐虞及夏、同都冀州、不易地而亡、由於不知大道故。○行、如字。又下孟反。
【読み】
此の冀方を有ちぬ。今其の行いを失い、其の紀綱を亂りて、乃ち滅ぼして亡ぼせり、と。滅亡は、夏桀を謂うなり。唐虞と夏と、冀州に同じく都して、地を易えずして亡びしは、大道を知らざるに由る故なり。○行は、字の如し。又下孟反。
又曰、允出玆在玆。由己率常可矣。又逸書。言信出己、則福亦在己。
【読み】
又曰く、允玆に出づれば玆に在り、と。己に由り常に率いて可なり、と。又逸書。言うこころは、信己に出づれば、則ち福も亦己に在り。
八月、齊邴意玆來奔。高・國黨。
【読み】
八月、齊の邴意玆[へいいじ]來奔す。高・國の黨。
陳僖子使召公子陽生。召、在七月。今在八月下、記事之次。
【読み】
陳僖子公子陽生を召ばしむ。召ぶは、七月に在り。今八月の下に在るは、記事の次なり。
陽生駕而見南郭且于、且于、齊公子鉏。在魯南郭。○且、子餘反。
【読み】
陽生駕して南郭且于[なんかくしょう]を見て、且于は、齊の公子鉏。魯の南郭に在り。○且は、子餘反。
曰、嘗獻馬於季孫、不入於上乘。故又獻此。請與子乘之。畏在家人聞其言。故欲二人共載。以試馬爲辭。○上乘、繩證反。
【読み】
曰く、嘗て馬を季孫に獻ぜしに、上乘に入れず。故に又此を獻ぜんとす。請う、子と之に乘らん、と。家に在らば人の其の言を聞かんことを畏る。故に二人共に載らんと欲す。馬を試みるを以て辭と爲すなり。○上乘は、繩證反。
出萊門而告之故。魯郭門也。
【読み】
萊門を出でて之に故を告ぐ。魯の郭門なり。
闞止知之、先待諸外。闞止、陽生家臣、子我也。待外、欲倶去。
【読み】
闞止[かんし]之を知り、先ず諸を外に待つ。闞止は、陽生の家臣、子我なり。外に待つとは、倶に去らんと欲するなり。
公子曰、事未可知。反與壬也處。壬、陽生子、簡公。
【読み】
公子曰く、事未だ知る可からず。反りて壬と與に處れ、と。壬は、陽生の子、簡公。
戒之遂行。戒使無洩言。
【読み】
之を戒めて遂に行く。戒めて言を洩らすこと無からしむ。
逮夜至於齊。國人知之。故以昏至。不欲令人知也。國人知而不言、言陳氏得衆。
【読み】
夜に逮びて齊に至る。國人之を知る。故[ことさら]に昏を以て至る。人をして知らしめんことを欲せざるなり。國人知りて言わざるは、陳氏の衆を得るを言う。
僖子使子士之母養之、隱於僖子家内。子士母、僖子妾。
【読み】
僖子子士の母をして之を養わしめ、僖子の家内に隱る。子士の母は、僖子の妾。
與饋者皆入。陳僖子又令陽生隨饋食之人、入處公宮。
【読み】
饋者と皆[とも]に入る。陳僖子又陽生をして饋食の人に隨いて、入りて公宮に處らしむ。
冬、十月、丁卯、立之。
【読み】
冬、十月、丁卯[ひのと・う]、之を立つ。
將盟。盟諸大夫。
【読み】
將に盟わんとす。諸大夫に盟う。
鮑子醉而往。其臣差車鮑點、點、鮑牧臣也。差車、主車之官。○差、所宜反。點、音沾。又如字。
【読み】
鮑子醉いて往く。其の臣差車鮑點、點は、鮑牧の臣なり。差車は、主車の官。○差は、所宜反。點は、音沾。又字の如し。
曰、此誰之命也。陳子曰、受命于鮑子。遂誣鮑子曰、子之命也。見其醉。故誣之。
【読み】
曰く、此れ誰が命ぞや、と。陳子曰く、命を鮑子に受けたり、と。遂に鮑子を誣いて曰く、子の命なり、と。其の醉えるを見る。故に之を誣う。
鮑子曰、女忘君之爲孺子牛而折其齒乎。而背之也。孺子、荼也。景公嘗銜繩爲牛、使荼牽之。荼頓地。故折其齒。○折、之舌反。又市列反。
【読み】
鮑子曰く、女君の孺子の牛と爲りて其の齒を折きしを忘れたりや。而るに之に背けるや、と。孺子は、荼なり。景公嘗て繩を銜[ふく]みて牛と爲り、荼をして之を牽かしむ。荼地に頓[たう]る。故に其の齒を折けり。○折は、之舌反。又市列反。
悼公稽首、悼公、陽生。
【読み】
悼公稽首して、悼公は、陽生。
曰、吾子奉義而行者也。若我可、不必亡一大夫。言己可爲君、必不怨鮑子。
【読み】
曰く、吾子は義を奉じて行う者なり。若し我れ可ならば、必ず一大夫を亡わじ。言うこころは、己君爲る可くば、必ず鮑子を怨みじ。
若我不可、不必亡一公子。公子、自謂也。恐鮑子殺己。故要之。○要、一遙反。
【読み】
若し我れ不可ならば、必ず一公子を亡わざれ。公子は、自ら謂うなり。鮑子が己を殺さんことを恐る。故に之を要す。○要は、一遙反。
義則進、否則退。敢不唯子是從。廢興無以亂、則所願也。鮑子曰、誰非君之子。乃受盟。言陽生亦君之子。固可立。
【読み】
義ならば則ち進み、否[しか]らずば則ち退かん。敢えて唯子に是れ從わざらんや。廢興亂を以てすること無きは、則ち願う所なり、と。鮑子曰く、誰か君の子に非ざらん、と。乃ち盟を受く。言うこころは、陽生も亦君の子なり。固より立つ可し。
使胡姬以安孺子如賴。胡姬、景公妾也。賴、齊邑。安、號也。
【読み】
胡姬をして安孺子を以[い]て賴に如かしむ。胡姬は、景公の妾なり。賴は、齊の邑。安は、號なり。
去鬻姒、荼之母。○去、起呂反。
【読み】
鬻姒[いくじ]を去り、荼の母。○去は、起呂反。
殺王甲、拘江說、囚王豹于句竇之丘。三子、景公嬖臣。荼之黨也。○說、音悅。句、音鉤。
【読み】
王甲を殺し、江說を拘え、王豹を句竇[こうとう]の丘に囚う。三子は、景公の嬖臣。荼の黨なり。○說は、音悅。句は、音鉤。
公使朱毛告於陳子、朱毛、齊大夫。
【読み】
公朱毛をして陳子に告げしめて、朱毛は、齊の大夫。
曰、微子則不及此。然君異於器。不可以二。器二不匱、君二多難。敢布諸大夫。僖子不對而泣曰、君舉不信羣臣乎。舉、皆也。○難、乃旦反。
【読み】
曰く、子微かりせば則ち此に及ばじ。然れども君は器に異なり。以て二ある可からず。器の二は匱[とぼ]しからず、君の二は難多し。敢えて諸を大夫に布く、と。僖子對えずして泣きて曰く、君舉[みな]羣臣を信ぜざるか。舉は、皆なり。○難は、乃旦反。
以齊國之困、困又有憂、内有饑荒之困、又有兵革之憂。
【読み】
齊國の困しみて、困しみて又憂え有りて、内に饑荒の困しみ有り、又兵革の憂え有り。
少君不可以訪、是以求長君。庶亦能容羣臣乎。不然、夫孺子何罪。毛復命。公悔之。悔失言。
【読み】
少君には以て訪[と]う可からざるを以て、是を以て長君を求めり。庶わくは亦能く羣臣を容れんや。然らずんば、夫の孺子何の罪あらん、と。毛復命す。公之を悔ゆ。失言を悔ゆ。
毛曰、君大訪於陳子、而圖其小可也。大謂國政、小謂殺荼。
【読み】
毛曰く、君大は陳子に訪いて、其の小を圖りて可なり、と。大は國政を謂い、小は荼を殺すを謂う。
使毛遷孺子於駘。不至、殺諸野幕之下、葬諸殳冒淳。恐駘人不從。故毛駐於野、張帳而殺之。駘、齊邑。殳冒淳、地名。實以冬殺。經書秋者、史書秋記始事、遂連其死、通以冬告魯。○駘、他才反。又徒來反。殳、音殊。
【読み】
毛をして孺子を駘に遷さしむ。至らずして、諸を野幕の下に殺し、諸を殳冒淳[しゅぼうじゅん]に葬れり。駘人の從わざらんことを恐る。故に毛野に駐[とど]まり、帳を張りて之を殺す。駘は、齊の邑。殳冒淳は、地の名。實は冬を以て殺す。經秋に書すは、史秋に書して始事を記し、遂に其の死を連ねて、通じて冬を以て魯に告ぐるなり。○駘は、他才反。又徒來反。殳は、音殊。
〔經〕七年、春、宋皇瑗帥師侵鄭。晉魏曼多帥師侵衛。夏、公會吳于鄫。鄫、今琅邪鄫縣。○瑗、于眷反。鄫、才陵反。
【読み】
〔經〕七年、春、宋の皇瑗師を帥いて鄭を侵す。晉の魏曼多師を帥いて衛を侵す。夏、公吳に鄫[しょう]に會す。鄫は、今の琅邪鄫縣。○瑗は、于眷反。鄫は、才陵反。
秋、公伐邾。八月、己酉、入邾、以邾子益來。他國言歸、於魯言來。外内之辭。
【読み】
秋、公邾[ちゅ]を伐つ。八月、己酉[つちのと・とり]、邾に入り、邾子益を以[い]て來る。他國には歸と言い、魯に於ては來と言う。外内の辭なり。
宋人圍曹。冬、鄭駟弘帥師救曹。
【読み】
宋人曹を圍む。冬、鄭の駟弘師を帥いて曹を救う。
〔傳〕七年、春、宋師侵鄭、鄭叛晉故也。定八年、鄭始叛。
【読み】
〔傳〕七年、春、宋の師鄭を侵すは、鄭晉に叛く故なり。定八年、鄭始めて叛く。
晉師侵衛、衛不服也。五年、晉伐衛。至今未服。
【読み】
晉の師衛を侵すは、衛服せざればなり。五年、晉衛を伐つ。今に至りて未だ服せず。
夏、公會吳于鄫。吳欲霸中國。
【読み】
夏、公吳に鄫に會す。吳中國に霸たらんと欲す。
吳來徵百牢。子服景伯對曰、先王未之有也。吳人曰、宋百牢我。是時吳過宋得百牢。
【読み】
吳來りて百牢を徵す。子服景伯對えて曰く、先王未だ之れ有らず、と。吳人曰く、宋我に百牢せり。是の時吳宋を過りて百牢を得たり。
魯不可以後宋。且魯牢晉大夫過十。晉大夫、范鞅也。在昭二十一年。
【読み】
魯以て宋に後る可からず。且つ魯晉の大夫に牢すること十に過ぎたり。晉の大夫は、范鞅なり。昭二十一年に在り。
吳王百牢、不亦可乎。景伯曰、晉范鞅貪而棄禮、以大國懼敝邑。故敝邑十一牢之。君若以禮命於諸侯、則有數矣。有常數。
【読み】
吳王に百牢せんこと、亦可ならずや、と。景伯曰く、晉の范鞅貪りて禮を棄て、大國を以て敝邑を懼[おど]す。故に敝邑之に十一牢せり。君若し禮を以て諸侯に命ぜば、則ち數有り。常數有るなり。
若亦棄禮、則有淫者矣。淫、過也。
【読み】
若し亦禮を棄てば、則ち淫[す]ぐる者有らん。淫は、過ぐるなり。
周之王也、制禮上物、不過十二、上物、天子之牢。
【読み】
周の王たるや、禮を制すること上物も、十二に過ぎず、上物は、天子の牢。
以爲天子之大數也。天有十二次。故制禮象之。
【読み】
以て天子の大數と爲す。天に十二次有り。故に禮を制して之に象る。
*「天子之大數」は、漢籍國字解全書では、「天之大數」である。
今棄周禮、而曰必百牢。亦唯執事。
【読み】
今周禮を棄てて、必ず百牢せよと曰う。亦唯執事のままなり、と。
吳人弗聽。景伯曰、吳將亡矣。棄天而背本。違周爲背本。
【読み】
吳人聽かず。景伯曰く、吳將に亡びんとす。天を棄てて本に背けり。周に違いて本に背くと爲す。
不與、必棄疾於我。放棄凶疾、來伐擊我。
【読み】
與えずんば、必ず疾を我に棄てん。凶疾を放棄して、來りて我を伐擊せん。
乃與之。
【読み】
乃ち之に與う。
大宰嚭召季康子。嚭、吳大夫。
【読み】
大宰嚭[ひ]季康子を召ぶ。嚭は、吳の大夫。
康子使子貢辭。大宰嚭曰、國君道長、蓋言君長大於道路。○長、丁丈反。
【読み】
康子子貢をして辭せしむ。大宰嚭曰く、國君道に長じて、蓋し君道路に長大するを言う。○長は、丁丈反。
而大夫不出門。此何禮也。對曰、豈以爲禮。畏大國也。畏大國、不敢虛國盡行。
【読み】
大夫門を出でず。此れ何の禮ぞや、と。對えて曰く、豈以て禮とせんや。大國を畏れてなり。大國を畏れて、敢えて國を虛しくして盡く行かず。
大國不以禮命於諸侯。苟不以禮、豈可量也。寡君旣共命焉。其老豈敢棄其國。大伯端委以治周禮、仲雍嗣之、斷髮文身、臝以爲飾、豈禮也哉。有由然也。大伯、周大王之長子。仲雍、大伯弟也。大伯・仲雍、讓其弟季歷、倶適荆蠻、遂有民衆。大伯卒、無子。仲雍嗣立。不能行禮致化。故效吳俗。言其權時制宜、以辟災害、非以爲禮也。端委、禮衣也。○共、音恭。斷、丁管反。臝、力果反。
【読み】
大國禮を以て諸侯に命ぜず。苟も禮を以てせざれば、豈量る可けんや。寡君旣に命に共せり。其の老豈敢えて其の國を棄てんや。大伯は端委して以て周禮を治め、仲雍之を嗣ぎて、髮を斷ち身を文[もどろ]け、臝[はだか]にして以て飾りとせしは、豈禮ならんや。由ること有りて然るなり、と。大伯は、周の大王の長子。仲雍は、大伯の弟なり。大伯・仲雍、其の弟季歷に讓りて、倶に荆蠻に適き、遂に民衆を有つ。大伯卒して、子無し。仲雍嗣立す。禮を行いて化を致すこと能わず。故に吳の俗に效う。言うこころは、其の時を權り宜を制して、以て災害を辟くは、以て禮とするに非ざるなり。端委は、禮衣なり。○共は、音恭。斷は、丁管反。臝は、力果反。
反自鄫、以吳爲無能爲也。棄禮、知其不能霸也。
【読み】
鄫より反りて、吳を以て能く爲すこと無しと爲す。禮を棄つれば、其の霸たること能わざるを知るなり。
季康子欲伐邾、乃饗大夫以謀之。子服景伯曰、小所以事大、信也。大所以保小、仁也。背大國不信。大國、吳也。
【読み】
季康子邾を伐たんことを欲し、乃ち大夫を饗して以て之を謀る。子服景伯曰く、小の大に事うる所以は、信なり。大の小を保つ所以は、仁なり。大國に背くは不信なり。大國は、吳なり。
伐小國不仁。民保於城、城保於德。失二德者、危將焉保。二德、信與仁也。
【読み】
小國を伐つは不仁なり。民は城に保んじ、城は德に保んず。二德を失わば、危うきも將に焉[いずく]に保んぜんとする、と。二德は、信と仁となり。
孟孫曰、二三子以爲何如。怪諸大夫不言。故指問之。
【読み】
孟孫曰く、二三子何如と以爲[おも]える。諸大夫の言わざるを怪しむ。故に指して之を問う。
惡賢而逆之。孟孫賢景伯、欲使大夫不逆其言。惡、猶安也。○惡、音烏。
【読み】
惡ぞ賢として之に逆わん。孟孫景伯を賢とし、大夫をして其の言に逆わざらしめんと欲す。惡は、猶安ぞのごとし。○惡は、音烏。
對曰、禹合諸侯於塗山、執玉帛者萬國、諸大夫對也。諸侯執玉、附庸執帛。塗山、在壽春東北。
【読み】
對えて曰く、禹諸侯を塗山に合わせしとき、玉帛を執れる者萬國なりしも、諸大夫對うるなり。諸侯は玉を執り、附庸は帛を執る。塗山は、壽春の東北に在り。
今其存者、無數十焉。唯大不字小、小不事大也。言諸侯相伐、古來以然。○數、所主反。
【読み】
今其の存する者、數十無し。唯大小を字[めぐ]まず、小大に事えざればなり。言うこころは、諸侯相伐つは、古來以[すで]に然り。○數は、所主反。
知必危、何故不言。知伐邾必危、自當言。今不言者、不危故也。大夫以荅孟孫所怪、且阿附季孫。
【読み】
必ず危うきを知らば、何の故に言わざらんや、と。邾を伐つの必ず危うきを知らば、自ら當に言うべし。今言わざるは、危うからざる故なり。大夫以て孟孫が怪しむ所に荅え、且つ季孫に阿附するなり。
魯德如邾。而以衆加之。可乎。孟孫忿荅大夫。今魯德無以勝邾。但欲恃衆。可乎、言不可。
【読み】
魯の德も邾の如し。而るに衆を以て之に加えんとす。可ならんや、と。孟孫忿りて大夫に荅う。今魯の德以て邾に勝ること無し。但衆を恃まんと欲す。可ならんやとは、不可なるを言う。
不樂而出。季・孟意異、佞直不同。故罷饗。○樂、音岳。一音洛。
【読み】
樂しまずして出づ。季・孟意異に、佞直同じからず。故に饗を罷[や]む。○樂は、音岳。一に音洛。
秋伐邾、及范門。邾郭門也。
【読み】
秋邾を伐ち、范門に及ぶ。邾の郭門なり。
猶聞鐘聲。邾不禦寇。
【読み】
猶鐘聲を聞く。邾寇を禦がず。
大夫諫不聽。茅成子請告於吳。成子、邾大夫、茅夷鴻。
【読み】
大夫諫むれども聽かず。茅成子吳に告げんと請う。成子は、邾の大夫、茅夷鴻。
不許。曰、魯擊柝聞於邾。言以近。○聞、音問。又如字。
【読み】
許さず。曰く、魯は柝[たく]を擊てば邾に聞こゆ。言うこころは、近きを以てなり。○聞は、音問。又字の如し。
吳二千里。不三月不至。何及於我。且國内豈不足。言足以距魯。
【読み】
吳は二千里なり。三月ならざれば至らじ。何ぞ我に及ばん。且つ國内豈足らざらんや、と。言うこころは、以て魯を距ぐに足る。
成子以茅叛。高平西南有茅郷亭。
【読み】
成子茅を以て叛く。高平の西南に茅郷亭有り。
師遂入邾、處其公宮、衆師晝掠。虜掠取財物也。○掠、音亮。
【読み】
師遂に邾に入り、其の公宮に處り、衆師晝掠む。虜掠して財物を取るなり。○掠は、音亮。
邾衆保于繹。繹、邾山也。在鄒縣北。
【読み】
邾の衆繹に保つ。繹は、邾の山なり。鄒縣の北に在り。
師宵掠。以邾子益來、益、邾隱公也。晝夜掠、傳言康子無法。
【読み】
師宵掠む。邾子益を以て來り、益は、邾の隱公なり。晝夜掠むるは、傳康子法無きを言う。
獻于亳社、以其亡國與殷同。
【読み】
亳社[はくしゃ]に獻じ、其の國を亡ぼすこと殷と同じきを以てなり。
囚諸負瑕。負瑕故有繹。負瑕、魯邑。高平南、平陽縣西北有瑕丘城。前者魯得邾之繹民、使在負瑕。故使相就以辱之。
【読み】
諸を負瑕に囚う。負瑕に故[もと]繹有ればなり。負瑕は、魯の邑。高平の南、平陽縣の西北に瑕丘城有り。前者[さき]に魯邾の繹民を得、負瑕に在らしむ。故に相就かしめて以て之を辱む。
邾茅夷鴻以束帛乘韋、自請救於吳、無君命。故言自。○乘、去聲。下同。
【読み】
邾の茅夷鴻束帛乘韋を以て、自ら救いを吳に請いて、君命無し。故に自らと言う。○乘は、去聲。下も同じ。
曰、魯弱晉而遠吳、馮恃其衆、馮、依。○馮、音憑。
【読み】
曰く、魯晉を弱しとして吳を遠しとし、其の衆を馮恃して、馮は、依るなり。○馮は、音憑。
而背君之盟、辟君之執事、辟、陋。○辟、匹亦反。
【読み】
君の盟に背き、君の執事を辟として、辟は、陋[いや]し。○辟は、匹亦反。
以陵我小國。邾非敢自愛也。懼君威之不立。君威之不立、小國之憂也。若夏盟於鄫衍、鄫衍、卽鄫也。鄫盟不書、吳行夷禮、禮儀不典、非所以結信義。故不錄。
【読み】
以て我が小國を陵げり。邾敢えて自ら愛しむには非ざるなり。君の威の立たざらんことを懼れてなり。君の威の立たざるは、小國の憂えなり。若し夏鄫衍[しょうえん]に盟い、鄫衍は、卽ち鄫なり。鄫の盟書さざるは、吳夷禮を行いて、禮儀典らず、信義を結ぶ所以に非ず。故に錄せず。
秋而背之、成求而不違、言魯成其所求、無違逆也。
【読み】
秋にして之に背き、求めを成して違わずんば、言うこころは、魯其の求むる所を成して、違逆する無きなり。
四方諸侯其何以事君。且魯賦八百乘、君之貳也。貳、敵也。魯以八百乘之賦貢於吳。言其國大。
【読み】
四方の諸侯其れ何を以て君に事えん。且つ魯の賦は八百乘、君の貳なり。貳は、敵なり。魯八百乘の賦を以て吳に貢す。其の國大なるを言う。
邾賦六百乘、君之私也。爲私屬。
【読み】
邾の賦は六百乘、君の私なり。私屬爲り。
以私奉貳、唯君圖之。吳子從之。爲明年、吳伐我傳。
【読み】
私を以て貳に奉ぜんこと、唯君之を圖れ、と。吳子之に從う。明年、吳我を伐つ爲の傳なり。
宋人圍曹。鄭桓子思曰、宋人有曹、鄭之患也。不可以不救。桓、謚。
【読み】
宋人曹を圍む。鄭の桓子思曰く、宋人曹を有たば、鄭の患えなり。以て救わずんばある可からず、と。桓は、謚なり。
冬、鄭師救曹、侵宋。
【読み】
冬、鄭の師曹を救いて、宋を侵す。
初、曹人或夢衆君子立于社宮、社宮、社也。
【読み】
初め、曹人或ひと夢みらく、衆君子社宮に立ちて、社宮は、社なり。
而謀亡曹。曹叔振鐸請待公孫彊。許之。振鐸、曹始祖。
【読み】
曹を亡ぼさんことを謀る。曹の叔振鐸公孫彊を待たんと請う。之を許す、と。振鐸は、曹の始祖なり。
旦而求之、曹無之。戒其子曰、我死、爾聞公孫彊爲政、必去之。及曹伯陽卽位、好田弋。曹鄙人公孫彊好弋、獲白鴈獻之、且言田弋之說。說之、因訪政事、大說之。有寵。使爲司城以聽政。夢者之子乃行。
【読み】
旦にして之を求むるに、曹に之れ無し。其の子を戒めて曰く、我れ死して、爾公孫彊政を爲すと聞かば、必ず之を去れ、と。曹伯陽が位に卽くに及び、田弋[でんよく]を好む。曹の鄙人公孫彊弋を好み、白鴈を獲て之を獻じ、且田弋の說を言う。之を說び、因りて政事を訪い、大いに之を說ぶ。寵有り。司城と爲して以て政を聽かしむ。夢みる者の子乃ち行[さ]る。
彊言霸說於曹伯。曹伯從之、乃背晉而奸宋。宋人伐之。晉人不救。築五邑於其郊。曰黍丘・揖丘・大城・鍾・邘。爲明年、入曹傳也。梁國下邑縣西南有黍丘亭。○說、如字。說之、音悅。霸說、如字。又始銳反。揖、音集。一於入反。邘、音于。
【読み】
彊霸の說を曹伯に言う。曹伯之に從い、乃ち晉に背きて宋を奸す。宋人之を伐つ。晉人救わず。五邑を其の郊に築く。黍丘・揖丘・大城・鍾・邘[う]と曰う。明年、曹に入る爲の傳なり。梁國下邑縣の西南に黍丘亭有り。○說は、字の如し。說之は、音悅。霸說は、字の如し。又始銳反。揖は、音集。一に於入反。邘は、音于。
〔經〕八年、春、王正月、宋公入曹、以曹伯陽歸。曹人背晉而奸宋。是以致討。宋公旣還、而不忍褚師之詬、怒而反兵、一舉滅曹。滅非本志。故以入告。
【読み】
〔經〕八年、春、王の正月、宋公曹に入り、曹伯陽を以[い]て歸る。曹人晉に背きて宋を奸す。是を以て討を致す。宋公旣に還りて、褚師の詬[はずかし]めに忍びず、怒りて兵を反して、一舉して曹を滅ぼす。滅ぼすは本志に非ず。故に入るを以て告ぐ。
吳伐我。夏、齊人取讙及闡。不書伐、兵未加而魯與之邑。闡、在東平剛縣北。○讙、音歡。闡、尺善反。
【読み】
吳我を伐つ。夏、齊人讙と闡[せん]とを取る。伐を書さざるは、兵未だ加えずして魯之に邑を與うればなり。闡は、東平剛縣の北に在り。○讙は、音歡。闡は、尺善反。
歸邾子益于邾。秋、七月。冬、十有二月、癸亥、杞伯過卒。無傳。未同盟、而赴以名。○過、古禾反。
【読み】
邾子益を邾に歸す。秋、七月。冬、十有二月、癸亥[みずのと・い]、杞伯過卒す。傳無し。未だ同盟せずして、赴[つ]ぐるに名を以てす。○過は、古禾反。
齊人歸讙及闡。不言來、命歸之、無官使也。○使、所吏反。
【読み】
齊人讙と闡とを歸す。來ると言わざるは、命じて之を歸して、官使無ければなり。○使は、所吏反。
*頭注に、「官使、足利本官作旨。宋板作肯。文十五年、疏引此註作指使。釋文作官使。所吏反。」とある。
〔傳〕八年、春、宋公伐曹、將還。褚師子肥殿。子肥、宋大夫。○殿、丁練反。
【読み】
〔傳〕八年、春、宋公曹を伐ち、將に還らんとす。褚師子肥殿たり。子肥は、宋の大夫。○殿は、丁練反。
曹人詬之。不行。詬、詈辱也。不行、殿兵止也。○詬、呼豆反。
【読み】
曹人之を詬[ののし]る。行かず。詬は、詈辱なり。行かずとは、殿兵止まるなり。○詬は、呼豆反。
師待之。公聞之怒、命反之、遂滅曹、執曹伯及司城彊以歸、殺之。終曹人之夢。
【読み】
師之を待つ。公之を聞きて怒り、命じて之を反さしめ、遂に曹を滅ぼし、曹伯と司城彊とを執えて以て歸りて、之を殺す。曹人の夢を終わる。
吳爲邾故、將伐魯。問於叔孫輒。問可伐不。輒故魯人。
【読み】
吳邾の爲の故に、將に魯を伐たんとす。叔孫輒[しゅくそんちょう]に問う。伐つ可きや不やと問う。輒は故[もと]魯人。
叔孫輒對曰、魯有名而無情。有大國名、無情實。
【読み】
叔孫輒對えて曰く、魯は名有りて情無し。大國の名有りて、情實無し。
伐之必得志焉。退而告公山不狃。不狃亦故魯人。
【読み】
之を伐たば必ず志を得ん、と。退きて公山不狃[こうざんふじゅう]に告ぐ。不狃も亦故魯人。
公山不狃曰、非禮也。君子違不適讎國。違、奔亡也。
【読み】
公山不狃曰く、禮に非ざるなり。君子違[さ]るも讎國に適かず。違は、奔亡するなり。
未臣而有伐之、奔命焉、死之可也。未臣所適之國、若有伐本國者、則可還奔命死其難。
【読み】
未だ臣たらずして之を伐つこと有らば、命に奔りて、之に死なんこと可なり。未だ適く所の國に臣たらずして、若し本國を伐つ者有れば、則ち還りて命に奔りて其の難に死す可し。
所託也則隱。曾所因託、則爲之隱惡。
【読み】
託する所は則ち隱す。曾て因託する所は、則ち之が爲に惡を隱す。
且夫人之行也、不以所惡廢郷。不以其私怨惡廢棄其郷黨之好。○夫、音扶。行、下孟反。又如字。惡、烏路反。又如字。
【読み】
且つ夫れ人の行いや、惡む所を以て郷を廢てず。其の私の怨惡を以て其の郷黨の好を廢棄せず。○夫は、音扶。行は、下孟反。又字の如し。惡は、烏路反。又字の如し。
今子以小惡而欲覆宗國。不亦難乎。輒、魯公族。故謂之宗國。
【読み】
今子小惡を以て宗國を覆さんと欲す。亦難からずや。輒は、魯の公族。故に之を宗國と謂う。
若使子率、子必辭。王將使我。子張疾之。子張、輒也。
【読み】
若し子をして率いしめば、子必ず辭せよ。王將に我をせしめんとす、と。子張之を疾む。子張は、輒なり。
王問於子洩。子洩、不狃。
【読み】
王子洩[しせつ]に問う。子洩は、不狃。
對曰、魯雖無與立、緩時若無能自立。
【読み】
對えて曰く、魯は與に立つこと無しと雖も、緩き時は能く自立すること無きが若し。
*頭注に、「按自、當作與。寫誤也。與立、指君臣也。朱注、魯平日雖無共立以爲黨者。」とある。
必有與斃。急則人人知懼、皆將同死戰。
【読み】
必ず與に斃るること有らん。急なれば則ち人人懼れを知り、皆將に同じく死戰せんとす。
諸侯將救之。未可以得志焉。晉與齊・楚輔之、是四讎也。與魯而四。
【読み】
諸侯將に之を救わんとす。未だ以て志を得可からず。晉と齊・楚と之を輔けば、是れ四讎なり。魯と與にして四。
夫魯、齊・晉之脣。脣亡齒寒、君所知也。不救何爲。
【読み】
夫れ魯は、齊・晉の脣[くちびる]なり。脣亡ぶれば齒寒きというは、君の知る所なり。救わずして何をかせん、と。
三月、吳伐我。子洩率、故道險、從武城。故由險道、欲使魯成備。
【読み】
三月、吳我を伐つ。子洩率いて、故[ことさら]に險に道して、武城よりす。故に險道よりするは、魯をして備えを成さしめんと欲するなり。
初、武城人或有因於吳竟田焉。僑田吳界。
【読み】
初め、武城の人或ひと吳の竟に因りて田づくる有り。吳の界に僑田す。
拘鄫人之漚菅者曰、何故使吾水滋。鄫人亦僑田吳。滋、濁也。○漚、烏豆反。菅、古顏反。滋、音玄。又本作玆。子絲反。字林云、黑也。
【読み】
鄫人[しょうひと]の菅を漚[ひた]す者を拘えて曰く、何の故に吾が水を滋[にご]らしむる、と。鄫人も亦吳に僑田す。滋は、濁るなり。○漚[おう]は、烏豆反。菅は、古顏反。滋は、音玄。又本玆に作る。子絲反。字林に云う、黑なり、と。
及吳師至、拘者道之、以伐武城克之。鄫人敎吳、必可克。
【読み】
吳の師の至るに及びて、拘われたる者之を道[みちび]くらく、以て武城を伐たば之に克たん、と。鄫人吳に敎えらく、必ず克つ可し、と。
王犯嘗爲之宰、澹臺子羽之父好焉。國人懼。王犯、吳大夫。故嘗奔魯爲武城宰。澹臺子羽、武城人。孔子弟子也。其父與王犯相善。國人懼其爲内應。○澹、待甘反。
【読み】
王犯嘗て之が宰と爲り、澹臺子羽[たんだいしう]の父好す。國人懼る。王犯は、吳の大夫。故に嘗て魯に奔りて武城の宰と爲る。澹臺子羽は、武城の人。孔子の弟子なり。其の父王犯と相善し。國人其の内應を爲さんことを懼る。○澹は、待甘反。
懿子謂景伯、若之何。對曰、吳師來、斯與之戰。何患焉。且召之而至。又何求焉。言犯盟伐邾、所以召吳。
【読み】
懿子景伯に謂えらく、之を若何にせん、と。對えて曰く、吳の師來らば、斯に之と戰わん。何ぞ患えん。且つ之を召して至れり。又何をか求めん、と。言うこころは、盟を犯して邾を伐ちしは、吳を召す所以なり。
吳師克東陽而進、舍於五梧、明日、舍於蠶室。三邑、魯地。
【読み】
吳の師東陽に克ちて進み、五梧に舍り、明日、蠶室に舍る。三邑は、魯の地。
公賓庚・公甲叔子與戰于夷。獲叔子與析朱鉏、公賓庚・公甲叔子、幷析朱鉏、爲三人。皆同車。傳互言之。
【読み】
公賓庚・公甲叔子與に夷に戰う。叔子と析朱鉏とを獲、公賓庚・公甲叔子と、析朱鉏とを幷せて、三人と爲す。皆同車なり。傳互いに之を言うなり。
獻於王。王曰、此同車。必使能。國未可望也。同車能倶死。是國能使人。故不可望得。
【読み】
王に獻ず。王曰く、此れ車を同じくす。必ず能を使うならん。國未だ望む可からず、と。同車能く倶に死す。是れ國能く人を使うなり。故に得ることを望む可からず。
明日、舍于庚宗、遂次于泗上。微虎欲宵攻王舍、微虎、魯大夫。
【読み】
明日、庚宗に舍り、遂に泗上に次る。微虎宵王舍を攻めんことを欲し、微虎は、魯の大夫。
私屬徒七百人、三踊於幕庭。於帳前設格、令士試躍之。○屬、音燭。令、力呈反。
【読み】
私に徒七百人を屬[あつ]めて、幕庭に三踊せしむ。帳前に於て格を設け、士をして試みに之を躍らしむ。○屬は、音燭。令は、力呈反。
卒三百人。有若與焉。卒、終也。終得三百人任行。有若、孔子弟子。與在三百人中。○與、音預。任、音壬。
【読み】
卒わりに三百人あり。有若與れり。卒は、終わりなり。終わりに三百人の行くに任[た]えたるを得。有若は、孔子の弟子。與りて三百人の中に在り。○與は、音預。任は、音壬。
及稷門之内。三百人行、至稷門。
【読み】
稷門の内に及ぶ。三百人行きて、稷門に至る。
或謂季孫曰、不足以害吳、而多殺國士。不如已也。乃止之。吳子聞之、一夕三遷。畏微虎也。○三、息暫反。
【読み】
或ひと季孫に謂いて曰く、以て吳を害するに足らずして、多く國士を殺さん。已むに如かず、と。乃ち之を止む。吳子之を聞きて、一夕に三たび遷る。微虎を畏れてなり。○三は、息暫反。
吳人行成。求與魯成。
【読み】
吳人成[たい]らぎを行う。魯と成らがんことを求む。
將盟。景伯曰、楚人圍宋、易子而食、析骸而爨、在宣十五年。
【読み】
將に盟わんとす。景伯曰く、楚人宋を圍みしとき、子を易えて食らい、骸を析[さ]きて爨[かし]ぎしも、宣十五年に在り。
猶無城下之盟。我未及虧、而有城下之盟、是棄國也。吳輕而遠。不能久。將歸矣。請少待之。弗從。景伯負載造於萊門。以言不見從、故負載書、將欲出盟。○輕、去聲。造、七報反。
【読み】
猶城下の盟無かりき。我れ未だ虧[か]くるに及ばずして、城下の盟有らば、是れ國を棄つるなり。吳輕くして遠し。久しきこと能わじ。將に歸らんとす。請う、少[しばら]く之を待て、と。從わず。景伯載を負いて萊門に造る。言從われざるを以て、故に載書を負いて、將に出でて盟わんと欲せんとす。○輕は、去聲。造は、七報反。
乃請釋子服何於吳。吳人許之。以王子姑曹當之。而後止。釋、舍也。魯人不以盟爲了、欲因留景伯爲質於吳。旣得吳之許、復求吳王之子以交質。吳人不欲留王子。故遂兩止。
【読み】
乃ち子服何を吳に釋[お]かんと請う。吳人之を許す。王子姑曹を以て之に當てんとす。而して後に止む。釋は、舍くなり。魯人盟を以て了わると爲さず、因りて景伯を留めて吳に質と爲さんと欲す。旣に吳の許しを得て、復吳王の子を求めて以て交々質にせんとす。吳人王子を留めんことを欲せず。故に遂に兩つながら止む。
吳人盟而還。不書盟、恥吳夷。
【読み】
吳人盟いて還る。盟を書さざるは、吳の夷を恥じてなり。
齊悼公之來也、在五年。
【読み】
齊の悼公の來るや、五年に在り。
季康子以其妹妻之。卽位而逆之。季魴侯通焉。魴侯、康子叔父。○魴、音房。
【読み】
季康子其の妹を以て之に妻す。位に卽きて之を逆う。季魴侯通ず。魴侯は、康子の叔父。○魴は、音房。
女言其情。弗敢與也。齊侯怒。夏、五月、齊鮑牧帥師伐我、取讙及闡。
【読み】
女其の情を言う。敢えて與えず。齊侯怒る。夏、五月、齊の鮑牧師を帥いて我を伐ち、讙と闡とを取る。
或譖胡姬於齊侯、胡姬、景公妾。
【読み】
或ひと胡姬を齊侯に譖[しこ]ぢて、胡姬は、景公の妾。
曰、安孺子之黨也。六月、齊侯殺胡姬。傳言齊侯無道、所以不終。
【読み】
曰く、安孺子の黨なり、と。六月、齊侯胡姬を殺す。傳齊侯無道にして、終わらざる所以を言う。
齊侯使如吳請師、將以伐我。乃歸邾子。齊未得季姬。故請師也。吳前爲邾討魯。懼二國同心。故歸邾子。
【読み】
齊侯吳に如きて師を請わしめ、將に以て我を伐たんとす。乃ち邾子を歸す。齊未だ季姬を得ず。故に師を請うなり。吳前に邾の爲に魯を討ず。二國心を同じくせんことを懼る。故に邾子を歸す。
邾子又無道。吳子使大宰子餘討之、子餘、大宰嚭。
【読み】
邾子又無道なり。吳子大宰子餘をして之を討ぜしめ、子餘は、大宰嚭。
囚諸樓臺、栫之以棘。栫、擁也。○栫、在薦反。
【読み】
諸を樓臺に囚え、之を栫[かこ]うに棘を以てす。栫[せん]は、擁[かこ]うなり。○栫は、在薦反。
使諸大夫奉大子革以爲政。革、邾大子、桓公也。爲十年、邾子來奔傳。
【読み】
諸大夫をして大子革を奉じて以て政を爲さしむ。革は、邾の大子、桓公なり。十年、邾子來奔する爲の傳なり。
秋、及齊平。九月、臧賓如如齊涖盟。賓如、臧會子。
【読み】
秋、齊と平らぐ。九月、臧賓如齊に如きて涖みて盟う。賓如は、臧會の子。
齊閭丘明來涖盟。明、閭丘嬰之子也。盟不書、諱畧之。
【読み】
齊の閭丘明來りて涖みて盟う。明は、閭丘嬰の子なり。盟書さざるは、諱みて之を畧するなり。
且逆季姬以歸。嬖。季姬、魴侯所通者。
【読み】
且つ季姬を逆えて以て歸る。嬖せらる。季姬は、魴侯が通ずる所の者。
鮑牧又謂羣公子曰、使女有馬千乘乎。有馬千乘、使爲君也。鮑牧本不欲立陽生。故諷動羣公子。○女、音汝。乘、去聲。
【読み】
鮑牧又羣公子に謂いて曰く、女をして馬千乘を有らしめんか、と。馬千乘有りとは、君爲らしむるなり。鮑牧本陽生を立てんことを欲せず。故に羣公子を諷動す。○女は、音汝。乘は、去聲。
公子愬之。公謂鮑子、或譖子。子姑居於潞。以察之。潞、齊邑。
【読み】
公子之を愬[うった]う。公鮑子に謂えらく、或ひと子を譖づ。子姑く潞に居れ。以て之を察せん。潞は、齊の邑。
若有之、則分室以行。若無之、則反子之所。出門。使以三分之一行、半道使以二乘。及潞。麇之以入、遂殺之。麇、亦束縛。○麇、丘隕反。
【読み】
若し之れ有らば、則ち室を分けて以て行[さ]らしめん。若し之れ無くば、則ち子の所に反さん、と。門を出づ。三分の一を以て行かしめ、半道にして二乘を以てせしむ。潞に及ぶ。之を麇[とら]えて以て入り、遂に之を殺す。麇[きん]も、亦束縛なり。○麇は、丘隕反。
冬、十二月、齊人歸讙及闡、季姬嬖故也。
【読み】
冬、十二月、齊人讙と闡とを歸すは、季姬嬖せらるる故なり。
〔經〕九年、春、王二月、葬杞僖公。無傳。三月而葬。速。
【読み】
〔經〕九年、春、王の二月、杞の僖公を葬る。傳無し。三月にして葬る。速きなり。
宋皇瑗帥師取鄭師于雍丘。書取、覆而敗之。雍丘縣屬陳留。○雍、於勇反。
【読み】
宋の皇瑗師を帥いて鄭の師を雍丘に取る。取ると書すは、覆して之を敗るなり。雍丘縣は陳留に屬す。○雍は、於勇反。
夏、楚人伐陳。秋、宋公伐鄭。冬、十月。
【読み】
夏、楚人陳を伐つ。秋、宋公鄭を伐つ。冬、十月。
〔傳〕九年、春、齊侯使公孟綽辭師于吳。齊與魯平。故辭吳師。
【読み】
〔傳〕九年、春、齊侯公孟綽[こうもうしゃく]をして師を吳に辭せしむ。齊魯と平らぐ。故に吳の師を辭す。
吳子曰、昔歲寡人聞命。今又革之。不知所從。將進受命於君。爲十年、吳伐齊傳。
【読み】
吳子曰く、昔歲寡人命を聞けり。今又之を革む。從わん所を知らず。將に進みて命を君に受けんとす、と。十年、吳齊を伐つ爲の傳なり。
鄭武子賸之嬖許瑕求邑。無以與之。賸、罕達也。瑕、武子之屬。
【読み】
鄭の武子賸[ぶしよう]の嬖許瑕邑を求む。以て之に與うる無し。賸は、罕達なり。瑕は、武子の屬。
請外取。許之。瑕請取於他國也。
【読み】
外に取らんことを請う。之を許す。瑕他國に取らんことを請うなり。
故圍宋雍丘。宋皇瑗圍鄭師、許瑕師。
【読み】
故に宋の雍丘を圍む。宋の皇瑗鄭の師を圍み、許瑕の師。
每日遷舍、作壘塹、成輒徙舍合其圍。
【読み】
每日舍を遷して、壘塹を作りて、成れば輒ち舍を徙して其の圍を合わす。
壘合。鄭師哭。子姚救之、大敗。子姚、武子賸也。
【読み】
壘合う。鄭の師哭す。子姚[しよう]之を救い、大いに敗らる。子姚は、武子賸なり。
二月、甲戌、宋取鄭師于雍丘、使有能者無死、惜其能也。
【読み】
二月、甲戌[きのえ・いぬ]、宋鄭の師を雍丘に取り、能有る者をして死すること無からしめ、其の能を惜しむなり。
以郟張與鄭羅歸。鄭之有能者。○郟、古洽反。
【読み】
郟張[こうちょう]と鄭羅とを以[い]て歸る。鄭の能有る者。○郟は、古洽反。
夏、楚人伐陳、陳卽吳故也。
【読み】
夏、楚人陳を伐つは、陳吳に卽く故なり。
宋公伐鄭。報雍丘。
【読み】
宋公鄭を伐つ。雍丘に報ず。
秋、吳城邗、溝通江・淮。於邗江築城、穿溝、東北通射陽湖、西北至宋口入淮。通糧道也。今廣陵韓江是。○邗、音寒。射、食亦反。又音亦。
【読み】
秋、吳邗[かん]に城き、溝して江・淮に通ず。邗江に於て城を築き、溝を穿ち、東北は射陽湖に通じ、西北は宋口に至りて淮に入る。糧道を通ずるなり。今の廣陵の韓江是れなり。○邗は、音寒。射は、食亦反。又音亦。
晉趙鞅卜救鄭、遇水適火。水火之兆。
【読み】
晉の趙鞅鄭を救わんことを卜して、水の火に適くに遇う。水火の兆。
占諸史趙・史墨・史龜。皆晉史。
【読み】
諸を史趙・史墨・史龜に占う。皆晉の史。
史龜曰、是謂沈陽。火陽得水。故沈。
【読み】
史龜曰く、是を沈陽と謂う。火の陽水を得。故に沈む。
可以興兵。兵、陰類也。故可以興兵。
【読み】
以て兵を興す可し。兵は、陰類なり。故に以て兵を興す可し。
利以伐姜。不利子商。姜、齊姓。子商、謂宋。
【読み】
以て姜を伐つに利あり。子商に利あらず。姜は、齊の姓。子商は、宋を謂う。
伐齊則可。敵宋不吉。史墨曰、盈、水名也。子、水位也。趙鞅姓盈。宋姓子。水盈坎乃行。子姓又得北方水位。
【読み】
齊を伐たば則ち可ならん。宋に敵せば不吉なり、と。史墨曰く、盈は、水の名なり。子は、水の位なり。趙鞅姓は盈。宋の姓は子。水坎に盈ちて乃ち行く。子姓又北方の水位を得。
名位敵。不可干也。二水倶盛。故言不可干。
【読み】
名位敵す。干す可からざるなり。二水倶に盛んなり。故に干す可からずと言う。
炎帝爲火師、神農有火端、以火名官。
【読み】
炎帝は火師を爲して、神農火端有り、火を以て官に名づく。
姜姓其後也。水勝火。伐姜則可。史趙曰、是謂如川之滿、不可游也。旣盈而得水位。故爲如川之滿、不可馮游。言其波流盛。○馮、皮冰反。
【読み】
姜姓は其の後なり。水は火に勝つ。姜を伐たば則ち可ならん、と。史趙曰く、是を川の滿ちて、游ぐ可からざるが如しと謂う。旣に盈ちて水位を得。故に川の滿ちて、馮游す可からざるが如しと爲す。言うこころは、其の波流盛んなり。○馮は、皮冰反。
鄭方有罪。不可救也。鄭以嬖寵伐人。故以爲有罪。
【読み】
鄭方に罪有り。救う可からざるなり。鄭嬖寵を以て人を伐つ。故に以て罪有りと爲す。
救鄭則不吉。不知其他。救鄭則當伐宋。故不吉也。
【読み】
鄭を救わば則ち不吉なり。其の他を知らず、と。鄭を救わば則ち當に宋を伐つべし。故に不吉なり。
陽虎以周易筮之。遇泰 乾下坤上、泰。
【読み】
陽虎周易を以て之を筮す。泰の 乾下坤上は、泰。
之需。乾下坎上、需。泰六五變。
【読み】
需に之くに遇う。乾下坎上は、需。泰の六五變ず。
曰、宋方吉。不可與也。不可與戰。泰六五曰、帝乙歸妹以祉、元吉。帝乙、紂父。立爲天子。故稱帝乙。陰而得中、有似王者嫁妹。得如其願、受福祿而大吉。
【読み】
曰く、宋方に吉なり。與にす可からざるなり。與に戰う可からず。泰の六五に曰く、帝乙妹を歸がせて以て祉あり、元吉なり、と。帝乙は、紂の父。立ちて天子と爲る。故に帝乙と稱す。陰にして中を得、王者の妹を嫁するに似たること有り。其の願いの如くなることを得、福祿を受けて大吉なり。
微子啓、帝乙之元子也。宋・鄭、甥舅也。宋・鄭爲昏姻、甥舅之國。宋爲微子之後。今卜得帝乙卦。故以爲宋吉。
【読み】
微子啓は、帝乙の元子なり。宋・鄭、甥舅なり。宋・鄭昏姻を爲して、甥舅の國なり。宋を微子の後と爲す。今卜して帝乙の卦を得。故に以て宋吉と爲す。
祉、祿也。若帝乙之元子歸妹而有吉祿、我安得吉焉。乃止。吉在彼、則我伐之、爲不吉。
【読み】
祉は、祿なり。若し帝乙の元子妹を歸がせて吉祿有らば、我れ安ぞ吉を得ん、と。乃ち止む。吉彼に在りて、則ち我れ之を伐つは、不吉と爲す。
冬、吳子使來儆師伐齊。前年、齊與吳謀伐魯。齊旣與魯成而止。故吳恨之、反與魯謀伐齊。
【読み】
冬、吳子來りて師を儆[いまし]めて齊を伐たしむ。前年、齊吳と魯を伐たんことを謀る。齊旣に魯と成らぎて止む。故に吳之を恨み、反って魯と齊を伐たんことを謀る。
〔經〕十年、春、王二月、邾子益來奔。公會吳伐齊。書會、從不與謀。
【読み】
〔經〕十年、春、王の二月、邾子[ちゅし]益來奔す。公吳に會して齊を伐つ。會を書すは、從いて謀に與らざるなり。
三月、戊戌、齊侯陽生卒。以疾赴。故不書弑。
【読み】
三月、戊戌[つちのえ・いぬ]、齊侯陽生卒す。疾を以て赴[つ]ぐ。故に弑するを書さず。
夏、宋人伐鄭。無傳。
【読み】
夏、宋人鄭を伐つ。傳無し。
晉趙鞅帥師侵齊。五月、公至自伐齊。無傳。
【読み】
晉の趙鞅師を帥いて齊を侵す。五月、公齊を伐ちてより至る。傳無し。
葬齊悼公。無傳。
【読み】
齊の悼公を葬る。傳無し。
衛公孟彄自齊歸于衛。無傳。書歸、齊納之。○彄、苦侯反。
【読み】
衛の公孟彄[こうもうこう]齊より衛に歸る。傳無し。歸ると書すは、齊之を納るればなり。○彄は、苦侯反。
薛伯夷卒。無傳。赴以名。故書。
【読み】
薛伯夷卒す。傳無し。赴ぐるに名を以てす。故に書す。
秋、葬薛惠公。無傳。
【読み】
秋、薛の惠公を葬る。傳無し。
冬、楚公子結帥師伐陳。吳救陳。季子不書、陳人來告不以名。
【読み】
冬、楚の公子結師を帥いて陳を伐つ。吳陳を救う。季子書さざるは、陳人來り告ぐるに名を以てせざればなり。
〔傳〕十年、春、邾隱公來奔。齊甥也。故遂奔齊。終子貢之言。
【読み】
〔傳〕十年、春、邾の隱公來奔す。齊の甥なり。故に遂に齊に奔る。子貢の言を終わる。
公會吳子・邾子・郯子伐齊南鄙、師于鄎。鄎、齊地。邾・郯不書、兵幷屬吳、不列於諸侯。○郯、音談。鄎、音息。
【読み】
公吳子・邾子・郯子[たんし]に會して齊の南鄙を伐ち、鄎[そく]に師す。鄎は、齊の地。邾・郯書さざるは、兵吳に幷屬して、諸侯に列ねざればなり。○郯は、音談。鄎は、音息。
齊人弑悼公、赴于師。以說吳。
【読み】
齊人悼公を弑して、師に赴[つ]ぐ。以て吳に說く。
吳子三日哭于軍門之外。徐承帥舟師、將自海入齊。齊人敗之。吳師乃還。承、吳大夫。
【読み】
吳子三日軍門の外に哭す。徐承舟師を帥いて、將に海より齊に入らんとす。齊人之を敗る。吳の師乃ち還る。承は、吳の大夫。
夏、趙鞅帥師伐齊。經書侵、以侵告。
【読み】
夏、趙鞅師を帥いて齊を伐つ。經に侵すと書すは、侵すを以て告ぐればなり。
大夫請卜之。趙孟曰、吾卜於此起兵。謂往歲、卜伐宋不吉、利以伐姜。故今興兵。
【読み】
大夫之を卜せんと請う。趙孟曰く、吾れ此に卜して兵を起こせり。往歲、宋を伐たんことを卜するに不吉なり、以て姜を伐つに利あり。故に今兵を興すを謂う。
事不再令、再令、瀆也。
【読み】
事は再び令せず、再令するは、瀆すなり。
卜不襲吉。襲、重也。
【読み】
卜は吉を襲[かさ]ねず。襲は、重ぬるなり。
行也。於是乎取犂及轅、犂、一名隰。濟南有隰陰縣。祝阿縣西有轅城。○轅、音袁。一于眷反。
【読み】
行かん、と。是に於て犂と轅とを取り、犂は、一名は隰[しゅう]。濟南に隰陰縣有り。祝阿縣の西に轅城有り。○轅は、音袁。一に于眷反。
毀高唐之郭、侵及賴而還。
【読み】
高唐の郭を毀ち、侵して賴に及びて還る。
秋、吳子使來復儆師。伐齊未得志故。爲明年、吳伐齊傳。○復、扶又反。
【読み】
秋、吳子來りて復師を儆[いまし]めしむ。齊を伐ちて未だ志を得ざる故なり。明年、吳齊を伐つ爲の傳なり。○復は、扶又反。
冬、楚子期伐陳。陳卽吳故。
【読み】
冬、楚子期陳を伐つ。陳吳に卽く故なり。
吳延州來季子救陳。謂子期曰、二君不務德、二君、吳・楚。
【読み】
吳の延州來の季子陳を救う。子期に謂いて曰く、二君德を務めずして、二君は、吳・楚なり。
而力爭諸侯。民何罪焉。我請退、以爲子名。務德而安民。乃還。季子、吳王壽夢少子也。壽夢以襄十二年卒。至今七十七歲。壽夢卒、季子已能讓國、年當十五六。至今蓋九十餘。○夢、音蒙。
【読み】
諸侯を力爭す。民何の罪ある。我れ請う、退きて、以て子が名を爲さん。德を務めて民を安んぜよ、と。乃ち還る。季子は、吳王壽夢の少子なり。壽夢襄十二年を以て卒す。今に至りて七十七歲なり。壽夢卒するとき、季子已に能く國を讓るときは、年當に十五六なるべし。今に至りて蓋し九十餘ならん。○夢は、音蒙。
〔經〕十有一年、春、齊國書帥師伐我。夏、陳轅頗出奔鄭。書名、貪也。○頗、破可反。又普多反。
【読み】
〔經〕十有一年、春、齊の國書師を帥いて我を伐つ。夏、陳の轅頗出でて鄭に奔る。名を書すは、貪ればなり。○頗は、破可反。又普多反。
五月、公會吳伐齊。甲戌、齊國書帥師及吳戰于艾陵。齊師敗績。獲齊國書。公與伐而不與戰。艾陵、齊地。
【読み】
五月、公吳に會して齊を伐つ。甲戌[きのえ・いぬ]、齊の國書師を帥いて吳と艾陵に戰う。齊の師敗績す。齊の國書を獲たり。公伐に與りて戰に與らず。艾陵は、齊の地。
秋、七月、辛酉、滕子虞母卒。無傳。赴以名。故書之。
【読み】
秋、七月、辛酉[かのと・とり]、滕子虞母卒す。傳無し。赴[つ]ぐるに名を以てす。故に之を書す。
秋、十有一月、葬滕隱公。無傳。
【読み】
秋、十有一月、滕の隱公を葬る。傳無し。
衛世叔齊出奔宋。書名、淫也。
【読み】
衛の世叔齊出でて宋に奔る。名を書すは、淫なればなり。
〔傳〕十一年、春、齊爲鄎故、鄎、在前年。
【読み】
〔傳〕十一年、春、齊鄎[そく]の爲の故に、鄎は、前年に在り。
國書・高無丕帥師伐我、及淸。淸、齊地。濟北盧縣東有淸亭。○丕、普悲反。
【読み】
國書・高無丕師を帥いて我を伐ち、淸に及ぶ。淸は、齊の地。濟北盧縣の東に淸亭有り。○丕は、普悲反。
季孫謂其宰冉求、冉求、魯人。孔子弟子。
【読み】
季孫其の宰冉求に謂いて、冉求は、魯人。孔子の弟子なり。
曰、齊師在淸、必魯故也。若之何。求曰、一子守、二子從公禦諸竟。季孫曰、不能。自度、力不能使二子禦諸竟。○守、去聲。從、如字。又去聲。竟、音境。
【読み】
曰く、齊の師淸に在るは、必ず魯の故ならん。之を若何にせん、と。求曰く、一子は守り、二子は公に從いて諸を竟に禦がせよ、と。季孫曰く、能ず、と。自ら度るに、力二子をして諸を竟に禦がしむること能わず。○守は、去聲。從は、字の如し。又去聲。竟は、音境。
求曰、居封疆之閒。封疆、竟内近郊之地。
【読み】
求曰く、封疆の閒に居らせよ、と。封疆は、竟内近郊の地。
季孫告二子。二子、叔孫・孟孫也。
【読み】
季孫二子に告ぐ。二子は、叔孫・孟孫なり。
二子不可。求曰、若不可、則君無出。一子帥師背城而戰。不屬者非魯人也。屬、臣屬也。言不戰爲不臣。
【読み】
二子可[き]かず。求曰く、若し可かずんば、則ち君出づること無かれ。一子師を帥いて城を背にして戰え。屬せざらん者は魯人に非ざるなり。屬は、臣屬なり。言うこころは、戰わざれば不臣爲るなり。
魯之羣室、衆於齊之兵車。羣室、都邑居家。
【読み】
魯の羣室、齊の兵車より衆し。羣室は、都邑の居家なり。
一室敵車、優矣。子何患焉。二子之不欲戰也宜。政在季氏。言二子恨季氏專政。故不盡力。
【読み】
一室車に敵すれば、優なり。子何ぞ患えん。二子の戰を欲せざるや宜なり。政季氏に在ればなり。言うこころは、二子季氏政を專にするを恨む。故に力を盡くさず。
當子之身、齊人伐魯而不能戰、子之恥也。大不列於諸侯矣。
【読み】
子の身に當たり、齊人魯を伐ちて戰うこと能わずんば、子の恥なり。大いに諸侯に列ならじ、と。
*頭注に、「一讀、大字屬上句、非。」とある。
季孫使從於朝、使冉求隨己之公朝。
【読み】
季孫朝に從わしめ、冉求をして己に隨いて公朝に之かしむ。
俟於黨氏之溝。黨氏溝、朝中地名。○黨、音掌。
【読み】
黨氏[しょうし]の溝に俟つ。黨氏の溝は、朝中の地の名。○黨は、音掌。
武叔呼而問戰焉。問冉求。
【読み】
武叔呼びて戰を問う。冉求に問う。
對曰、君子有遠慮。小人何知。懿子强問之。對曰、小人慮材而言、量力而共者也。言子所問、非己材力所及。故不能言。○强、其丈反。共、音恭。
【読み】
對えて曰く、君子は遠慮有り。小人何をか知らん、と。懿子强いて之を問う。對えて曰く、小人は材を慮りて言い、力を量りて共する者なり、と。言うこころは、子の問う所、己が材力の及ばん所に非ず。故に言うこと能わず。○强は、其丈反。共は、音恭。
武叔曰、是謂我不成丈夫也。知冉求非己不欲戰。故不對。
【読み】
武叔曰く、是れ我を丈夫と成らずと謂えるなり、と。冉求己が戰を欲せざるを非る。故に對えざることを知る。
退而蒐乘。蒐、閱。
【読み】
退きて乘を蒐す。蒐は、閱す。
孟孺子洩帥右師、孺子、孟懿子之子、武伯彘。
【読み】
孟孺子洩右師を帥い、孺子は、孟懿子の子、武伯彘[ち]なり。
顏羽御、邴洩爲右。二子、孟氏臣。
【読み】
顏羽御たり、邴洩右爲り。二子は、孟氏の臣。
冉求帥左師、管周父御、樊遲爲右。樊遲、魯人。孔子弟子、樊須。○帥、音率。
【読み】
冉求左師を帥い、管周父御たり、樊遲右爲り。樊遲は、魯人。孔子の弟子、樊須なり。○帥は、音率。
季孫曰、須也弱。有子曰、就用命焉。雖年少能用命。有子、冉求也。○少、詩照反。
【読み】
季孫曰く、須や弱[わか]きなり、と。有子曰く、就きて命を用ゆ、と。年少と雖も能く命を用ゆ。有子は、冉求なり。○少は、詩照反。
季孫之甲七千、冉有以武城人三百爲己徒卒、步卒精兵。
【読み】
季孫の甲七千、冉有武城の人三百を以て己が徒卒と爲し、步卒の精兵。
老幼守宮、次于雩門之外。南城門也。
【読み】
老幼に宮を守らせ、雩門[うもん]の外に次[やど]る。南城門なり。
五日、右師從之。五日乃從、言不欲戰。
【読み】
五日ありて、右師之に從う。五日にして乃ち從うは、戰を欲せざるを言う。
公叔務人 務人、公爲。昭公子。
【読み】
公叔務人 務人は、公爲。昭公の子。
見保者而泣、保守城者。
【読み】
保者を見て泣きて、城を保守する者なり。
曰、事充、繇役煩。
【読み】
曰く、事充[わずら]わしく、繇役煩わし。
政重、賦稅多。
【読み】
政重きも、賦稅多し。
上不能謀、士不能死。何以治民。吾旣言之矣。敢不勉乎。旣言人不能死。己不敢不死。
【読み】
上謀ること能わず、士死すること能わず。何を以て民を治めん。吾れ旣に之を言えり。敢えて勉めざらんや、と。旣に人の死すること能わざるを言う。己敢えて死なずんばあらず。
師及齊師戰于郊。齊師自稷曲。稷曲、郊地名。
【読み】
師齊の師と郊に戰う。齊の師稷曲よりす。稷曲は、郊の地の名なり。
師不踰溝。樊遲曰、非不能也。不信子也。請三刻而踰之。與衆三刻約信。
【読み】
師溝を踰えず。樊遲曰く、能わざるには非ざるなり。子を信ぜざればなり。請う、三刻して之を踰えん、と。衆と三刻して約信す。
如之。衆從之。如樊遲言、乃踰溝。
【読み】
之の如くす。衆之に從う。樊遲が言の如くにして、乃ち溝を踰ゆ。
師入齊軍。冉求之師。
【読み】
師齊の軍に入る。冉求の師。
右師奔。齊人從之、逐右師。
【読み】
右師奔る。齊人之を從[お]い、右師を逐う。
陳瓘・陳莊涉泗。二陳、齊大夫。○瓘、古喚反。
【読み】
陳瓘・陳莊泗を涉る。二陳は、齊の大夫。○瓘は、古喚反。
孟之側後入以爲殿。之側、孟氏族也。字、反。
【読み】
孟之側後に入りて以て殿と爲る。之側は、孟氏の族なり。字は、反。
抽矢策其馬曰、馬不進也。不欲伐善。
【読み】
矢を抽きて其の馬を策[むちう]ちて曰く、馬の進まざればなり、と。善に伐[ほこ]ることを欲せず。
林不狃之伍曰、走乎。不狃、魯士。五人爲伍。敗而欲走。
【読み】
林不狃の伍曰く、走らんか、と。不狃は、魯の士。五人を伍と爲す。敗れて走らんと欲す。
不狃曰、誰不如。我不如誰而欲走。
【読み】
不狃曰く、誰に如かざらん、と。我れ誰に如かずして走らんと欲するや。
曰、然則止乎。不狃曰、惡賢。言止戰、惡足爲賢。皆無戰志。○惡、音烏。
【読み】
曰く、然らば則ち止まらんか、と。不狃曰く、惡ぞ賢とせん、と。言うこころは、止まり戰うも、惡ぞ賢とするに足らん。皆戰志無し。○惡は、音烏。
徐步而死。徐行而死。言魯非無壯士、但季孫不能使。
【読み】
徐步して死す。徐行して死す。言うこころは、魯壯士無きに非ず、但季孫使うこと能わず。
師獲甲首八十。冉求所得。
【読み】
師甲首八十を獲。冉求の得る所。
齊人不能師。不能整其師。
【読み】
齊人師すること能わず。其の師を整うること能わず。
宵諜曰、齊人遁。諜、閒也。
【読み】
宵諜曰く、齊人遁る、と。諜は、閒なり。
冉有請從之。三。季孫弗許。
【読み】
冉有之を從わんと請う。三たびす。季孫許さず。
孟孺子語人曰、我不如顏羽、而賢於邴洩。二子與孟孺子同車。○語、魚據反。
【読み】
孟孺子人に語りて曰く、我れ顏羽に如かずして、邴洩より賢れり。二子孟孺子と同車す。○語は、魚據反。
子羽銳敏。子羽、顏羽。銳、精也。敏、疾也。言欲戰。
【読み】
子羽は銳敏なり。子羽は、顏羽。銳は、精なり。敏は、疾きなり。言うこころは、戰わんと欲せり。
我不欲戰而能默。心雖不欲、口不言奔。
【読み】
我は戰を欲せずして能く默せり。心には欲せずと雖も、口に奔らんと言わず。
洩曰驅之。言驅馬欲奔。
【読み】
洩は之を驅せよと曰えり。言うこころは、馬を驅して奔らんと欲す。
公爲與其嬖僮汪錡乘、皆死。皆殯。皆、倶也。○僮、音童。錡、魚綺反。乘、繩證反。
【読み】
公爲其の嬖僮汪錡と乘じ、皆[とも]に死す。皆に殯す。皆は、倶になり。○僮は、音童。錡は、魚綺反。乘は、繩證反。
孔子曰、能執干戈以衛社稷。可無殤也。時人疑童子當殤。
【読み】
孔子曰く、能く干戈を執りて以て社稷を衛れり。殤[しょう]とすること無かる可きなり、と。時人童子は當に殤とすべしと疑う。
冉有用矛於齊師。故能入其軍。孔子曰、義也。言能以義勇。不書戰、不皆陳也。不書敗、勝負不殊。
【読み】
冉有矛を齊の師に用ゆ。故に能く其の軍に入れり。孔子曰く、義なり、と。言うこころは、能く義を以て勇むなり。戰を書さざるは、皆陳せざればなり。敗を書さざるは、勝負殊ならざればなり。
夏、陳轅頗出奔鄭。
【読み】
夏、陳の轅頗出でて鄭に奔る。
初、轅頗爲司徒、賦封田、以嫁公女。封内之田、悉賦稅之。
【読み】
初め、轅頗司徒と爲り、封田に賦して、以て公の女を嫁がしむ。封内の田、悉く之を賦稅す。
有餘、以爲己大器。大器、鐘鼎之屬。
【読み】
餘有り、以て己が大器を爲す。大器は、鐘鼎の屬。
國人逐之。故出。道渴。其族轅咺進稻醴・粱糗・腶脯焉。糗、乾飯也。○糗、起九反。一昌紹反。腶、丁亂反。
【読み】
國人之を逐う。故に出づ。道にして渴[かわ]く。其の族轅咺[えんけん]稻醴・粱糗[りょうきゅう]・腶脯[たんほ]を進む。糗は、乾飯なり。○糗は、起九反。一に昌紹反。腶は、丁亂反。
喜曰、何其給也。對曰、器成而具。具此醴糗。
【読み】
喜びて曰く、何ぞ其れ給せる、と。對えて曰く、器成りて具えり、と。此の醴糗を具う。
曰、何不吾諫。對曰、懼先行。恐言不從、先見逐。
【読み】
曰く、何ぞ吾を諫めざりし、と。對えて曰く、先ず行らんことを懼れてなり、と。言從われずして、先ず逐われんことを恐る。
爲郊戰故、公會吳子伐齊。欲以報也。○爲、去聲。
【読み】
郊の戰の爲の故に、公吳子に會して齊を伐つ。以て報ぜんと欲するなり。○爲は、去聲。
五月、克博、壬申、至于嬴。博・嬴、齊邑也。二縣、皆屬泰山。
【読み】
五月、博に克ち、壬申[みずのえ・さる]、嬴[えい]に至る。博・嬴は、齊の邑なり。二縣は、皆泰山に屬す。
中軍從王。吳中軍。
【読み】
中軍王に從う。吳の中軍。
胥門巢將上軍。王子姑曹將下軍。展如將右軍。三將、吳大夫。
【読み】
胥門巢上軍に將たり。王子姑曹下軍に將たり。展如右軍に將たり。三將は、吳の大夫。
齊國書將中軍。高無丕將上軍。宗樓將下軍。陳僖子謂其弟書、爾死、我必得志。書、子占也。欲獲死事之功。
【読み】
齊の國書中軍に將たり。高無丕上軍に將たり。宗樓下軍に將たり。陳僖子其の弟書に謂えらく、爾死なば、我れ必ず志を得ん、と。書は、子占なり。事に死するの功を獲んと欲す。
宗子陽與閭丘明相厲也。相勸厲致死。子陽、宗樓也。
【読み】
宗子陽閭丘明と相厲む。相勸厲して死を致す。子陽は、宗樓なり。
桑掩胥御國子。國子、國書。
【読み】
桑掩胥國子に御たり。國子は、國書。
公孫夏曰、二子必死。亦勸勉之。
【読み】
公孫夏曰く、二子必ず死ね、と。亦之を勸勉す。
將戰。公孫夏命其徒歌虞殯。虞殯、送葬歌曲。示必死。
【読み】
將に戰わんとす。公孫夏は其の徒に命じて虞殯を歌わしむ。虞殯は、葬を送る歌曲なり。必死を示す。
陳子行命其徒具含玉。子行、陳逆也。具含玉、亦示必死。○行、如字。又戶郎反。
【読み】
陳子行は其の徒に命じて含玉を具えしむ。子行は、陳逆なり。含玉を具うるは、亦必死を示す。○行は、字の如し。又戶郎反。
公孫揮命其徒曰、人尋約。吳髮短。約、繩也。八尺爲尋。吳髮短。欲以繩貫其首。
【読み】
公孫揮は其の徒に命じて曰く、人ごとに尋して約せよ。吳の髮は短し、と。約は、繩なり。八尺を尋と爲す。吳の髮は短し。繩を以て其の首を貫かんと欲す。
東郭書曰、三戰必死。於此三矣。三戰、夷儀・五氏與今。
【読み】
東郭書曰く、三戰すれば必ず死す、と。此に於て三たびなり。三戰は、夷儀と五氏と今となり。
使問弦多以琴。弦多、齊人也。六年奔魯。問、遺也。
【読み】
弦多に問[おく]るに琴を以てせしむ。弦多は、齊人なり。六年魯に奔る。問は、遺るなり。
曰、吾不復見子矣。言將死戰。
【読み】
曰く、吾れ復子を見じ、と。言うこころは、將に死戰せんとす。
陳書曰、此行也、吾聞鼓而已。不聞金矣。鼓以進軍、金以退軍。不聞金、言將死也。傳言吳師彊、齊人自知將敗。
【読み】
陳書曰く、此の行や、吾れ鼓を聞かんのみ。金を聞かじ、と。鼓以て軍を進め、金以て軍を退く。金を聞かずとは、言うこころは、將に死なんとするなり。傳吳の師彊くして、齊人自ら將に敗れんとするを知るを言う。
甲戌、戰于艾陵。展如敗高子。齊上軍敗。
【読み】
甲戌、艾陵に戰う。展如高子を敗る。齊の上軍敗れぬ。
國子敗胥門巢。吳上軍亦敗。
【読み】
國子胥門巢を敗る。吳の上軍も亦敗れぬ。
王卒助之、大敗齊師、獲國書・公孫夏・閭丘明・陳書・東郭書・革車八百乘・甲首三千、以獻于公。公以兵從。故以勞公。○從、才用反。又如字。勞、力報反。
【読み】
王の卒之を助け、大いに齊の師を敗り、國書・公孫夏・閭丘明・陳書・東郭書・革車八百乘・甲首三千を獲て、以て公に獻ず。公兵を以て從う。故に以て公を勞う。○從は、才用反。又字の如し。勞は、力報反。
將戰。吳子呼叔孫、叔孫、武叔州仇。
【読み】
將に戰わんとす。吳子叔孫を呼びて、叔孫は、武叔州仇。
曰、而事何也。問何職。
【読み】
曰く、而[なんじ]の事は何ぞ、と。何の職ぞと問う。
對曰、從司馬。從吳司馬所命。
【読み】
對えて曰く、從司馬なり、と。吳の司馬の命ずる所に從う。
王賜之甲・劒・鈹曰、奉爾君事、敬無廢命。叔孫未能對。衛賜進、賜、子貢。孔子弟子也。○鈹、普悲反。
【読み】
王之に甲・劒・鈹を賜いて曰く、爾の君事を奉じて、敬みて命を廢つること無かれ、と。叔孫未だ對うること能わず。衛の賜進みて、賜は、子貢。孔子の弟子なり。○鈹は、普悲反。
曰、州仇奉甲從君、而拜。拜受之。
【読み】
曰く、州仇甲を奉じて君に從わんといいて、拜す。拜して之を受く。
公使大史固歸國子之元、歸於齊也。元、首也。吳以獻魯。
【読み】
公大史固をして國子の元[こうべ]を歸[おく]らしめ、齊に歸るなり。元は、首なり。吳以て魯に獻ぜるなり。
寘之新篋、褽之以玄纁、褽、薦也。○褽、音尉。
【読み】
之を新篋に寘き、之に褽[し]くに玄纁[げんくん]を以てし、褽[い]は、薦[し]くなり。○褽は、音尉。
加組帶焉、寘書于其上曰、天若不識不衷、何以使下國。言天識不善。故殺國子。
【読み】
組帶を加え、書を其の上に寘きて曰く、天若し不衷を識らずんば、何を以て下國をせしめん、と。言うこころは、天不善を識れり。故に國子を殺す。
吳將伐齊。越子率其衆以朝焉。王及列士、皆有饋賂。吳人皆喜。唯子胥懼曰、是豢吳也夫。豢、養也。若人養犧牲。非愛之。將殺之。
【読み】
吳將に齊を伐たんとす。越子其の衆を率いて以て朝す。王より列士に及ぶまで、皆饋賂有り。吳人皆喜ぶ。唯子胥懼れて曰く、是れ吳を豢[やしな]うなるか、と。豢[かん]は、養うなり。人の犧牲を養うが若し。之を愛するに非ず。將に之を殺さんとす。
諫曰、越在我、心腹之疾也。壤地同、而有欲於我。欲得吳。
【読み】
諫めて曰く、越の我に在るは、心腹の疾なり。壤地同じくして、我に欲すること有り。吳を得んことを欲す。
夫其柔服、求濟其欲也。不如早從事焉。從事、擊之。
【読み】
夫れ其の柔服するは、其の欲を濟さんことを求めんとなり。早く事に從うに如かず。事に從うとは、之を擊つなり。
得志於齊、猶獲石田也。無所用之。石田、不可耕。
【読み】
志を齊に得るも、猶石田を獲るがごとし。之を用ゆる所無し。石田は、耕す可からず。
越不爲沼、吳其泯矣。使醫除疾、而曰必遺類焉者、未之有也。
【読み】
越沼と爲らずんば、吳其れ泯[ほろ]びん。醫をして疾を除かしめて、必ず類を遺せと曰わん者は、未だ之れ有らざるなり。
盤庚之誥曰、其有顚越不共、則劓殄無遺育、無俾易種于玆邑。盤庚、商書也。顚越不共、從橫不承命者也。劓、割也。殄、絕也。育、長也。俾、使也。易種、轉生種類。○劓、音藝。種、章勇反。從、子容反。
【読み】
盤庚の誥に曰く、其の顚越に不共なる有らば、則ち劓殄[ぎてん]して遺育すること無く、種を玆の邑に易えしむること無けん、と。盤庚は、商書なり。顚越に不共とは、從橫にして命を承けざる者なり。劓は、割くなり。殄は、絕つなり。育は、長ずるなり。俾は、使なり。種を易うるとは、種類を轉生するなり。○劓は、音藝。種は、章勇反。從は、子容反。
是商所以興也。今君易之、將以求大。不亦難乎。弗聽。
【読み】
是れ商の興れる所以なり。今君之を易えて、將に以て大を求めんとす。亦難からずや、と。聽かず。
使於齊、屬其子於鮑氏、爲王孫氏。私使人至齊、屬以其子、改姓爲王孫。欲辟吳禍。
【読み】
齊に使いをして、其の子を鮑氏に屬して、王孫氏と爲す。私に人をして齊に至りて、屬するに其の子を以てせしめ、姓を改めて王孫と爲す。吳の禍を辟けんと欲す。
反役、王聞之、使賜之屬鏤以死。艾陵役也。屬鏤、劒名。○鏤、音閭。又音婁。
【読み】
役より反り、王之を聞きて、之に屬鏤を賜いて以て死なしむ。艾陵の役なり。屬鏤は、劒の名。○鏤は、音閭。又音婁。
將死。曰、樹吾墓檟。檟可材也、吳其亡乎。三年、其始弱矣。盈必毀、天之道也。越人朝之、伐齊勝之。盈之極也。爲十三年、越伐吳起。
【読み】
將に死なんとす。曰く、吾が墓に檟[か]を樹えよ。檟材とす可きときは、吳其れ亡びんか。三年に、其れ始めて弱からん。盈つれば必ず毀[やぶ]るは、天の道なり、と。越人之に朝し、齊を伐ちて之に勝つ。盈つるの極まれるなり。十三年、越吳を伐つ爲の起なり。
秋、季孫命脩守備。曰、小勝大、禍也。齊至無日矣。善有備。○守、手又反。
【読み】
秋、季孫命じて守備を脩む。曰く、小の大に勝つは、禍なり。齊の至らんこと日無けん、と。備え有るを善す。○守は、手又反。
冬、衛大叔疾出奔宋。疾、卽齊也。
【読み】
冬、衛の大叔疾出でて宋に奔る。疾は、卽ち齊なり。
初、疾娶于宋子朝。子朝、宋人。仕衛爲大夫。
【読み】
初め、疾宋の子朝に娶る。子朝は、宋人。衛に仕えて大夫と爲る。
其娣嬖。娣、所娶女之娣。
【読み】
其の娣嬖せらる。娣は、娶る所の女の娣。
子朝出。出奔。
【読み】
子朝出づ。出奔す。
孔文子使疾出其妻而妻之。疾使侍人誘其初妻之娣、寘於犂、犂、衛邑。○妻之、去聲。
【読み】
孔文子疾をして其の妻を出ださしめて之に妻す。疾侍人をして其の初めの妻の娣を誘かしめて、犂に寘きて、犂は、衛の邑。○妻之は、去聲。
而爲之一宮、如二妻。文子怒、欲攻之。仲尼止之。遂奪其妻。或淫于外州。外州人奪之軒以獻。外州、衛邑。軒、車也。以獻於君。
【読み】
之が一宮を爲して、二妻の如し。文子怒り、之を攻めんと欲す。仲尼之を止む。遂に其の妻を奪う。外州に淫すること或り。外州の人之が軒を奪いて以て獻ず。外州は、衛の邑。軒は、車なり。以て君に獻ず。
恥是二者。故出。衛人立遺、使室孔姞。遺、疾之弟。孔姞、孔文子之女、疾之妻。○姞、其乙反。
【読み】
是の二つの者を恥ず。故に出づ。衛人遺を立てて、孔姞[こうきつ]を室とせしむ。遺は、疾の弟。孔姞は、孔文子の女、疾の妻。○姞は、其乙反。
疾臣向魋、爲宋向魋臣。○魋、徒回反。
【読み】
疾向魋[しょうたい]に臣となり、宋の向魋の臣と爲る。○魋は、徒回反。
納美珠焉。與之城鉏。城鉏、宋邑。
【読み】
美珠を納る。之に城鉏を與う。城鉏は、宋の邑。
宋公求珠。魋不與。由是得罪。及桓氏出、出、在十四年。
【読み】
宋公珠を求む。魋與えず。是に由りて罪を得たり。桓氏の出づるに及びて、出づるは、十四年に在り。
城鉏人攻大叔疾。衛莊公復之、聽使還。
【読み】
城鉏の人大叔疾を攻む。衛の莊公之を復し、聽[ゆる]して還らしむ。
使處巢。死焉。殯於鄖、葬於少禘。終言疾之失所也。巢・鄖・少禘、皆衛地。○鄖、音云。
【読み】
巢に處らしむ。死す。鄖[うん]に殯し、少禘に葬れり。疾の所を失うを終え言うなり。巢・鄖・少禘は、皆衛の地。○鄖は、音云。
初、晉悼公子憖亡在衛、使其女僕而田。僕、御。田、獵。○憖、魚覲反。一征領反。
【読み】
初め、晉の悼公の子憖[ぎん]亡げて衛に在り、其の女をして僕たらしめて田[かり]す。僕は、御。田は、獵。○憖は、魚覲反。一に征領反。
大叔懿子止而飮之酒、懿子、大叔儀之孫。○飮、於鴆反。
【読み】
大叔懿子止めて之に酒を飮ましめ、懿子は、大叔儀の孫。○飮は、於鴆反。
遂聘之。生悼子。悼子、大叔疾。
【読み】
遂に之を聘す。悼子を生む。悼子は、大叔疾。
悼子卽位。故夏戊爲大夫。夏戊、悼子之甥。
【読み】
悼子位に卽く。故に夏戊[かぼう]を大夫と爲す。夏戊は、悼子の甥。
悼子亡、衛人翦夏戊。翦削其爵邑。
【読み】
悼子亡げしとき、衛人夏戊を翦りぬ。其の爵邑を翦削す。
孔文子之將攻大叔也、訪於仲尼。仲尼曰、胡簋之事、則嘗學之矣。胡簋、禮器名。夏曰胡、周曰簋。
【読み】
孔文子の將に大叔を攻めんとするや、仲尼に訪う。仲尼曰く、胡簋[こき]の事は、則ち嘗て之を學べり。胡簋は、禮器の名。夏に胡と曰い、周に簋と曰う。
甲兵之事、未之聞也。退、命駕而行、曰、鳥則擇木。木豈能擇鳥。以鳥自喩。
【読み】
甲兵の事は、未だ之を聞かざるなり、と。退きて、駕を命じて行らんとして、曰く、鳥は則ち木を擇ぶ。木豈能く鳥を擇ばんや、と。鳥を以て自ら喩う。
文子遽止之曰、圉豈敢度其私。訪衛國之難也。圉、文子名。度、謀也。○度、入聲。下同。難、去聲。
【読み】
文子遽[あわ]てて之を止めて曰く、圉豈敢えて其の私を度らんや。衛國の難を訪えるなり、と。圉は、文子の名。度は、謀るなり。○度は、入聲。下も同じ。難は、去聲。
將止。仲尼止。
【読み】
將に止まらんとす。仲尼止まる。
魯人以幣召之。乃歸。於是自衛反魯、樂正、雅頌各得其所。
【読み】
魯人幣を以て之を召す。乃ち歸る。是に於て衛より魯に反り、樂正しく、雅頌各々其の所を得たり。
季孫欲以田賦。兵賦之法、因其田財、通出馬一疋・牛三頭。今欲別其田及家財、各爲一賦。故言田賦。○別、如字。又彼列反。
【読み】
季孫田を以て賦せんと欲す。兵賦の法、其の田財に因りて、通じて馬一疋・牛三頭を出だす。今其の田と家財とを別けて、各々一賦と爲さんと欲す。故に田賦と言う。○別は、字の如し。又彼列反。
使冉有訪於仲尼。仲尼曰、丘、不識也。三發。三發問。
【読み】
冉有をして仲尼に訪わしむ。仲尼曰く、丘、識らず、と。三たび發す。三たび問いを發す。
卒曰、卒、終也。
【読み】
卒わりに曰く、卒は、終わりなり。
子爲國老。待子而行。若之何子之不言也。仲尼不對、不公答。
【読み】
子國老爲り。子を待ちて行わんとす。之を若何ぞ子の言わざる、と。仲尼對えずして、公答せず。
而私於冉有曰、君子之行也、行政事。
【読み】
冉有に私して曰く、君子の行うや、政事を行う。
度於禮。施取其厚、事舉其中、斂從其薄。如是、則以丘亦足矣。丘、十六井、出戎馬一疋・牛三頭。是賦之常法。○施、尸豉反。
【読み】
禮に度る。施しは其の厚きを取り、事は其の中を舉げ、斂は其の薄きに從う。是の如くなれば、則ち丘を以てするも亦足れり。丘は、十六井、戎馬一疋・牛三頭を出だす。是れ賦の常法なり。○施は、尸豉反。
若不度於禮、而貪冒無厭、則雖以田賦、將又不足。且子季孫若欲行而法、則周公之典在。若欲苟而行、又何訪焉。弗聽。爲明年、用田賦傳。○冒、密北反。又如字。厭、平聲。
【読み】
若し禮に度らずして、貪冒して厭くこと無くば、則ち田を以て賦すと雖も、將に又足らざらんとす。且つ子季孫若し行いて法あらんことを欲せば、則ち周公の典在り。若し苟もして行わんと欲せば、又何ぞ訪わん、と。聽かず。明年、田賦を用ゆる爲の傳なり。○冒は、密北反。又字の如し。厭は、平聲。
〔經〕十有二年、春、用田賦。直書之者、以示改法重賦。
【読み】
〔經〕十有二年、春、田賦を用ゆ。直に之を書すは、以て法を改めて賦を重くするを示すなり。
夏、五月、甲辰、孟子卒。魯人諱娶同姓、謂之孟子。春秋不改、所以順時。
【読み】
夏、五月、甲辰[きのえ・たつ]、孟子卒す。魯人同姓を娶るを諱みて、之を孟子と謂う。春秋に改めざるは、時に順う所以なり。
公會吳于橐皐。橐皐、在淮南逡遒縣東南。○橐、章夜反。一音託。逡、音峻。遒、音囚。
【読み】
公吳に橐皐[たくこう]に會す。橐皐は、淮南逡遒[しゅんしゅう]縣の東南に在り。○橐は、章夜反。一に音託。逡は、音峻。遒は、音囚。
秋、公會衛侯・宋皇瑗于鄖。鄖、發陽也。廣陵海陵縣東南有發繇口。
【読み】
秋、公衛侯・宋の皇瑗に鄖[うん]に會す。鄖は、發陽なり。廣陵海陵縣の東南に發繇口有り。
宋向巢帥師伐鄭。冬、十有二月、螽。周十二月、今十月。是歲應置閏、而失不置。雖書十二月、實今之九月。司歷誤一月。九月之初、尙溫。故得有螽。
【読み】
宋の向巢[しょうそう]師を帥いて鄭を伐つ。冬、十有二月、螽[しゅう]あり。周の十二月は、今の十月なり。是の歲應に閏を置くべくして、失して置かず。十二月と書すと雖も、實は今の九月なり。司歷一月を誤れり。九月の初め、尙溫かし。故に螽有ることを得たり。
〔傳〕十二年、春、王正月、用田賦。終前年事。
【読み】
〔傳〕十二年、春、王の正月、田賦を用ゆ。前年の事を終わる。
夏、五月、昭夫人孟子卒。
【読み】
夏、五月、昭夫人孟子卒す。
昭公娶于吳。故不書姓。諱娶同姓。故謂之孟子、若宋女。
【読み】
昭公吳に娶る。故に姓を書さず。同姓を娶るを諱む。故に之を孟子と謂いて、宋の女の若くす。
死不赴。故不稱夫人。不稱夫人。故不言薨。
【読み】
死して赴[つ]げず。故に夫人と稱せず。夫人と稱せず。故に薨ずと言わず。
不反哭。故言不葬小君。反哭者、夫人禮也。以同姓故、不成其夫人喪。
【読み】
反哭せず。故に小君を葬ると言わず。反哭とは、夫人の禮なり。同姓を以ての故に、其の夫人の喪を成さず。
孔子與弔。適季氏。季氏不絻。放絰而拜。孔子始老。故與弔也。絻、喪冠也。孔子以小君禮往弔。季孫不服喪。故去絰。從主節制。○與、音預。絻、音問。
【読み】
孔子弔に與る。季氏に適く。季氏絻[ぶん]せず。絰を放ちて拜す。孔子始めて老す。故に弔に與るなり。絻は、喪冠なり。孔子小君の禮を以て往きて弔す。季孫喪を服せず。故に絰を去る。主に從いて制を節するなり。○與は、音預。絻は、音問。
公會吳于橐皐。吳子使大宰嚭請尋盟。尋鄫盟。
【読み】
公吳に橐皐に會す。吳子大宰嚭[ひ]をして盟を尋[かさ]ねんことを請わしむ。鄫[しょう]の盟を尋ぬ。
公不欲。使子貢對曰、盟所以周信也。周、固。
【読み】
公欲せず。子貢をして對えしめて曰く、盟は信を周[かた]くする所以なり。周は、固きなり。
故心以制之、制其義。
【読み】
故に心以て之を制し、其の義を制す。
玉帛以奉之、奉贄明神。
【読み】
玉帛以て之を奉げ、明神に奉贄す。
言以結之、結其信。
【読み】
言以て之を結び、其の信を結ぶ。
明神以要之。要以禍福。
【読み】
明神以て之を要す。要するに禍福を以てす。
寡君以爲苟有盟焉、弗可改也巳。若猶可改、日盟何益。今吾子曰、必尋盟。若可尋也、亦可寒也。尋、重也。寒、歇也。
【読み】
寡君以爲えらく、苟も盟有れば、改む可からざるのみ、と。若し猶改む可くんば、日々に盟うとも何の益あらん。今吾子曰く、必ず盟を尋ねん、と。若し尋ぬ可くんば、亦寒[や]む可し。尋は、重ぬるなり。寒は、歇[や]むなり。
乃不尋盟。
【読み】
乃ち盟を尋ねず。
吳徵會于衛。初、衛人殺吳行人且姚、而懼、謀於行人子羽。子羽、衛大夫也。○且、子餘反。
【読み】
吳會を衛に徵す。初め、衛人吳の行人且姚[しょよう]を殺して、懼れ、行人子羽に謀る。子羽は、衛の大夫なり。○且は、子餘反。
子羽曰、吳方無道。無乃辱吾君。不如止也。子木曰、吳方無道。子木、衛大夫。
【読み】
子羽曰く、吳方に無道なり。乃ち吾が君を辱むること無からんや。止むに如かざるなり、と。子木曰く、吳方に無道なり。子木は、衛の大夫。
國無道、必棄疾於人。吳雖無道、猶足以患衛。爲衛患也。
【読み】
國道無ければ、必ず疾を人に棄つ。吳無道なりと雖も、猶以て衛を患えしむるに足れり。衛の患えと爲るなり。
往也。長木之斃、無不摽也、摽、擊。○摽、敷蕭反。又普交反。
【読み】
往け。長木の斃るるは、摽[う]たざること無く、摽[ひょう]は、擊つなり。○摽は、敷蕭反。又普交反。
國狗之瘈、無不噬也。瘈、狂也。噬、齧也。○瘈、吉世反。
【読み】
國狗の瘈[くる]うは、噬[か]まざること無し。瘈[けい]は、狂うなり。噬は、齧[か]むなり。○瘈、吉世反。
而況大國乎。秋、衛侯會吳于鄖。公及衛侯・宋皇瑗盟、盟不書、畏吳竊盟。
【読み】
而るを況んや大國をや、と。秋、衛侯吳に鄖に會す。公衛侯・宋の皇瑗と盟いて、盟書さざるは、吳を畏れて竊かに盟えばなり。
而卒辭吳盟。
【読み】
卒に吳の盟を辭す。
吳人藩衛侯之舍。藩、籬。
【読み】
吳人衛侯の舍を藩す。藩は、籬。
子服景伯謂子貢曰、夫諸侯之會、事旣畢矣。侯伯致禮、地主歸餼、侯伯致禮、以禮賓也。地主、所會主人也。餼、生物。
【読み】
子服景伯子貢に謂いて曰く、夫れ諸侯の會、事旣に畢わる。侯伯禮を致し、地主餼を歸[おく]り、侯伯禮を致すは、以て賓を禮するなり。地主は、會する所の主人なり。餼は、生物。
以相辭也。各以禮相辭讓。
【読み】
以て相辭するのみ。各々禮を以て相辭讓す。
今吳不行禮於衛、而藩其君舍以難之。難、苦困也。
【読み】
今吳禮を衛に行わずして、其の君の舍に藩して以て之を難[なや]ます。難は、苦困なり。
子盍見大宰。
【読み】
子盍ぞ大宰を見ざる、と。
乃請束錦以行。以賂吳。
【読み】
乃ち束錦を請いて以て行く。以て吳に賂う。
語及衛故。若本不爲衛請者。
【読み】
語衛の故に及ぶ。本衛の爲に請わざる者の若くす。
大宰嚭曰、寡君願事衛君、衛君之來也緩。寡君懼。故將止之。止、執。
【読み】
大宰嚭曰く、寡君衛君に事えんことを願えども、衛君の來るや緩し。寡君懼る。故に將に之を止[とら]えんとす、と。止は、執うるなり。
子貢曰、衛君之來、必謀於其衆。其衆或欲或否。是以緩來。其欲來者、子之黨也。其不欲來者、子之讎也。若執衛君、是墮黨而崇讎也。墮、毀也。○墮、許規反。
【読み】
子貢曰く、衛君の來れる、必ず其の衆に謀るならん。其の衆或は欲し或は否らず。是を以て緩く來れるなり。其の來らんことを欲する者は、子の黨なり。其の來らんことを欲せざる者は、子の讎なり。若し衛君を執えば、是れ黨を墮[やぶ]りて讎を崇むるなり。墮は、毀るなり。○墮は、許規反。
夫墮子者、得其志矣。且合諸侯而執衛君、誰敢不懼。墮黨崇讎、而懼諸侯、或者難以霸乎。大宰嚭說。乃舍衛侯。
【読み】
夫の子を墮る者、其の志を得ん。且つ諸侯を合わせて衛君を執えば、誰か敢えて懼れざらん。黨を墮り讎を崇めて、諸侯を懼[おど]さば、或は以て霸たり難からんか、と。大宰嚭說ぶ。乃ち衛侯を舍[ゆる]す。
衛侯歸、效夷言。子之尙幼。子之、公孫彌牟。○說、音悅。舍、音捨。又音赦。
【読み】
衛侯歸り、夷言を效う。子之は尙幼し。子之は、公孫彌牟。○說は、音悅。舍は、音捨。又音赦。
曰、君必不免。其死於夷乎。執焉而又說其言、從之固矣。出公輒後卒死於越。
【読み】
曰く、君必ず免れじ。其れ夷に死なんか。執われて又其の言を說ぶは、之に從うこと固し、と。出公輒後に卒に越に死す。
冬、十二月、螽。季孫問諸仲尼。仲尼曰、丘聞之、火伏而後蟄者畢。火、心星也。火伏、在今十月。
【読み】
冬、十二月、螽あり。季孫諸を仲尼に問う。仲尼曰く、丘之を聞く、火伏して後に蟄する者畢わる、と。火は、心星なり。火伏するは、今の十月に在り。
今火猶西流。司歷過也。猶西流、言未盡沒。知是九月。歷官失一閏。釋例論之備。
【読み】
今火猶西に流る。司歷の過ちなり、と。猶西に流るとは、言うこころは、未だ盡く沒せざるなり。知んぬ、是れ九月なることを。歷官一閏を失うなり。釋例之を論ずること備なり。
宋・鄭之閒、有隙地焉。隙地、閒田。
【読み】
宋・鄭の閒に、隙地有り。隙地は、閒田。
曰彌作・頃丘・玉暢・喦・戈・鍚。凡六邑。○彌、亡支反。又亡爾反。頃、苦穎反。又音傾。喦、五咸反。鍚、音羊。一星歷反。
【読み】
彌作・頃丘・玉暢[ぎょくちょう]・喦[がん]・戈[か]・鍚[よう]と曰う。凡そ六邑。○彌は、亡支反。又亡爾反。頃は、苦穎反。又音傾。喦は、五咸反。鍚は、音羊。一に星歷反。
子產與宋人爲成、曰、勿有是。倶棄之。
【読み】
子產宋人と成[たい]らぎを爲して、曰く、是を有つこと勿かれ、と。倶に之を棄つ。
及宋平・元之族自蕭奔鄭、在定十五年。
【読み】
宋の平・元の族の蕭[しょう]より鄭に奔るに及びて、定十五年に在り。
鄭人爲之城喦・戈・鍚。城以處平・元之族。
【読み】
鄭人之が爲に喦・戈・鍚に城く。城きて以て平・元の族を處く。
九月、宋向巢伐鄭、取鍚、殺元公之孫、遂圍喦。十二月、鄭罕達救喦、丙申、圍宋師。此事經在十二月螽上。今倒在下、更具列其月、以爲別者、丘明本不以爲義例。故不皆齊同。
【読み】
九月、宋の向巢鄭を伐ちて、鍚を取り、元公の孫を殺して、遂に喦を圍む。十二月、鄭の罕達喦を救い、丙申[ひのえ・さる]、宋の師を圍む。此の事經は十二月螽の上に在り。今下に倒在して、更に其の月を具列して、以て別を爲すは、丘明本以て義例と爲さず。故に皆齊同ならず。
〔經〕十有三年、春、鄭罕達帥師取宋師于喦。書取、覆而敗之。
【読み】
〔經〕十有三年、春、鄭の罕達師を帥いて宋の師を喦[がん]に取る。取ると書すは、覆して之を敗ればなり。
夏、許男成卒。無傳。
【読み】
夏、許男成卒す。傳無し。
公會晉侯及吳子于黃池。陳留封丘縣南有黃亭。近濟水。夫差欲霸中國尊天子、自去其僭號而稱子、以告令諸侯。故史承而書之。○去、起呂反。
【読み】
公晉侯と吳子とに黃池に會す。陳留封丘縣の南に黃亭有り。濟水に近し。夫差中國に霸として天子を尊ばんと欲し、自ら其の僭號を去てて子と稱して、以て諸侯に告令す。故に史承けて之を書す。○去は、起呂反。
楚公子申帥師伐陳。無傳。
【読み】
楚の公子申師を帥いて陳を伐つ。傳無し。
於越入吳。秋、公至自會。無傳。
【読み】
於越吳に入る。秋、公會より至る。傳無し。
晉魏曼多帥師侵衛。無傳。
【読み】
晉の魏曼多師を帥いて衛を侵す。傳無し。
葬許元公。無傳。
【読み】
許の元公を葬る。傳無し。
九月、螽。無傳。書災。
【読み】
九月、螽[しゅう]あり。傳無し。災を書す。
冬、十有一月、有星孛于東方。無傳。平旦衆星皆沒、而孛乃見。故不言所在之次。○孛、步内反。見、賢遍反。
【読み】
冬、十有一月、星の東方に孛[はい]する有り。傳無し。平旦に衆星皆沒して、孛乃ち見る。故に在る所の次を言わず。○孛は、步内反。見は、賢遍反。
盜殺陳夏區夫。無傳。稱盜、非大夫。○區、烏侯反。
【読み】
盜陳の夏區夫[かおうふ]を殺す。傳無し。盜と稱するは、大夫に非ざればなり。○區は、烏侯反。
十有二月、螽。無傳。前年、季孫雖聞仲尼之言、而不正歷、失閏至此年。故復十二月螽。實十一月。○復、扶又反。
【読み】
十有二月、螽あり。傳無し。前年、季孫仲尼の言を聞くと雖も、而れども歷を正さず、閏を失いて此の年に至る。故に復十二月に螽あり。實は十一月なり。○復は、扶又反。
〔傳〕十三年、春、宋向魋救其師。救前年、圍喦師。
【読み】
〔傳〕十三年、春、宋の向魋[しょうたい]其の師を救う。前年、喦を圍むの師を救う。
鄭子賸使徇曰、得桓魋者有賞。魋也逃歸。遂取宋師于喦、獲成讙・郜延。二子、宋大夫。○讙、火官反。郜、古報反。又古毒反。
【読み】
鄭の子賸[しよう]徇[とな]えしめて曰く、桓魋を得ん者は賞有らん、と。魋や逃げ歸る。遂に宋の師を喦に取り、成讙・郜延を獲たり。二子は、宋の大夫。○讙は、火官反。郜は、古報反。又古毒反。
以六邑爲虛。空虛之、各不有。
【読み】
六邑を以て虛と爲す。之を空虛にして、各々有たず。
夏、公會單平公・晉定公・吳夫差于黃池。平公、周卿士也。不書、尊之、不與會。
【読み】
夏、公單平公・晉の定公・吳の夫差に黃池に會す。平公は、周の卿士なり。書さざるは、之を尊びて、會に與らせざるなり。
六月、丙子、越子伐吳。爲二隧、隧、道也。
【読み】
六月、丙子[ひのえ・ね]、越子吳を伐つ。二隧を爲し、隧は、道なり。
疇無餘・謳陽自南方、二子、越大夫。
【読み】
疇無餘・謳陽南方よりし、二子は、越の大夫。
先及郊。吳大子友・王子地・王孫彌庸・壽於姚自泓上觀之。觀越師。泓、水名。○泓、烏宏反。
【読み】
先ず郊に及ぶ。吳の大子友・王子地・王孫彌庸・壽於姚[じゅおよう]泓上[おうじょう]より之を觀る。越の師を觀る。泓は、水の名。○泓は、烏宏反。
彌庸見姑蔑之旗、姑蔑、越地。今東陽大末縣。○大、音泰。又音闥。
【読み】
彌庸姑蔑の旗を見て、姑蔑は、越の地。今の東陽大末縣。○大は、音泰。又音闥。
曰、吾父之旗也。彌庸父爲越所獲。故姑蔑人得其旌旗。
【読み】
曰く、吾が父の旗なり。彌庸が父越の爲に獲らる。故に姑蔑の人其の旌旗を得。
不可以見讎而弗殺也。大子曰、戰而不克、將亡國。請待之。彌庸不可。屬徒五千。屬、會也。○屬、音燭。
【読み】
以て讎を見て殺さずんばある可からざるなり、と。大子曰く、戰いて克たずんば、將に國を亡ぼさんとす。請う、之を待て、と。彌庸可[き]かず。徒五千を屬[あつ]む。屬は、會するなり。○屬は、音燭。
王子地助之。乙酉、戰。彌庸獲疇無餘、地獲謳陽。越子至。王子地守。丙戌、復戰。大敗吳師。獲大子友・王孫彌庸・壽於姚。地守。故不獲。○守、手又反。復、扶又反。
【読み】
王子地之を助く。乙酉[きのと・とり]に、戰う。彌庸疇無餘を獲、地謳陽を獲たり。越子至る。王子地守る。丙戌[ひのえ・いぬ]に、復戰う。大いに吳の師を敗る。大子友・王孫彌庸・壽於姚を獲たり。地守る。故に獲られず。○守は、手又反。復は、扶又反。
丁亥、入吳。
【読み】
丁亥[ひのと・い]、吳に入る。
吳人告敗于王。王惡其聞也、惡諸侯聞之。○惡、烏路反。
【読み】
吳人敗を王に告ぐ。王其の聞かんことを惡み、諸侯の之を聞かんことを惡む。○惡は、烏路反。
自剄七人於幕下。以絕口。○剄、古頂反。
【読み】
自ら七人を幕下に剄[くびは]ぬ。以て口を絕つ。○剄[けい]は、古頂反。
秋、七月、辛丑、盟。吳・晉爭先。爭歃血先後。
【読み】
秋、七月、辛丑[かのと・うし]、盟う。吳・晉先を爭う。血を歃るの先後を爭う。
吳人曰、於周室我爲長。吳爲大伯後。故爲長。○長、上聲。
【読み】
吳人曰く、周室に於て我は長爲り、と。吳は大伯の後爲り。故に長爲り。○長は、上聲。
晉人曰、於姬姓我爲伯。爲侯伯。
【読み】
晉人曰く、姬姓に於て我は伯爲り、と。侯伯爲り。
趙鞅呼司馬寅、寅、晉大夫。
【読み】
趙鞅司馬寅を呼びて、寅は、晉の大夫。
曰、日旰矣。旰、晩也。○旰、古旦反。
【読み】
曰く、日旰[く]れぬ。旰は、晩れるなり。○旰は、古旦反。
大事未成。二臣之罪也。大事、盟也。二臣、鞅與寅。
【読み】
大事未だ成らず。二臣の罪なり。大事とは、盟なり。二臣とは、鞅と寅となり。
建鼓整列、二臣死之、長幼必可知也。對曰、請姑視之。反曰、肉食者無墨、墨、氣色下。
【読み】
鼓を建て列を整え、二臣之に死なば、長幼必ず知る可し、と。對えて曰く、請う、姑く之を視ん、と。反りて曰く、肉食の者には墨無きに、墨は、氣色の下るなり。
今吳王有墨。國勝乎。國爲敵所勝。
【読み】
今吳王に墨有り。國勝たれたるか。國敵の爲に勝たる。
大子死乎。且夷德輕。不忍久。請少待之。少待、無與爭。○輕、遣政反。
【読み】
大子死したるか。且つ夷德は輕し。久しきに忍びず。請う、少[しばら]く之を待て、と。少く待てとは、與に爭うこと無かれとなり。○輕は、遣政反。
乃先晉人。盟不書、諸侯恥之。故不錄。
【読み】
乃ち晉人を先にす。盟書さざるは、諸侯之を恥ず。故に錄せざるなり。
吳人將以公見晉侯。子服景伯對使者曰、王合諸侯、則伯帥侯牧以見於王。伯、王官伯。侯牧、方伯。○見晉、如字。又賢遍反。以見、賢遍反。
【読み】
吳人將に公を以[い]て晉侯を見んとす。子服景伯使者に對えて曰く、王諸侯を合わすときは、則ち伯侯牧を帥いて以て王に見ゆ。伯は、王官の伯。侯牧は、方伯。○見晉は、字の如し。又賢遍反。以見は、賢遍反。
伯合諸侯、則侯帥子男以見於伯。伯、諸侯長。
【読み】
伯諸侯を合わすときは、則ち侯子男を帥いて以て伯に見ゆ。伯は、諸侯の長。
自王以下、朝聘玉帛不同。故敝邑之職貢於吳、有豐於晉、無不及焉、以爲伯也。今諸侯會、而君將以寡君見晉君、則晉成爲伯矣。敝邑將改職貢。魯賦於吳八百乘。若爲子男、則將半邾以屬於吳、半邾、三百乘。
【読み】
王より以下、朝聘に玉帛同じからず。故に敝邑の吳に職貢すること、晉より豐かなること有るも、及ばざること無きは、伯爲るを以てなり。今諸侯會して、君將に寡君を以て晉君に見えんとするは、則ち晉伯爲ることを成すなり。敝邑將に職貢を改めんとす。魯の吳に賦するは八百乘なり。若し子男爲らば、則ち將に邾に半ばにして以て吳に屬し、邾に半ばにすとは、三百乘なり。
而如邾以事晉。如邾、六百乘。
【読み】
而して邾の如くにして以て晉に事えんとす。邾の如くにすとは、六百乘なり。
且執事以伯召諸侯、而以侯終之、何利之有焉。吳人乃止。
【読み】
且つ執事伯を以て諸侯を召して、侯を以て之を終えば、何の利か之れ有らん、と。吳人乃ち止む。
旣而悔之、謂景伯欺之。
【読み】
旣にして之を悔い、景伯の之を欺くと謂えり。
將囚景伯。景伯曰、何也立後於魯矣。何、景伯名。
【読み】
將に景伯を囚えんとす。景伯曰く、何や後を魯に立てたり。何は、景伯の名。
將以二乘與六人從。遲速唯命。遂囚以還。及戶牖。戶牖、陳留外黃縣西北東昏城是。○從、才用反。
【読み】
將に二乘と六人とを以て從わんとす。遲速は唯命のままなり、と。遂に囚えて以て還る。戶牖[こゆう]に及ぶ。戶牖は、陳留外黃縣の西北の東昏城是れなり。○從は、才用反。
謂大宰曰、魯將以十月上辛有事於上帝先王、季辛而畢。何世有職焉。有職於祭事。
【読み】
大宰に謂いて曰く、魯將に十月上辛を以て上帝先王事有りて、季辛にして畢わらんとす。何世々職有り。祭事に職有り。
自襄以來、未之改也。魯襄公。
【読み】
襄より以來、未だ之を改めざるなり。魯の襄公。
若不會、祝宗將曰、吳實然。言魯祝宗將告神云、景伯不會、坐爲吳所囚。吳人信鬼。故以是恐之。
【読み】
若し會せずんば、祝宗將に曰わんとす、吳實に然らしむ、と。言うこころは、魯の祝宗將に神に告げて云わんとす、景伯が會せざるは、吳の爲に囚えらるるに坐[よ]る、と。吳人鬼を信ず。故に是を以て之を恐[おど]す。
且謂魯不共、而執其賤者七人、何損焉。大宰嚭言於王曰、無損於魯、而祇爲名。適爲惡名。
【読み】
且つ魯を不共なりと謂いて、其の賤者七人を執うるとも、何の損あらん、と。大宰嚭王に言いて曰く、魯に損無くして、祇[まさ]に名を爲さん。適に惡名を爲さん。
不如歸之。乃歸景伯。
【読み】
之を歸さんに如かず、と。乃ち景伯を歸す。
吳申叔儀乞糧於公孫有山氏、申叔儀、吳大夫。公孫有山、魯大夫。舊相識。
【読み】
吳の申叔儀糧を公孫有山氏に乞いて、申叔儀は、吳の大夫。公孫有山は、魯の大夫。舊相識る。
曰、佩玉繠兮、余無所繫之。繠然、服飾備也。己獨無以繫佩。言吳王不恤下。○繠、而捶反。
【読み】
曰く、佩玉繠[ずい]たるも、余は之を繫くる所無し。繠然は、服飾の備わるなり。己獨り以て佩を繫くること無し、と。言うこころは、吳王下を恤[めぐ]まず。○繠は、而捶反。
旨酒一盛兮、余與褐之父睨之。一盛、一器也。睨、視也。褐、寒賤之人。言但得視、不得飮。○盛、音成。又市政反。睨、五計反。
【読み】
旨酒一盛を、余褐の父と之を睨るのみ。一盛は、一器なり。睨は、視るなり。褐は、寒賤の人。言うこころは、但視ることを得て、飮むことを得ず。○盛は、音成。又市政反。睨は、五計反。
對曰、梁則無矣。麤則有之。若登首山以呼。曰庚癸乎、則諾。軍中不得出糧。故爲私隱。庚、西方主穀。癸、北方主水。傳言吳子不與士共饑渴、所以亡。○呼、火故反。
【読み】
對えて曰く、梁は則ち無し。麤[そ]は則ち之れ有り。若[なんじ]首山に登りて以て呼べ。庚癸と曰わば、則ち諾せよ、と。軍中糧を出だすことを得ず。故に私隱を爲す。庚は、西方穀を主る。癸は、北方水を主る。傳吳子士と饑渴を共にせず、亡ぶる所以を言う。○呼は、火故反。
王欲伐宋殺其丈夫而囚其婦人。以宋不會黃池故。言吳子悖惑。
【読み】
王宋を伐ちて其の丈夫を殺して其の婦人を囚にせんと欲す。宋黃池に會せざるを以ての故なり。吳子が悖惑を言う。
大宰嚭曰、可勝也。而弗能居也。乃歸。
【読み】
大宰嚭曰く、勝つ可きなり。而れども居ること能わじ、と。乃ち歸る。
冬、吳及越平。終伍員之言。
【読み】
冬、吳越と平らぐ。伍員の言を終わる。
哀
經元年。得見。賢遍反。下同。此復。扶又反。一處。昌慮反。
傳。圍壘。力軌反。周帀。子合反。○今本匝。高陪。竝如字。厚一。戶豆反。故令。力呈反。以辨。一音方免反。別也。彼列反。下同。出降。戶江反。使疆。居良反。夫椒。椒又作棑。子消反。大湖。音泰。會稽。古兮反。上會稽。時掌反。大夫種。章勇反。大宰。音泰。去疾。本又作去惡。有過。國名。殺斟。之林反。夏同姓。戶雅反。下注皆同。復爲。扶又反。后緡。亡巾反。○舊有昬忘亡亮反五字。今刪。自竇。音豆。少康。詩照反。之長。丁丈反。庖正。步交反。二姚。羊昭反。諸綸。音倫。之燼。徐刃反。又秦刃反。女艾。五蓋反。諜澆。音牒。之績。一本作迹。而長。丁丈反。下同。可竢。本又作俟。音仕。○今本亦俟。介在。音界。生聚。才喩反。又如字。爲沼。之兆反。汙池。音烏。故復。扶又反。逢滑。干八反。土芥。古邁反。如莽。亡黨反。孔圉。魚呂反。烝鉏。之承反。下仕居反。崇壇。徒丹反。不彤。徒冬反。丹漆也。鏤。魯豆反。臺榭。音謝。天有菑。音災。癘。本或作天無菑癘、非。疾疫。音役。熟食者分。如字。一讀、以分字連下句。猶徧。音遍。卒。子忽反。乘。繩證反。與焉。音預。陂池。彼宜反。妃嬙。本又作廧。或作■(女偏に廧)。在羊反。嬪御。毗人反。玩好。呼報反。夫先自敗也已。夫音扶。本或作夫差先自敗者、非。
經二年。易也。以豉反。句繹。古侯反。下音亦。以要。一遙反。于鐵。天結反。皆陳。直覲反。
傳。伐絞。古卯反。郢也。以井反。三揖。一入反。立適。丁歷反。下適孫同。大子絻。喪冠也。衰絰。七雷反。下田結反。爰契。苦計反。又苦結反。謀協以故兆。絕句。詢可也。思遵反。斬艾。魚廢反。欲擅。市戰反。作雒。音洛。斯役。如字。字又作厮。音同。蘇林注漢書云、厮、取薪者。○今本亦厮。志父。音甫。絞縊。一賜反。以戮。音六。桐棺三寸。禮記云、夫子制於中都、四寸之棺、五寸之椁、以斯知不欲速朽也。鄭康成注云、此庶人之制也。案禮、上大夫棺八寸、屬六寸、下大夫棺六寸、屬四寸。無三寸棺制也。棺用難朽之木。桐木易壞、不堪爲棺。故以爲罰。之重。直龍反。下同。王棺四重。禮記云、水兕革棺被之、其厚三寸。被水牛及兕之革爲一重、辟爲二重、屬爲三重、大棺爲四重。君再重。君、謂侯伯子男。侯伯已下無革棺。上公則唯無水革耳。兕革與辟爲一重、屬爲再重、大棺爲三重。大夫一重。大夫唯屬與大棺爲一重。今云不設辟者、時僭耳。非正禮也。載柩。其又反。爲衆。于僞反。郵無恤。音尤。其怯。去業反。牖下。羊九反。吏詰。起吉反。瘧疾。魚略反。禱曰。丁老反。自泆。音逸。持矛。亡侯反。絕筋。居銀反。斃于。婢世反。本亦作弊。踣。蒲北反。蠭旗。芳恭反。傅傁。素口反。又作叟。公孫尨。武江反。稅焉。始銳反。爲范。于僞反。下文爲其主同。幕下。音莫。嘔血。本又作■(口偏に咎)。烏口反。吐也。他露反。洩庸。一音作息引反。未詳。中悔。丁仲反。
經三年。爲子。于僞反。樂髡。苦孫反。
傳。司鐸。待洛反。南宮閱。音悅。命不共。音恭。校人。戶敎反。注及下同。脂轄。戶瞎反。本又作鎋。同。之易。以豉反。變難。乃旦反。帷幕。位悲反。下音莫。蒙葺。七入反。一音丁入反。縣敎。音玄。富父。音甫。槐。音懷。官辦。辦具之辦。注同。猶拾。音十。瀋也。北土呼汁爲瀋。之稾。古老反。注同。所郷。許亮反。○今本向。道還。一音患。勑令。力呈反。南孺子。如住反。其郛。芳夫反。
經四年。公孫姓。本又作生。或一音性。亳社。步洛反。頃公。音傾。
傳。也承。音懲。直升反。公孫翩。音篇。文之鍇。一音客駭反。中肘。丁仲反。下竹九反。負函。音咸。泝江。音素。入郢。以井反。又以政反。氏潰。戶内反。豐析。星歷反。注同。少習。一音如字。之難。乃旦反。以畀。必利反。與也。楚復。扶又反。甯跪。其委反。取邢。音刑。欒。力官反。鄗。郭璞三蒼解詁、音臛。字林、火沃反。韋昭、呼告反。闞駰云、讀磽确同。盂。音于。
經五年。城毗。頻夷反。杵臼。昌呂反。下求又反。
傳。柳朔。良九反。以僭。子念反。後同。爲吉射。于僞反。未冠。古喚反。鬻姒。音似。子荼。一音丈加反。嬖。必計反。閒於。一音閒厠之閒。又如字。疾疢。本或作疹。乃結反。寘羣。之豉反。羣或作諸。於萊。音來。公子鉏。仕居反。埋。亡皆反。而侈。昌氏反。又尺氏反。惡而。烏路反。不濫。力暫反。濫溢。音逸。
經六年。邾瑕。音遐。任城。音壬。亢父。音甫。廢長。丁丈反。立少。詩照反。楚子軫。之忍反。史記、作珍。殺荼。音試。下皆同。○今本弑。
傳。城父。音甫。偃蹇。約免反。下紀晩反。驕敖。五報反。必偪。音逼。盍。戶臘反。下同。需。音須。一音懦。多難。乃旦反。鮑牧。州牧之牧。乘如。繩證反。晏圉。魚呂反。大冥。亡丁反。舍其。音捨。夾日。古洽反。大史。音泰。下同。禳祭。如羊反。而寘。之豉反。其夭。於表反。又焉。於虔反。爲崇。息遂反。竟内。音境。漳。音章。楚昭王知大道矣。本或作天道、非。夏書。戶雅反。下注同。闞止。苦暫反。壬也。而林反。洩言。息列反。又以製反。欲令。力呈反。下同。與饋。其位反。鮑點。之廉反。女忘。音汝。而背。音佩。後年皆同。拘。音倶。句竇。音豆。不匱。其位反。少君。詩照反。長君。丁丈反。夫■子。音扶。■或作孺、同。○今本亦孺。野幕。音莫。冒。亡報反。淳。音純。駐於。中住反。
經七年。于繒。本又作鄫。○今本亦鄫。
傳。百牢。力刀反。吳過宋。古禾反。以後。如字。又戶豆反。上物。如字。一音時掌反。注同。大伯。音泰。注同。臝以。本又作倮。故效。戶孝反。將焉。於虔反。不禦。魚呂反。擊柝。音託。以兩木相擊以行夜也。字又作■(木偏に橐)、同。晝掠。中救反。于繹。音亦。鄒縣。側留反。馮恃。皮冰反。注同。振鐸。待洛反。注同。公孫彊。其良反。好田。呼報反。下同。弋。以職反。而奸。音干。
經八年。褚師。中呂反。之詬。呼豆反。
傳。詬之。本又作訽。詈辱。力智反。吳爲。于僞反。下注則爲之隱惡同。不狃。女九反。死其難。乃旦反。曾所。在增反。之好。呼報反。下文好焉同。欲覆。芳服反。子泄。息列反。又作洩。○今本亦洩。與斃。婢世反。子洩率。絕句。故道險。絕句。吳竟。音境。僑田。其驕反。拘鄫。音倶。下同。道之。音導。内應。應對之應。析朱鉏。星歷反。注及下同。泗上。音四。於幕庭。亡博反。設格。更百反。試躍。羊灼反。析骸。戶皆反。本又作骨。而爨。七亂反。及虧。去危反。負載。如字。或音戴。萊門。音來。爲質。音致。下同。復求。扶又反。妻之。七計反。前爲。于僞反。荐之。本又作栫。○今本亦栫。雍也。於勇反。○今本擁。故諷。方鳳反。愬之。音素。於潞。音路。
經九年。
傳。公孟綽。昌灼反。本又作卓、同。武子賸。以證反。作壘。力軌反。塹成。七豔反。郟張。一音甲。可游。音由。之需。音須。以祉。音恥。儆。音景。
經十年。不與。音預。書殺。申志反。○今本弑。
傳。兵幷。必政反。人殺。申志反。○今本弑。襲重。直龍反。又直用反。取犂。力兮反。又力之反。名隰。音習。本或作濕。音同。少子。詩照反。
經十一年。艾陵。五蓋反。公與伐。音預。下同。
傳。齊爲。于僞反。御諸。魚呂反。本又作禦。○今本亦禦。自度。待洛反。封疆。居良反。注同。二子之不欲戰也宜。絕句。不成丈夫也。本或作大夫、非。蒐乘。所求反。下繩證反。閱。音悅。孟孺子。而住反。彘。直利反。邴洩。音丙。又彼命反。管周父。音甫。徒卒。子忽反。注同。雩門。音于。繇役。本或作徭、同。音遙。涉泗。音四。爲殿。丁練反。抽矢。勑留反。策其。初革反。本或作莢。誰不如。如字。諜。音牒。齊人遁。徒困反。諜閒。閒厠之閒。能默。本亦作嘿。亡北反。其嬖。必計反。童。本亦作僮。音同。○今本亦僮。汪。烏黃反。無殤。音商。八歲至十九爲殤。用矛。亡侯反。皆陳。直覲反。轅咺。況阮反。稻醴。音禮。腶脯。字又作鍛。嬴。音盈。公孫夏。戶雅反。虞殯。必刃反。具含玉。戶暗反。本又作唅。揮。許韋反。問遺。唯季反。王卒。子忽反。八百乘。繩證反。寘之。之豉反。新篋。苦協反。褽以。一本作褽之以玄纁。○今本亦同。玄纁。許云反。本亦作勳。加組。音祖。不衷。音忠。饋賂。其位反。或作餽。下音路。豢。音患。也夫。音扶。爲沼。之兆反。其泯。亡軫反。盤庚。步干反。之誥。古報反。不共。音恭。注同。劓。魚器反。殄。大典反。無俾。必爾反。育長。丁丈反。使於。所吏反。屬鏤。力倶反。又力侯反。墓檟。古雅反。木名。子朝。如字。犂。力兮反。孔姞。一音其吉反。少禘。詩照反。下大計反。子憖。一作整。遂聘。匹政反。夏戊。戶雅反。下同。戊音茂。簋。音軌。遽止。其據反。斂從。力豔反。貪冒。亡北反。一音莫報反。無厭。於鹽反。
經十二年。諱取。七喩反。又如字。本或作娶。○今本亦娶。逡。一音七倫反。遒。一音巡。繇。音遙。螽。音終。
傳。取于。七喩反。本亦作娶。今本亦娶。放絰。大結反。故去。起呂反。贄。音至。以要。一遙反。注同。尋重。直龍反。寒歇。許謁反。之斃。婢世反。國狗。音苟。噬。市制反。齧。五結反。本或作囓。藩衛。方元反。注及下同。籬也。力知反。○今本無也字。餼。許氣反。以難。乃旦反。注同。子盍。戶臘反。不爲。于僞反。乃舍。釋也。效夷。戶敎反。蟄。直立反。隙地。去逆反。閒田。音閑。一本作閒地。一音如字。玉暢。勑亮反。一本作王暢。戈。古禾反。爲之。于僞反。今倒。丁老反。爲別。如字。又彼列反。
經十三年。男成。音城。本或作戊。近濟。附近之近。僭。子念反。陳夏。戶雅反。
傳。使徇。似俊反。爲虛。竝如字。或音墟、非。單平公。音善。不與。音預。二隧。音遂。注同。謳陽。烏侯反。蔑。亡結反。之旗。音其。地守。手又反。下注同。爭歃。所洽反。又所甲反。大伯。音泰。對使。所吏反。於吳有豐。芳中反。八百乘。繩證反。下及注同。坐爲。才臥反。恐之。丘勇反。不共。音恭。而祇。音支。繠。一音而水反。褐。戶葛反。之父。如字。又音甫。麤則。本或作麄。七奴反。殺其丈夫。直兩反。本或作大夫、誤。悖惑。補内反。